雨の誘(いざな)い
Aug
19
どしゃ降りの中へ
僕はそこが落ち着ける場所のように
ビニール傘の雨音を聴いている
誰もいないアスファルトの上
やはり僕はひとりなんだと
けっきょく図書館へ向かった
詩は書くけど
ひとの詩はほとんど読まない
なぜだろうと考えひとつの答え
身を投じないと見えてこない世界
僕はとてもそれに疲れてしまうから
しかし
今日は詩集だった
雨の悪戯なのか
ただの気まぐれか
奈良少年刑務所詩集
『空が青いから白をえらんだのです』から
(詩・受刑者/編・寮美千子//長崎出版)
ひとつの作品
ゆめ
ぼくのゆめは……
僕はこの詩に……
しばらく口が塞がらなかった
少年を取り巻く人間関係
家族や社会との関わり
具体的なことは何ひとつわからない
それでも如実に気持ちを表現していることの驚き
とても弱く白くまっすぐに語りかけてくる
僕もこんな詩が書けたら……
そんなことを思いながら図書館を出て
雨の行き先に沿ってどこまでも歩いて行った