影 手をとる君はあらずとも さみしきこともなかりけり 月にうつせるわがかげを 君と思ひて行くときは ゆめ あなくやしくも物の音は おのがゆめをばさましけり うれしき君のそのゆめを 物の音なくばこれなくば うれしき夢をとこしへに 見つゝも我はあるべきを 田山花袋(1871〜1930)
毎日のように詩を書いているが 自分の詩を暗記しているのだろうか 思い浮かべてもひとつの作品すら 完全に暗唱できないことに気づく これで作品と言えるのだろうか 自由過ぎるのではないか そんな呑気さでよいのか 詩をインターネットという世界で 発信し始めて数年 自分の詩がたぶん読まれいるだろうに 書くだけが楽しみのようで 良いのだろうか 図書館で本を一冊手にする 日本で一番に売れている詩人の 対話集を読み出した その詩人の作品は読んだことはないが 名前は知っている そして売れているひとだから 安易な私には説得力がついてくる あれれっ 私と同じことを言っている 頂点と底面のある三角錐は 倒れて高さが関係なくなっている 自分の書いた作品には 興味のない共通がそこにはある では何に興味があるのだろう ……吐き出した作品は枯れて 吐き出そう作品は青々と輝かせたい そのような心情を得ることのように思えてきた これは失礼な話だろうか
猫さえ白い息を出して 穏やかな街をなお白くしている 白夜のように明るい夜 踏まれて沈む雪は か弱い少女のように笑う 世界を変える白 心に降り積もる感覚 柔らかいモノがそっと沁みてきて 何処までも歩きたい気持ちは 足を止めたりはしない 綺麗に飢えていたのだろうか 日常の黒に煤けてしまい 重たい責務の山に 押し潰されぬよう疲れ果て 冷やし癒される頭 何もかも輝きに染めながら 街灯からのびる光が我に刺されば 心の中まで白く静かにお淑やかに 踊り出すのだから この白の世界を歩かずにはいられない
とても冷めました それはいいことだと思います 詩を書く上で余計なモノ 見えてしまったのだから 感謝すべき日々だったのでしょう なんだかどこからか ピアノのCコードが聴こえてきます それは煩わしさの終わりの和音に聴こえて 僕は君のことはわかってしまうんだよ どんな言葉を連ねても 詩を四十年書いて自分という 人間を見つめていると 君の心が見えてしまうんだよ これは詩を書くひとの運命で 良いことではない気がします 受け入れたくないことまで 飲み込まなくてはいけない強さを 要求されるのですから Fコードに変わりましたね 次に向けての和音になりました また自分の詩に戻るのです 君は僕でないさよなら 当たり前のCコードに戻り 力強く弾ける気がしてきました
時多かれ少なかれ 彼は彼なり 枯れてゆく中にも 反骨を散りばめ クタバルを受け入れ 膨らむ腹 穿刺される屈辱 それでも静かに逝く夢 友人にも知らせず 自分の存在を誇張せず 生き絶えることにも 涙を見せぬ意地 幸せになれよ 妻への 愛の言葉は震えて心を焼く 許しあえる夫婦に救われる束の間 逝く夫 残された妻 一本の電話 「カズオさんが亡くなりました。 癌で入院していたの……」 「嘘だろ、ねえ、嘘だろっ……」 それから十年 僕はまだ悲しみの中に 悔しさを引きずり 神に問いかけている 彼はどうして 逝ってしまったのか 彼はどうして 僕に死にたくないと 言わなかったのか どうか教えてください
さて、どうしたものか 私が考えてもどうしようもないこと しかし、もやもやは解消したい なかったことのように 無理に心を誤魔化そうか いや、そんなことは出来ない だから、今日できることはすべてやった 悔いがないように対処したつもり もういいじゃないか 黒を黒って言ったのだから それに私だけが気になっていて 周りの人はさほど 気にしていないのかもしれない それなら、それで、もう 折り合いをつけようとすると また、どうしたものか と、なってしまう それにしても 今回のことは考えすぎ疲れてしまった ……ああ、なんだか眠くなってきた 眠ってしまえばスキッとするかも そういうことで、おやすみなさい
ててらてらてら ててらてら てらてらててら ててらてら てららてらてら てららてら てらてらてらら てららてら らてらてらてて らてらてて らててらてらて らてらてて らてらてららて らてららて ららてらてらて らてららて ててらてらてら ててらてら (リズムをつけて音読してみると面白いですよっ。。。)
時間をかけて書く詩なんて 違和感パンパンの風船だ 破れた瞬間を考えると 気分が悪くなってしまう 自分のカタチを 詩にする訳なのだから 心を精一杯に泳がすこと そこに納得する育みと あとはすらすらと書ける 時間さえあればよい 詩はなるべく自然寄りで 自分を育てることなのだから そこに時間を費やす すると詩も自然寄りに 生きるカタチになっている
高台のホームに立つ 電車は私の時間を裏切り 冷え込む身体 愚痴を呟く熱では温まる訳がなく 遠い四角を見ようとする 二月に入り風が 存在を強調しながら吹いてくる やっと電車の姿が見えると 俺はちっとも寒くない そんな顔をして ほっとしているのは 誰とコミュニケーションを しているのだろうか たいして強くない身体 たいして強くない精神 一歩踏み込む眼鏡の曇る車内 手足が溶けていくように 痺れが生じては 自分の冷たさを知って思う 数分の間に無くした何を 温かさで取り戻したというのだろう 俺は何に強がって弱いのだろう 俺は誰に強がって弱いのだろう
止め去りし時のひと 波打つ影を押し流し 平らを願う沖のひと 儚きは美しの浅葱色 燃ゆることなく 天性を纏い揺れる網目 寄せては返す光と影 調節する原始の心 膨らみ萎む気泡の夢 宿命の次にざらつく 滑り込む砂利の音 正直な脈に偽る潮の声 生き絶えし時のひと 重なる美徳の潤い 止め去りし時のひと