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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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“ # ” のついたタイトルはツイッター詩(140文字以内)

心配という種は土に植え

thread
正月早々
母は心配ごとばかり語る
心配してもしょうがないことに
心を振り回されて

とくに歳をとったからではなく
昔からそうだ

そんなことで

なんて俺も言えないのだ
心配している自分までも
心配するような
心配遺伝を受け継いでいるのだから

でも新年になってわかったこと

俺の心配は続くのに
母の心配ごとには大丈夫だよ
そう言えるのだから
俺の心配ごとだって大丈夫なんだ

そんな風に開き直れる心配の種から
芽がにょきにょきと出てきたようだ

突然変異の日が昇り
胸を張りながら背を高くする

#詩

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平らな声

thread
夢の島を引きずる今日
ひとつ波が過ぎれば東京
海の緑は眩しかった

まばらな光
棒グラフのビルに遮られ
心の何処かで平らに憧れている

得体の知れないプレッシャー
社会への弱気を生み出す電車の揺れ

思い出すように何度も繰り返す思考
どうして生きているのだろう
どうせ死ぬのに

確かに夢の島では
時間を遮られない声が聞こえていた

僕は長い間
この東京で何を聞いてきたのだろう

眉間から聞こえる声
舌から聞こえる声
音のない声

どうしたらここで
平らな声が聞こえるのだろう

どうしたらここで
平らに生きてゆけるのだろう

#詩

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一月三日

thread
なぜだろう
時間があると思えば
詩を書くことは遠ざける

僕は何かと闘っている時
発したい言葉がある
胸にある思いのメモ帳を
めくりだすのだろう

冬を忘れさせるほどの陽ざし
空の向こうには明日が待つ

今年も
何かと闘ってゆくのだろう
そう思うと詩を書き出していた

#詩

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日の出

thread
日の出
日めくる橙の広がり方は
けして同じ顔を見せない
僕らの心持ちも日めくり
昨日より繋がった今日は
足したり引いたりしつつ
表情を変え時食らう起床
染まりたい橙に寄り添い
吸い込まれるように進む

#詩

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amulet

thread
避けたつもりが
見抜けなかった自分の穴

落ちた底には紙一枚
記された『危険』の文字
気色悪さに壊し始める

紙がクシャクシャと笑い
僕は血に染まった玉となり
必死に逃げようとする

放り出そうベランダの向こう
最初から存在しない夢
やけに眩しく誘う

青を欠いた崩れるカラダ
最後の力も及ばず
手すりも遠く笑って

懐かしい筋肉が触れたのなら
摑まえる痛みの温もり

物干し竿にぶら下がった紙一枚
記された『馬鹿なことをして』の文字
人肌の雨が落ちている


「姉さん、僕はまだ生きているのかい」


「生きているわ、しっかりしなさい」


瞼を閉じれば浮かぶ紙一枚
記された『ごめんなさい』の文字
光に泳ぐ塵埃


「姉さん、僕は死にたくないよ」

#詩

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ジャパニーズ イン ザ 外国

thread
海外でジャパニーズイングリッシュ
行き先の目的地を訊けば
ジャパニーズ、と
怪訝な顔して腰を突かれ
あっちだよ、って
忙しいから邪魔扱い

なんなんだ
あのでかいジャパニーズ、って声は
まあ、空港だから
騒いでしまえば直ぐに
捕まってしまいそうだから
ここはガマンガマン

こういう時に
自分は日本人だという
誇りがあることに気づく
日本人を馬鹿にするなよ、と

いい加減な空港スタッフの答えに
再び掲示板を見て
あっち行ったりそっち行ったり

到着の遅れ
手続きの行列
間に合うはずの……

おいおい、トランジットの飛行機は
すでに出発時間を過ぎている
(トランジット:入国せずに乗り継ぎ)

ああ、ここで一泊、二泊?
それでも搭乗口に走って走って

走って!

あれれっ
飛行機の出発がずいぶん遅れているぞ
間に合った……

走り過ぎて喉が痛いし
自販機で使える通貨は持っていない
椅子に腰掛け呟いた
ギブアップ、に
笑われるし

そして、搭乗口の係員が唐突に訊いてきた
ビジネス?
気持ちを切りかえようと
ノー、エコノミー
そんなジャパニーズオヤジジャグも
空振り三振してしまった

そんなわけで飛行機には乗れたが
ラッキーだったことより
ムカムカした気分が追いかけて来る

まあ、世界にはいいひともいれば
素っ気ないひともいる
それは世界共通なんだろう

でも、やっぱり日本って優しい国だよなあ
そんなことを考えている
今週は俺、外人

#詩

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オアシス

thread
身体の心配
家族の心配
お金の心配
仕事の心配

押しつぶされそうになった時
ひとり落ち着ける場所

私はiPadに詩を綴る
そこには世界があって
手に届かないものは
見あたらないくらいに心地よい

上手に世間からは逃げることができ
身体を傷つけることなく
健康的に精神も癒やされてゆく

詩があるから
僕は今日も生きていける気がする

大袈裟だよ

そう言われるかもしれないが
それほど強い人間でもなく
最近はその思いが強くなるばかり

悩みは悩むほど落ちてしまう
悪い方へ悪い方へと

でも僕には詩がある
変わらない自分でいるために

今日も詩を書く
明日も詩を書く
明後日も詩を書く

死ぬまで詩を書かずにいられない

#詩

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アシスタント・サンタの調査業務

thread

みなさんはご存知でしょうか
12月25日はクリスマスですが
アシスタント・サンタの調査日でもあります
サンタクロースが訪れたあと
来年のクリスマスをもっと盛り上げるために
どこにでもいる普段着のおじさん おばさんたちが
メモ帳と鉛筆を持って朝方から情報収集
あなたの街へ調査に来ています

さてさて
何を調査するのでしょう


ちゃんたちゃん ちゃんたちゃん きたよ
うれちぃ うれちぃ ちゃんたちゃんすきよ

3歳 女の子
とてもプレゼントに喜んでいます
はい メモメモ


やっほー へんしん とうっー
ぼく めちゃつよいぞ

5歳 男の子
サンタクロース ナイスです
去年の業務報告を活かしましたね
はい メモメモ


ああ これ
あの店で2980円で売っていたやつだ
友だちとこれであそぼっと

10歳 男の子
クリスマスプレゼントの値段がバレてしまったようです
これは盛り上がりに欠けてしまう
はい メモメモ


うわー 欲しかったの これ
ピンクのがもっと欲しかったけど
でも嬉しい

11歳 女の子
惜しいです
サンタクロースへ 色が違ったね
はい メモメモ


今年はセーターかよ
なんだよイニシャルのKとか入っているし
母ちゃん とりあえず あいがとうな

15歳 男の子
どうやらサンタクロースを母親と勘違いしています
手縫いというのは手応えありました
はい メモメモ


うわっー 素敵
このペンダント 一生大事にするは
サンタさんにお礼の手紙書かなくちゃ

17歳 女の子
ハートのペンダントをありがとう
手紙を両親へ渡しています
この子もサンタクロースを勘違いしてますね
はい メモメモ



報告書

今年の傾向としては
サンタクロースの業務が多忙のため
時間が取れずに手づくりから
既製品のプレゼントが多い傾向が見られ
その点は盛り上がりに欠ける要因と考察する

プレゼントされる年齢が上がるに従って
サンタクロースを親と勘違いしている傾向は
例年通り大きな課題のひとつである

しかしながら
プレゼントを貰った子どもたちは
最高の笑顔で喜び
感謝の気持ちもつことは今年も変わらず
準備段階からお届けまで
サンタクロースの努力は評価されるものである



お分りになりましたか
これがアシスタント・サンタの業務です
クリスマスを盛り上げるために地味ながら
子どもたちのために頑張っていますよ

ではでは
アシスタント・サンタのお話はこのへんで


メリー クリスマス!


パパッン パッン パーンッ

#詩

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見る

thread
見えていないモノの方が多いのに
見えたモノの方が真実ように
間違ってしまうのだろう

僕らの想像を広げるために
たぶん目は存在しているのだろう
見ることより見ようとする
その生きた目を持たなければならない

目で見えないモノのを見ることが
僕らのほんとうの目であって

空の青の向こう

夕日の紅の向こう

この手の向こう

僕の向こうの君を

#詩

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神経花火

thread
身体の中に花火があがる

足の土踏まずあたりから火をつけられ
神経に沿って首あたりまで
キョーンㅤキョーンㅤキョーン
そんな感じで一日に何十回もあがる
初めて精通した時のように
電気が走って行く特異体質になっている

神経っていうのは伝達が得意で
潰れた頚椎から
悪ふざけの信号をどんどん送る

その花火は痛いわけではないが
あがるたびにビクっと
動かしている身体を止めてしまう
消えて煙りになるまで景色を眺める

いったい私の身体はどうなって……
もうこの刺激を五年ほど経験しているが
十代の花火を打ち上げ続けては
心はふざけて玉屋なんて叫んでいる

まだなんとか許容内の打ち上げ花火だが
いつの日かちまちまの線香花火くらいに
なって欲しいと願っている
遊べない花火はしないほうが良いだろうから
#詩

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