不良の系譜と言えば、僕が人生を賭けて仕上げた1969年式Vette(コルベット)の物語である。
そのマシンには大きなトラップが仕掛けられていて、ほぼ僕以外のドライバーは操縦することができない。
不良の系譜 Crate Engine Project 13話・14話で、ブレーキ系は完成している事になっている。
だが実は後日談がある。
そもそもこのマシンには、狭いエンジンルームに、572cui(9400cc)のレーシングエンジンをぶち込んだ。
そのせいでエンジンルーム内のスペースは不足し、ブレーキ・ブースターを薄型のものに変更し、それでも干渉するバルブカバーの一部をカットしている。
計算上は問題のないこの改造だったが、ポンピングブレーキを踏むとブースター内のバキュームが不足し、突如としてブレーキペダルが重くなる事が判明した。
その瞬間に渾身の力でブレーキを踏みつける判断力があれば、このマシンをコントロールできるが、それができなければ確実にクラッシュする。
ポンピングブレーキではなくとも、渋滞した道路では短時間に複数回のブレーキを踏むこともある。
僕自身が、口から心臓が飛び出しそうになった経験も一度ではない。
この部分の改良は、長年の夢。
そして、とうとうその時が近づいている。
昨今ではエンジンを持たない電気自動車(EV)も登場している世の中だ。
当然ながらエンジンのないEVはバキュームが取れない。
でも、ブレーキブースターはあるはずだ。
そんな発想から、探し続けていた部品を発見した。
どうやらこの部品は、マスターシリンダーでありながら、電気エネルギーで発生させた負圧を利用するブースターのようだ。
エンジンルームもすっきりする事だろう。
現在バックオーダーという事で、試すことができるのはまだ先だが、何とも楽しみな話なのである。
【Vette】