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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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二月二十八日、出勤

thread
まだ日の昇らぬ黒い川が
通勤電車から揺れている
寒かろうに足を突っ込む
想像をしている私からは
温もりを奪う景色の強さ
世間より手前にある猶予
その時間に淀みながらも
忘れまいと己を見ている

感じる冷たさは試された
選ばれし人間なのだから
まだそんな優越に溺れて
暫くは姑息に流されよう
己以外への思い微塵とて
細くも生きているこの身
捨てれる訳もなく揺れて
今朝も日が昇る己の上に



(選ばれし人間/人間として生まれたという意)

#詩

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孤独以上に……

thread
ひとり息をする孤独
散らかした文字を片付けず
嫌われることより
愛する自分がいたりする
失格だろうか

ひとり歩く孤独
帰る場所を知っているから
出て行く安心のもとに
笑ってしまった目的地からの
軽蔑だろうか

ひとり倒れる孤独
先人も楽しんでいたように
踠いて叫ぶ詩から求め
苦しみの中を客観したのは
黄昏だろうか

#詩

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描写詩

thread
風景を絵にすれば情景となり
好かれる作品であったりもする

しかし、詩の場合は違う
風景だけを言葉で表し喜怒哀楽を描かなければ
情景になることは難しくなってしまった
それだけの作品で終わる

私は読み手の感情移入する感性が
狭いのではないかと感じている
今まで書き手の表現未熟だと思っていたが
そうではないのかもしれない

詩は気持ちの色を誘導させて見せる
喜びを伝えるように
怒りを伝えるように
哀しみを伝えるように
楽しいを伝えるように

絵や音楽は音と色でそれを伝える
「これは喜びの作品です」
と、説明しなくても充分に心が踊る

詩は嬉しくなるような風景や情景を書いても
「私は嬉しいです」と、匂わせる表現をしないと
作品としてつまらないことになる
言葉の限界がそこにあるのだろうか

私は詩を読むための感性が失われ
書き手の世界が狭くなっていると実感している

「青に白が小さく浮いている
ただそれだけである」

例えばこの言葉に感情移入をできるか、できないか

詩の世界が萎縮しないためにも
私は風景や情景だけを言葉に連ねてゆく詩が
もっと書かれて読まれることを夢みている

#詩

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汚れた詩/それでも

thread
ひとりの詩
自分以外には読まれない詩

ずっとそのスタイルで外へ表現はしなかった
する必要もなかった

三十年前のノートがタンスの隅から飛び出した
投げ散る字で書かれた詩は力があり生きている言葉だった

今、自分の詩は叫んでいるのだろうか

愕然
まったく意味のない詩ばかり書いている

掲示板へ詩の投稿
詩を学んだことにより失ってしまったもの

こんな風に書けば纏まって完成度を上げれば
確かにひとの心へ入りやすい
そうして少しは読める詩が書けるようになった

だが、三十年前の自分が語っている

お前はそんな詩を書くために生きているのか
もう詩を書く資格は無くなっている



もう戻れやしない
戻り方など存在しないのだから仕方ない
これが自分なのだから

それでも生きていることは詩を書くこと
詩を書くことは生きること

に、なってしまい

その執着で汚れるように
詩を書いて行くしかないのだろう

もう、それしかない

#詩

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ニンニク中毒

thread
十八歳になり高校を卒業して就職。それまでは実家でとくに不自由なく過してきた。ただ、一人暮らしをするようになり、あの家庭にあれがあったら僕の人生は変わっていたのではないかと思うように。

父はなぜだろう、ニンニクが嫌いだった。なので、うちの家庭では必然的に餃子やパスタ、ラーメンにもニンニクが入らないのである。ニンニクの存在を知るようになったのは、高校の部活動をしていた時に試合の遠征先で食べた餃子からだった。
なんていう刺激的な匂いで、身体にパワーがみなぎってくるこの感じは、と感動したものだった。食べ終えた後に歯に詰まったニンニクの味すら美味しいと思ったくらいだった。

それからというもの仕事を終えると僕は、ラーメン屋へ毎日のように通った。ラーメンが運ばれると卓上にあるニンニクを足してガッついていた。もうニンニクのない生活なんて考えられなくなっていたんだ。風邪も引かないし、仕事もバリバリこなせる気がしていた。ニンニクパワーで。

しかし、僕の人生はニンニクで人生を狂わされてしまった。
彼女は僕がいつもニンニクを大量に食べるものだから、臭すぎると言い出したんだ。最後は私をとるかニンニクをとるか、って話まで進展してしまう。そして、ニンニクを選んでしまった。

社会人になりストレスが溜まり、ストレス発散がニンニクの摂取と繋がってしまったようだ。電車に乗ると鼻をつまみ僕から離れて行くひとがいたりして。会社でも露骨には言われないが、陰で僕のことを「ゴメン臭いの助」なんて指をさしているようだ。

でも、もうニンニクを止めることができない。中毒だ。いつもポケットにはニンニクチップが入っていて、ボリボリと止まらないのだから。完全にニンニクに人生を変えられてしまった。父のニンニク嫌いがなければ、僕はこんなことにはならなかった。もう仕事も手につかないくらいに頭の中はニンニクのことばかりだ。

そんな僕の様子を見て課長が言った。「齋藤、病院へ行って来い。暫く休んで良いから。このままでは、臭いだけの人生で終わってしまうぞ。さあ、行って来い」と。

僕はそんなわけで今、病院へ向かっている。
たぶん、父のニンニク嫌いがなければここまで執着しなかったはずのニンニク。はて僕は、これからニンニクとどう向き合って生きて行くことになるのだろう。

#詩 #雑記

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4649!

thread
[4444]

おっと、Suicaの残金表示が4444円だ
4が四つ
こりゃ縁起が良い

4は「死」に掛けて縁起が悪いって?

いやいや、そんなことはない
べつに死ぬことが縁起が良いなんて言わない

武家茶道の世界では
4は「余」と書き、小判がザック、ザック、余裕、余裕
って感じになってんだよな
良い数字だろ
それにバスケットボールの背番号「4」は、キャプテンの証
なっ、良い数字だろ

ああ、そうそう本膳料理では
本膳、二の膳、三の膳、与の膳

うーん
本膳と与の膳が特別な感じになっている

じゃあ9は「苦」でなくてなに?

って、
そうそう9 は「宮」
浦島さんが行った良い所っていう意味
なっ、いい数字だろ

いやいや帰ったら白髪ボーだって?

いやいや、それでも
充分に楽しんだのだから
幸せってやつだろ

まあ、縁起が良いってことだ
4も9も

じゃあ、例の件は4649頼むよ!

6はオーメンじゃん!
それは……

#詩

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朝に飛んで

thread
洋々たる朝
埃さえ輝きを得て
今日一日の目次は舞い
一つ目の作品
嬉しき朝を歌いだす

空の風が鳴いている
奏でる言葉を探り
会話をする休日には
自由を歓迎する爽快があり
寝床から飛び発とう

昨夜の曇天な心もちから
生き返ったように
希望の晴天が白の文字となり
青に気を遣いながら
自分らしい詩を綴り始める

妙なる朝にこそ
言葉を添えてみようかな
その輝く希望に近づくように
楽しく飛んでみよう

#詩

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もういいかな

thread
疲れ果て
もういいかな俺


正直に脱力する
立ち上げれないくらいに
沈んでゆく程よい痛みの中
今週の限界に軋む身体

張り詰めた神経は
細く鈍くなり逃げ場所を探る

床を染み込む緩い魂
ザルの目を通るように
容易く何処かへ染み込んでゆく


もしかしたら
さよならこの世界での俺

やり遂げていないけど
もういいかな俺

冬の筈なのに
夏のように蝉の声が聞こえ
儚いアルペジオは音を沈めてゆき


もういいかな


もういいかな

俺……

#詩

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腹黒

thread
知らねえなっ
俺がどんだけ腹黒いか
日々を吐き出したら吐露吐露的な
黒いモノがどんどん
溜まっていること

まあ、俺がどんだけ腹黒いか
って、話だ

因みにその黒いモノ
って、書痴の未熟な
文字の集合体って、ところかな

えっ、何を言っているか、だって

そりゃ、成長の出汁が
俺を腹黒くしている
って、ことだよ

わかるだろ?

へえ、わからねえ、って

#詩

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生徒諸君に寄せる/宮沢賢治

thread
中等学校生徒諸君
諸君はこの颯爽たる
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか
それは一つの送られた光線であり
決せられた南の風である

諸君はこの時代に強ひられ率いられて
奴隷のやうに忍従することを欲するか

今日の歴史や地史の資料からのみ論ずるならば
われらの祖先乃至はわれらに至るまで
すべての信仰や特性は
ただ誤解から生じたとさへ見へ
しかも科学はいまだに暗く
われらに自殺と自棄のみをしか保証せぬ

むしろ諸君よ
更にあらたな正しい時代をつくれ

諸君よ
紺いろの地平線が膨らみ高まるときに
諸君はその中に没することを欲するか
じつに諸君は此の地平線に於ける
あらゆる形の山嶽でなければならぬ

宙宇は絶えずわれらによって変化する
誰が誰よりどうだとか
誰の仕事がどうしたとか
そんなことを言ってゐるひまがあるか

新たな詩人よ
雲から光から嵐から
透明なエネルギーを得て
人と地球によるべき形を暗示せよ
 
新しい時代のコペルニクスよ
余りに重苦しい重力の法則から
この銀河系を解き放て

衝動のやうにさへ行われる
すべての農業労働を
冷く透明な解析によって
その藍いろの影といっしょに
舞踏の範囲にまで高めよ

新たな時代のマルクスよ
これらの盲目な衝動から動く世界を
素晴らしく美しい構成に変へよ

新しい時代のダーヴヰンよ
更に東洋風静観のキャレンジャーに載って
銀河系空間の外にも至り
透明に深く正しい地史と
増訂された生物学をわれらに示せ
おほよそ統計に従はば
諸君のなかには少なくとも千人の天才がなければならぬ
素質ある諸君はただにこれらを刻み出すべきである

潮や風……
あらゆる自然の力を用ひ尽くして
諸君は新たな自然を形成するのに努めねばならぬ

ああ諸君はいま
この颯爽たる諸君の未来圏から吹いて来る
透明な風を感じないのか





『春と修羅』(1922)より
#詩

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