今年の読書(42)『琥珀の夢(下)』伊集院静(集英社文庫)
May
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いよいよ下巻では、20歳の春、鳥井商店を開業。明治39年、屋号を寿屋洋酒店に変更、日々葡萄酒の味の研究に勤しみます。ロシアとの開戦で軍事需要が高まる中、広島の西城商店主に取引で騙され借金を抱えながら、赤玉ポートワインが完成します。ライバルは東京の神谷伝兵衛の蜂印葡萄酒。宣伝の重要性を知っていた信治郎は、新聞広告、赤玉楽劇座、劇団員の「松島栄美子」をモデルとしたヌードポスターやノベルティーと攻勢に出ます。
国産ウイスキー造りは周囲からは猛反対にあっていました。そんな時、関東大震災が起きます。瓦礫と化した東京を見て、「信治郎」は決心します。「わてが日本をええ国にするんや。ウイスキーを作ってみせる」。英国に留学していた「竹鶴政孝」を雇い、莫大な借金をして山崎蒸溜所を建設します。初の国産ウイスキーは1929年に誕生します。米英に比べれば新参国ですが、いまや世界で最高賞を取るまでになり、海外の愛好家を虜にし、破格の値段で取引されているようです。
初の国産ウイスキーを完成させた「信治郎」は、「小西儀助」が夢見ていた「ビール」の世界へと夢を広げるのでした。
上巻で気になっていたうどん屋「芳や」の女将「しの」は流行り病で亡くなっており、下巻にて、月命日には、料理屋で一人忍んで宴を開いている逸話が出てきて、ホッとしました。