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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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ラヴあんど……

thread
才能なんて要らない

表現をすることに
才能とか努力とか自分がどうだとか
そんな詰まらない考えはいらない

強いて言えば必要なものはラヴだね

ああ、臭いこと言っているけど
そうなんじゃない

好きを越えて
自由になれなきゃダメだと思うんだ

時に変人のように思われても
描き続けるぐらいの
図々しさがないと不完全で終わるんだ

だけど、自分から変人気取りして
私は芸術家だ、なんて言うのは最低だ
たまにいるんだよな、勘違いなひと

すべては集中に化学変化のできる
ラヴをもっているか、ということ

さり気ない労わりの気持ちをもち
表現の向こうの微笑みを想像できる
そんなラヴを育まなくちゃね

#詩

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アシスタント・サンタの報告書

thread
アシスタント・サンタの報告書


みなさんはご存知でしょうか
12月25日はクリスマスですが
アシスタント・サンタの調査日でもあります
サンタクロースが訪れたあと
来年のクリスマスをもっと盛り上げるために
どこにでもいる普段着のおじさん おばさんたちが
メモ帳と鉛筆を持って朝方から情報収集
あなたの街へ調査に来ています

さてさて
何を調査するのでしょう


ちゃんたちゃんㅤちゃんたちゃんㅤきたよ
うれちぃㅤうれちぃㅤちゃんたちゃんすきよ

3歳ㅤ女の子
とてもプレゼントに喜んでいます
はいㅤメモメモ


やっほーㅤへんしんㅤとうっー
ぼくㅤめちゃつよいぞ

5歳ㅤ男の子
サンタクロースㅤナイスです
去年の業務報告を活かしましたね
はいㅤメモメモ


ああㅤこれ
あの店で2980円で売っていたやつだ
友だちとこれであそぼっと

10歳ㅤ男の子
クリスマスプレゼントの値段がバレてしまったようです
これは盛り上がりに欠けてしまう
はいㅤメモメモ


うわーㅤ欲しかったのㅤこれ
ピンクのがもっと欲しかったけど
でも嬉しい

11歳ㅤ女の子
惜しいです
サンタクロースへㅤ色が違ったね
はいㅤメモメモ


今年はセーターかよ
なんだよイニシャルのKとか入っているし
母ちゃんㅤとりあえずㅤあいがとうな

15歳ㅤ男の子
どうやらサンタクロースを母親と勘違いしています
手縫いというのは手応えありました
はいㅤメモメモ


うわっーㅤ素敵
このペンダントㅤ一生大事にするは
サンタさんにお礼の手紙書かなくちゃ

17歳ㅤ女の子
ハートのペンダントをありがとう
手紙を両親へ渡しています
この子もサンタクロースを勘違いしてますね
はいㅤメモメモ



報告書

今年の傾向としては
サンタクロースの業務が多忙のため
時間が取れずに手づくりから
既製品のプレゼントが多い傾向が見られ
その点は盛り上がりに欠ける要因と考察する

プレゼントされる年齢が上がるに従って
サンタクロースを親と勘違いしている傾向は
例年通り大きな課題のひとつである

しかしながら
プレゼントを貰った子どもたちは
最高の笑顔で喜び
感謝の気持ちもつことは今年も変わらず
準備段階からお届けまで
サンタクロースの努力は評価されるものである



お分りになりましたか
これがアシスタント・サンタの業務です
クリスマスを盛り上げるために地味ながら
子どもたちのために頑張っていますよ

ではでは
アシスタント・サンタのお話はこのへんで


メリーㅤクリスマス!


パパッンㅤパッンㅤパーンッ
#詩

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Dear. 五風先生

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五風先生
天国でも柔らかな茶道の袱紗捌(ふくささば)きで
茶器を清めているのでしょうか

私が今まで盗めなかった技はその袱紗捌きだけです
正座で足の甲にある豆を潰し
袱紗を何度も何度も折りましたが
到達できないと知り諦めた悔しさは今でも忘れません

五風先生の御点前に憧れた二十代
私は詩を書くことも忘れ茶道のことばかりで頭がいっぱいでした
いつの間にか私も平点前(ひらてまえ)を教えるようになり
そよ風先生
なんて呼ばれては照れながらも幸せな時間でした

五風先生は御宗家にご意見を言える唯一の内弟子
陰に陽に御宗家を支えてきた器は柔らかく
大舞台を成功させてきた茶人
茶器を愛しㅤ茶道を愛していたのですね

五風先生はいつもおおらかでしたが
一度だけ難しい顔を見せたことがありました
御宗家が
齋藤さんㅤ家(うち)に来ませんか
とㅤおっしゃった時に
齋藤さんはきちんとしたところで働いているのですから
とㅤ五風先生はおっしゃって私と茶道との距離を置かせましたね

その真意は今でもわかりませんが
私の茶道への思いは五風先生からすると
そよ風程度ということを見抜いていたのでしょう
たぶんあなたが目指す道はそこではないですよ
そう言いたかったのかもしれません

私は結婚して子どもができ
共働きで育児に追われると茶道からは遠ざかり
少ない時間で前のように詩を書いては自分を表現し
充実と喜びを得るという今があります
詩の世界で精進してゆくことで五風先生に近づける と
五風先生からすれば私はいつまでもそよ風かもしれませんが
心地よい風を吹かせたいものです

いつの日かまた御茶も点てます
私は病気などをしましたから正座も上手くできませんが
天国の五風先生に私なりの袱紗捌きで茶を点てたいと思っています
お召しになられますよね
しばらく先の話となってしまいますがお待ちください

若き日に御指導を頂いた茶道は忘れません
五風先生ㅤ心より有難うございました
では好き勝手に語ってしまいましたがこの辺で失礼致します




平点前(ひらてまえ)…基本的な点前
#詩

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grow up

thread
赤ん坊は泣くのが仕事
蛇口から水が一滴
落ちてしまえば

うぎゃ
うぎゃ

眠いはずなのに
とても感度のよいセンサー
まだまだ遊びたいと働くのか

赤ん坊を布団へ静かにおろし
抜き足差し足忍び足
頼む 寝てくれ
そう願いながら離れて行くわたし

すべて思い通りにいかない子守り
親の成長を見ている赤ん坊


赤ん坊も十人十色
兄は敏感でも
弟のほうは鈍感というか動じない

食べるとすぐ寝る
そして なかなか起きない

食う寝る遊ぶ
そんな言葉があったけど
食う寝るㅤ食う寝るㅤクーねる

おーい
起きないのか
遊んでくれよお父さんと

ん〜ㅤ起きない
でもㅤ寝顔を見ていると天使のよう
なんて手のかからない子なんだ

しばらく親を油断させていた子守
だけど歩き出すようになると
虎のように吠え出して


今朝のバス
ぽよぽよと可愛い赤ん坊を抱っこして
若いお父さん
出勤前の保育園への送りなのか
懐かしさが入りまじり
赤ん坊に思わず微笑み返し

子育て
大変だけど
社会を成長させてくれる子どもは
いつの時代も宝もの

頑張れ
子育てㅤ父ちゃん!ㅤ母ちゃん!

#詩

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今日も生きている

thread
ヘッドホンから流れる歌
どこまでも風景がイメージされ
僕はその世界にいて元気をもらっている
今日も頑張ろう、って

揺れる電車
空に現れる朝日
連なるビルディング
つり革をぎゅっと握り

繋がる毎日を僕も詩で綴る
曲をつけずに委ねるリズム
言葉の武器だけではか弱くて

でも、詩はそれがいいんだ
勝負するもんじゃないと思うけど
何だか曲に負けていられない

今日も誰かに元気をもらい
僕も読み手への元気を想像をして
詩を綴りながら微笑んでいる

幸せっていうんだよね
これ、って

#詩

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thread
産声に魂をのせて
初めて死ぬひとの一員になる

未来に終わる約束
それでも孤独を背負いながら
心淵の旅を続ける

種の保存に感情が与えられ
悲しみに涙
怒りに食いしばり
不安にカラダを震わせて

時に何のためにと
手繰り寄せる温もりに優しさを求め

神様は青く語る
ひとは白く浮かびながら訊く

どうして私たちは
こんなに苦しいのですか

上手に生きるには
どうすればよいのでしょう

心は激しく動揺
白は青の道徳に救われて生きて行く

誕生の意味は最初から無かった
死滅の意味は最初から無かった
有ったのは迷い込んだ世界で白になる心象

ひとは白い真実にどこまでも手を広げ
透けて青になるように

#詩

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家族の詩

thread
ファミリーレストラン
飲み放題のコーヒーで粘る

隣のテーブルには
ギャングを引き連れた賑やかな家族

私は懐かしく受け入れ
相変わらず詩を書こうとしている
しかし一向に文字は
列車のように連なって走らない

暴れ騒ぐ兄弟
叱りつける父親
なだめる母親

お子様ランチと定食が運ばれる
子どものハンバーグを細かく切る母親
いただきますも言わず唐揚げを頬張る父親

静かだ、とても静かだ
食べている家族は静かだ
食べることは生きること
生きることに夢中になっている

お腹が満たされてくると
お兄ちゃんが口の中を指差し

こっちはうごくけど
こっちはうごかないの

咀嚼する時の上顎が
動かないことをどうしてと訊いている

確かにそうだな
父親はぼそぼそと呟く
あらっ、ほんとうね
母親は子どもの感性に微笑む

家族はともに時間がながれている
一緒に暮らしていても
私のように離れて生きていても

ああ、家族の詩を書こう

#詩

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終始の恋

thread
死ねない彼女が
余命三ヶ月の俺に言う
あんたは死ねていいじゃないかと

俺の悔しさの向こうにある
青く尖った夜空
彼女の苦しさの向こうにある
赤く鈍い朝焼け

今、生きている互いの歩幅
途轍もないものに潰されながら
ふたりはビニール傘の下

引き寄せる運命
歪な恋のキスは特別でもなく
俺の突起した恐怖と
彼女の窪んだ怒りが合わさるだけ
理由なんてないのさ

頬を叩いても罵声をあげても
俺たちは生きていて
どうして生きているのか
その答えはいつもわからなくて

俺は最期に言うだろう
なんか生きているよ、って
彼女を感じて微笑むよ

彼女は目を閉じた俺に言うだろう
勝手に死ぬんじゃないよ、って
そして、涙を流すだろう

俺はそんな彼女が好きなんだ
なんか生きているよ、今
ああ、まだ生きている

#詩

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お前、本気かよ、それっ

thread
図書館にてある月刊詩誌を読む

詩人と名乗る人物があーだの、こーだの
詩について批評をしている
なんとか論まで出てきてしまい

正直さ
かっこ悪いんじゃないか
マジでさ、詩だけ書いてろっ、て

作品ありきだろ
詩っ、て

読者の想像をなくしてしまう話は
止めてくんないかな
まあ、ようは詰まらない批評で
そんなところで熱くなるんだったら
作品で表現してほしいねっ、てこと
ああ、エネルギーがもったいない

じゃあ、お前、読まなきゃいいだろ

そうなるだろ
でも、ほろっとくる批評もあるからさ
許して欲しいよ、そういうのは読みたいから

監督兼選手をやるには
センスとサラリ感がないと駄目だね
自信なかったら止めることだよ
まあ、それでも勘違い野郎は沢山いるからね
まず、自分が詩人だと勘違いしている

詩集を出版して批評して
詩について語れば詩人なんて
そんなもんか詩人っ、て

死ぬまでわからないだろ
自分が詩人かどうかなんて
とりあえず詩を書いてりゃいいのさ

まあ、誰しも詩人ともいえるんだけどな
その感覚、わかるだろっ
いちいち説明はしないよ、野暮になっちまうからさ

さあ、どんどん詩を書いてくださいな、頼みまっせ

#詩

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どうしても宮沢賢治の童話が読めない

thread
僕は宮沢賢治の作品が気になっている。高校二年生の自分が宮沢賢治を批評なんてしたら、どれだけ文学オヤジ達に叩かれるかと思うと、スカイツリーから飛び降りる気持ちで語るに等しい。ちょい、大袈裟。。。だけど行っちゃうんだよな、いやいや言っちゃうんだよな、性格だから仕方ない。喉に詰まっているものは、吐き出すか飲み込まないと気が済まないから。

えっ、何が気になっているかだって? 気にならないでほとんどの読者が読めるんだと思うんだけど、僕はどうしても気になるんだよ。それは、文の語尾。偉そうに言ってしまうと宮沢賢治の詩に関して、そこはとてもダブりのない完璧でリズムのある語尾になっているんだけど。童話については徹底してそこをあえて拘っている感が否めないんだよね。だから僕は宮沢賢治の童話を読むと、語尾しか目に入ってこないから困ってしまう。ほとんど「〜た。」の語尾。小学生の作文のようだ。まあ、童話だからそうなんだよ、って頭にコツンとやられてしまいそうだけど。

こんな感じ。「〜た。」← をつけた。





『どんぐりと山猫』


 おかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、一郎のうちにきました。←

   かねた一郎さま 九月十九日
   あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。
   あした、めんどなさいばんしますから、おいで
   んなさい。とびどぐもたないでくなさい。
                   山ねこ 拝

 こんなのです。字はまるでへたで、墨もがさがさして指につくくらいでした。←けれども一郎はうれしくてうれしくてたまりませんでした。←はがきをそっと学校のかばんにしまって、うちじゅうとんだりはねたりしました。←
 ね床にもぐってからも、山猫のにやあとした顔や、そのめんどうだという裁判のけしきなどを考えて、おそくまでねむりませんでした。←
 けれども、一郎が眼をさましたときは、もうすっかり明るくなっていました。←おもてにでてみると、まわりの山は、みんなたったいまできたばかりのようにうるうるもりあがって、まっ青なそらのしたにならんでいました。← 一郎はいそいでごはんをたべて、ひとり谷川に沿ったこみちを、かみの方へのぼって行きました。←
 すきとおった風がざあっと吹くと、栗の木はばらばらと実をおとしました。← 一郎は栗の木をみあげて、
「栗の木、栗の木、やまねこがここを通らなかったかい。」とききました。← 栗の木はちょっとしずかになって、
「やまねこなら、けさはやく、馬車でひがしの方へ飛んで行きましたよ。」
と答えました。←
「東ならぼくのいく方だねえ、おかしいな、とにかくもっといってみよう。栗の木ありがとう。」
 栗の木はだまってまた実をばらばらとおとしました。←
 一郎がすこし行きますと、そこはもう笛ふきの滝でした。←笛ふきの滝というのは、まっ白な岩の崖のなかほどに、小さな穴があいていて、そこから水が笛のように鳴って飛び出し、すぐ滝になって、ごうごう谷におちているのをいうのでした。←
 一郎は滝に向いて叫びました。←
「おいおい、笛ふき、やまねこがここを通らなかったかい。」
滝がぴーぴー答えました。←
「やまねこは、さっき、馬車で西の方へ飛んで行きましたよ。」
「おかしいな、西ならぼくのうちの方だ。けれども、まあも少し行ってみよう。ふえふき、ありがとう。」
 滝はまたもとのように笛を吹きつづけました。←
 一郎がまたすこし行きますと、一本のぶなの木のしたに、たくさんの白いきのこが、どってこどってこどってこと、変な楽隊をやっていました。←




ねえ、「〜た。」ばっかりでしょ。というか、「〜た。」しかない。これは、宮沢賢治が意図して徹底している表現方法なのだろう。だけど、僕みたいに宮沢賢治の書いた文章の語尾にしか興味が持てなくなってしまうと、作品自体が読めなくなってしまう。たまに「〜です。」みたいに、「た」で終わらない文字を見るとなんだかか嬉しくなってしまうのは、僕がおかしいのかなあ。このまま宮沢賢治の童話は一生、読むことができなくなってしまうのだろうか。

〜した。〜だった。〜した。〜た。
た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。
た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。た。


はあ、どうしても語尾しか読めない。これは狙いだったのだろうか。そんな訳はない。僕がおかしいのだ。まあ、いいや。そのうちこの厄介も消えると信じて。さて、宮沢賢治の詩を読むとするか。

#小説 #詩

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