避けたつもりが 見抜けなかった自分の穴 落ちた底には紙一枚 記された『危険』の文字 気色悪さに壊し始める 紙がクシャクシャと笑い 僕は血に染まった玉となり 必死に逃げようとする 放り出そうベランダの向こう 最初から存在しない夢 やけに眩しく誘う 青を欠いた崩れるカラダ 最後の力も及ばず 手すりも遠く笑って 懐かしい筋肉が触れたのなら 摑まえる痛みの温もり 物干し竿にぶら下がった紙一枚 記された『馬鹿なことをして』の文字 人肌の雨が落ちている 「姉さん、僕はまだ生きているのかい」 「生きているわ、しっかりしなさい」 瞼を閉じれば浮かぶ紙一枚 記された『ごめんなさい』の文字 光に泳ぐ塵埃 「姉さん、僕は死にたくないよ」
海外でジャパニーズイングリッシュ 行き先の目的地を訊けば ジャパニーズ、と 怪訝な顔して腰を突かれ あっちだよ、って 忙しいから邪魔扱い なんなんだ あのでかいジャパニーズ、って声は まあ、空港だから 騒いでしまえば直ぐに 捕まってしまいそうだから ここはガマンガマン こういう時に 自分は日本人だという 誇りがあることに気づく 日本人を馬鹿にするなよ、と いい加減な空港スタッフの答えに 再び掲示板を見て あっち行ったりそっち行ったり 到着の遅れ 手続きの行列 間に合うはずの…… おいおい、トランジットの飛行機は すでに出発時間を過ぎている (トランジット:入国せずに乗り継ぎ) ああ、ここで一泊、二泊? それでも搭乗口に走って走って 走って! あれれっ 飛行機の出発がずいぶん遅れているぞ 間に合った…… 走り過ぎて喉が痛いし 自販機で使える通貨は持っていない 椅子に腰掛け呟いた ギブアップ、に 笑われるし そして、搭乗口の係員が唐突に訊いてきた ビジネス? 気持ちを切りかえようと ノー、エコノミー そんなジャパニーズオヤジジャグも 空振り三振してしまった そんなわけで飛行機には乗れたが ラッキーだったことより ムカムカした気分が追いかけて来る まあ、世界にはいいひともいれば 素っ気ないひともいる それは世界共通なんだろう でも、やっぱり日本って優しい国だよなあ そんなことを考えている 今週は俺、外人
身体の心配 家族の心配 お金の心配 仕事の心配 押しつぶされそうになった時 ひとり落ち着ける場所 私はiPadに詩を綴る そこには世界があって 手に届かないものは 見あたらないくらいに心地よい 上手に世間からは逃げることができ 身体を傷つけることなく 健康的に精神も癒やされてゆく 詩があるから 僕は今日も生きていける気がする 大袈裟だよ そう言われるかもしれないが それほど強い人間でもなく 最近はその思いが強くなるばかり 悩みは悩むほど落ちてしまう 悪い方へ悪い方へと でも僕には詩がある 変わらない自分でいるために 今日も詩を書く 明日も詩を書く 明後日も詩を書く 死ぬまで詩を書かずにいられない
みなさんはご存知でしょうか 12月25日はクリスマスですが アシスタント・サンタの調査日でもあります サンタクロースが訪れたあと 来年のクリスマスをもっと盛り上げるために どこにでもいる普段着のおじさん おばさんたちが メモ帳と鉛筆を持って朝方から情報収集 あなたの街へ調査に来ています さてさて 何を調査するのでしょう ちゃんたちゃん ちゃんたちゃん きたよ うれちぃ うれちぃ ちゃんたちゃんすきよ 3歳 女の子 とてもプレゼントに喜んでいます はい メモメモ やっほー へんしん とうっー ぼく めちゃつよいぞ 5歳 男の子 サンタクロース ナイスです 去年の業務報告を活かしましたね はい メモメモ ああ これ あの店で2980円で売っていたやつだ 友だちとこれであそぼっと 10歳 男の子 クリスマスプレゼントの値段がバレてしまったようです これは盛り上がりに欠けてしまう はい メモメモ うわー 欲しかったの これ ピンクのがもっと欲しかったけど でも嬉しい 11歳 女の子 惜しいです サンタクロースへ 色が違ったね はい メモメモ 今年はセーターかよ なんだよイニシャルのKとか入っているし 母ちゃん とりあえず あいがとうな 15歳 男の子 どうやらサンタクロースを母親と勘違いしています 手縫いというのは手応えありました はい メモメモ うわっー 素敵 このペンダント 一生大事にするは サンタさんにお礼の手紙書かなくちゃ 17歳 女の子 ハートのペンダントをありがとう 手紙を両親へ渡しています この子もサンタクロースを勘違いしてますね はい メモメモ 報告書 今年の傾向としては サンタクロースの業務が多忙のため 時間が取れずに手づくりから 既製品のプレゼントが多い傾向が見られ その点は盛り上がりに欠ける要因と考察する プレゼントされる年齢が上がるに従って サンタクロースを親と勘違いしている傾向は 例年通り大きな課題のひとつである しかしながら プレゼントを貰った子どもたちは 最高の笑顔で喜び 感謝の気持ちもつことは今年も変わらず 準備段階からお届けまで サンタクロースの努力は評価されるものである お分りになりましたか これがアシスタント・サンタの業務です クリスマスを盛り上げるために地味ながら 子どもたちのために頑張っていますよ ではでは アシスタント・サンタのお話はこのへんで メリー クリスマス! パパッン パッン パーンッ
見えていないモノの方が多いのに 見えたモノの方が真実ように 間違ってしまうのだろう 僕らの想像を広げるために たぶん目は存在しているのだろう 見ることより見ようとする その生きた目を持たなければならない 目で見えないモノのを見ることが 僕らのほんとうの目であって 空の青の向こう 夕日の紅の向こう この手の向こう 僕の向こうの君を
身体の中に花火があがる 足の土踏まずあたりから火をつけられ 神経に沿って首あたりまで キョーンㅤキョーンㅤキョーン そんな感じで一日に何十回もあがる 初めて精通した時のように 電気が走って行く特異体質になっている 神経っていうのは伝達が得意で 潰れた頚椎から 悪ふざけの信号をどんどん送る その花火は痛いわけではないが あがるたびにビクっと 動かしている身体を止めてしまう 消えて煙りになるまで景色を眺める いったい私の身体はどうなって…… もうこの刺激を五年ほど経験しているが 十代の花火を打ち上げ続けては 心はふざけて玉屋なんて叫んでいる まだなんとか許容内の打ち上げ花火だが いつの日かちまちまの線香花火くらいに なって欲しいと願っている 遊べない花火はしないほうが良いだろうから
鍋に 季節感を入れ 風景を入れ 心情を入れ ああだの こうだの ああだの こうだの ぐずぐず 鍋が煮詰まって ああだの こうだの 味見すると なにか足らない 詫びか 寂か それとも 情熱か ああだの こうだの 煮詰まって 煮詰まって 煮詰まっ……
また陽は昇るのだろう 朝に僕は目覚めるのだろう 世の中には様々なひとがいて 今年が最後の冬なのだろう そう思って朝を待ちながら 刹那の向こう側に何を見るのだろう 生命はみんなに平等なのだろうか 断つことは平等でも ランダムに必然は振り分けられ 生まれてすぐに…… そんな運命もあり 百歳をこえて眠るように…… そんな運命もあり とても平等とは思えない だけど そこには平等でなくてはいけない そんな思いが芽生えたりする もしかすると僕らはすべてのひとを 平等ではなくてはいけないための術を 何か持ち合わせているのだろう そうでないと生まれてきた意味が繋がらない そうだ 僕らは平安を成就させるために 愛を追求する生きものなのだろう きっと そうなんだろう
ひとり暮らしをして 恋をして 結婚をして 子どもができて 賑やかになって 子どもが出て行って 妻が旅立って こんなに私の取り巻く 環境が変わっても 再びひとり暮らしをして 何も変わらない 気がつけば寂しい私 どうしようもない私