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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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“ # ” のついたタイトルはツイッター詩(140文字以内)

海のひと

thread
止め去りし時のひと
波打つ影を押し流し
平らを願う沖のひと

儚きは美しの浅葱色
燃ゆることなく
天性を纏い揺れる網目

寄せては返す光と影
調節する原始の心
膨らみ萎む気泡の夢

宿命の次にざらつく
滑り込む砂利の音
正直な脈に偽る潮の声

生き絶えし時のひと
重なる美徳の潤い
止め去りし時のひと

#詩

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笑っちまった……

thread
笑っちまった……
笑っちまったテレビにも飽きて
空しさがカラリンと鳴れば
ガソリンを2リッター入れて
近場を二輪でぶっ飛ばすのさ

生き場所もありゃしない
暇つぶしだけのくだらない夜
街を忘れた道がのほほんと続く

みんな何処へ行ってしまったんだ
あれだけ馬鹿をやっていたのに
もう俺だけになっちまったよ
シラけた風がくすぐっては笑える

馬鹿をやめるのは
さほど難しくはないさ
ただなんか違うんだよね
そう、一生を貫けないのは
悔しと思うだけなんだ

ああ、馬鹿で笑っていたいんだ
笑えない人生なんて飽きてしまうだけ
どうしようもない馬鹿と言われても
意地になって笑っていたいんだ

#詩

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チェロ弾き

thread
君の心はこんなに
冷たくて切なくて哀しくて
時の風にも吹かれぬまま
降り積もるチェロの音だけが
そこにいることを示す

ビルの谷間に響く
道化師の揺らめく弦
涙の化粧は
嘘をつくのが上手で
立ち止まるひとびとに
視線は合わせず
ずっと遠くを見る瞳

過去を膨らます趣向
未来というおとぎ話を消し
白い花を想いださせ
進まない不安定を飾る

やがて君は壊れたように
演奏を終えて崩れてゆく
ひとびとがまた流れだす

コインが重なる音
ふたつなれば
君は生き返ったように
お辞儀をみっつした

#詩

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雨のレヴェランス

thread
縦をなぞる雨
風なき空の下では
水たまりにぽつんぽつん

純粋の音を響かせながら
お茶目に踊っています

波紋は続き
時計より楽しく時を刻みます

いつか君が
両手をひろげていた
バレエのレヴェランスを
想い出していました

さよならの挨拶だったのですね
君は最後まで微笑んで

雨の中
すっと手を差し出すと
手のひらで君は踊りました

ありがとうを
ぜひ素敵な君へ

#詩

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汚れた花

thread
バン
バンバン

迂闊に咲いた花なら
笑えばいいだろ

バン
バンバン
負け犬の花びらなら
よだれのかわりに
血を流すだけさ

バン
バンバン

へっへっ
バンバン

エゲツなく絡まった花なら
笑えばいいだろ

バン
バンバン
孤独を愛せる本物の花
砕け散る
粉々がお似合いなのさ

バン
バンバン

へっへっ
バンバン

クギャーアアアアアー

#詩

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福利厚生なき時代

thread
定年して嘱託で仕事を続け
健康であれば保障がイマイチでも
収入源は枯渇はしないだろう
それも仕事があればの話だ

危うい未来はもう現実になって
日本はヤバイと呑気に言ってはいられない

自分の身を考えると
身体の麻痺が年々酷くなる
そして死ぬまで頑張ろう
捨て身な感じになって

俺の腕が足が動けなくなり
使いものにならなくなったら
楢山節考みたいに
山に捨ててもらって生命保険が
家族の未来へ繋いでくれたら

本気でそんなことを思ったりする

家族がどうにか生きていくのに
代償があるのならば喜んで行くよ
山だろうが川だろうが海だろうが

#詩

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勝手に価値観を押しつけんなよ

thread
進めと言われ
止まりたくなる心情

俺はずっと批判的精神
うまく生きれないのは本望
それが全てであるように納得すれば

後悔しているんだろ

って、すぐ奴らが反応する

一体何なんだ
ゴミを漁るカラスがカーカーと
鳴いているだけみたいな眼で
ひとを見ないでくれよ

はいはい、と流れて行くのは
俺にとってはクソ人生なんだよ

世間からしたら下手くそで
意味のない人生かもしれないが
価値観なんてそれぞれだろ
うるせえんだよ

ああ、はち切れてえなあ
ああ、もっと馬鹿やりてえな
ああ、壊れてえ

俺は途切れやしねえ
絶対にノーにイエスは言わねえ
たった一度の人生じゃないか

なあ、わかるだろ、あんた

#詩

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灰色に咲くを聴く

thread
私の気分に合わせているのか
私がそんな気分にされているのか
飛び出そうとすれば抑えられそうな
雲の切れ目も見えない浸透した空

今日も島崎藤村の本を取り出し
開かずに詩をしたため出す
窓からは流れるひと
液晶画面からは郷土ニュース
一瞬にして音のない世界が広がる

感化されやすい詩の世界
雰囲気に色を染めてゆく
灰色の空気に灰色の空
灰色の図書館では
灰色のひとたちが本の音を聴く

そろそろ本を開いてみる




初恋


まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり


やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり


わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな


林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ




薄紅を聴く
遥かな恋は色づき
灰色はいとも容易く慄いて

#詩

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暗闇

thread
俺はどうやらバスに乗って
何処かへ行こうとしている
乗客は顔のない連中ばかり

でも子どもの頃のように
怖くなったりはしない

得体の知れない怖さも薄まり
自分の存在ほど怖くない
歳を重ねると良いこともある
開き直りの哲学だ

狭いシート
外の景色は暗闇
面白くもなんともない
俺の構成力が乏しいのか
それとも揺ら揺らしたいだけなのか

到着したらしい
運転手は目的地を知っていたのか
もうバスは動かないらしい
乗車していた連中がぞろぞろと降りだし
俺もとりあえず降りる

上着をシートに忘れ
運転手に忘れ物があることを告げ
バスに再び乗ろうとする

乗れない
バスに乗れなかった

もうバスは暗闇に吸い込まれ
姿も形もない
しかし運転手は俺を見ている
顔もないのにどうして

乗車していた連中が連なり
何処かへ行こうとして列をなす
俺も最後尾につき歩き出す

言葉もなく覇気もなく
ただだらだらと歩いている

この先の逆らえない定めに
自分から進んでいるのか
わからないが歩いている

それにしてもなんて寒いんだ
肩がとても寒い
あの上着があれば
こんな思いははしなかったのに

進む先は暗闇の暗闇
何も見えないはずなのに
見えている暗闇がある

そこに進んでいる
寒さの向こうにあろう目的地へ

#詩

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今晩はラーメン

thread
ラーメンは時間との闘い
家庭で食べる自体が
邪道かもしれない
でも今晩はラーメンと餃子だ

お湯を沸かし生麺を入れる
具は先に炒めて準備万全
汁ももちろん出汁から作って

フライパンに餃子を入れ
水をさし蓋をする

ラーメンの器にニンニクを少々
つゆを入れたところで
「ラーメンだぞ、早く集まれ」
と声をかける

よーし
麺が上がる

ちゃっちゃさっさ
麺のお湯を切り
器に波打たせ泳がし
汁に染み込ませ具を盛る

おお
みんな運んでくれ

おっと
餃子が焼けていない
台所でしばし待機

ラーメンのすする音が
聞こえてくれば幸せを感じ
時間との闘いも終わりがくる

へい
餃子のお待ち
食いねえ食いねえ

んっ
父ちゃんのラーメンのびてるなあ
まあいいか

うめえなあラーメン

#詩

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