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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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すてきなお目め

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すてきなお目め


夜のネコちゃん
まんまるお目めで
なにをねらっているの

虫さん
風になびくスカート
それとも
わたしには見えない
あれなの

こわいこわい
私の気のせいよね

昼のネコちゃん
ほそ長お目め
どうしてきれいなの

クリスタルの
きれい、みわく、きらりん
夢の世界が見えるの

ネコちゃんのお目め
宝もののお目め

そのお目めで
わたしがどんなふうに見えるの

#詩
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壮大性理論

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宇宙の構成について
物理学の博士さんが熱弁

宇宙の物質は
水素やヘリウムの元素は5%に満たず
宇宙の殆どは
暗黒エネルギーと暗黒物質で構成され
我々のような人間の原子は
0. 02%の存在に入るらしい

はあ
なんとか書き留めたよ
難しいこと言うから
ノートするの大変だったよ
液晶画面で熱弁する物理学の博士さん

あんなに重そうな飛行機が
飛んでしまうのも理解できないのに
暗黒とかいう真空のことを言われても
ちっとも解らない

五桁の数字さえも右から左の
俺の短期記憶じゃ
暗黒云々は理解不能だ
残念だけど仕方ない

でも解ることだってあるんだ
宇宙は想像できないくらいデカくて
その中で生物として生きている俺たち
これは奇跡よりも遥かに確率が低い
宝クジで六億が何度も当たっても
そんなのは比じゃないくらい
俺たちはラッキーな感じになってる

まあ
生まれてすみませんと
残念がるひともいるけど
ひとそれぞれ
そんな奴がいるから
面白いって感じもするよ人間

いやいや
俺たちが生きているのではなく
これは蜘蛛の夢だと
言ったひともいたけど
それは違うと思うよ
だって
ほっぺをつねったら痛いから
俺たちは蜘蛛の演出した役者じゃないはず
でしょ?

そんなことより
すごい話をその物理学の博士さんが言っていたよ

もしタイムマシンで過去に戻ると
本当の自分と
スラッシュのついた自分が存在するんだって
だから後者の自分は自分ではないらしいよ
じゃあ
それって誰って感じだけど
なんとなく寂しい存在になってしまうね

まあ
タイムマシンがあったら
スラッシュ自分がいっぱいになって
ほんとうの自分を探そうとしたら
「ワォーリーを探せ」より
難易度が高くなるよ
やっかいな話だ
でもそれには
タイムマシンがいっぱいないとね

疑問がひとつ
タイムマシンでもとの
自分のところに戻ったら
スラッシュ自分は
スラッシュスラッシュ自分になってしまい
帰る場所がなくなっちゃう
やっぱり寂しい感じになっちゃうねかな

なんだか物理学って面白いみたいだ
それに
博士さんってユーモアがないとダメなんだね
だって面白い話ができないと
誰も聞いてくれないだろうし
ほんとうのことってユーモアの中にあるんだよ
きっと
面白くないと説得力ないしね

物理学の博士さん
今回の話
いい感じだったよ

#詩
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初秋

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そ、の字をなぞり
秋が落ちてきました
青を焦した抜け殻
おとなの香りがして

の、の字をなぞり
わたしは回っています
潮風の想い出
ため息に変えて

瑞々しさはどこへ
軽さは静けさ
カサカサと呟いて

こ、の字をなぞり
二葉は離れてゆきます
黄昏ゆくあなた
さよならさえ色褪せて

ろ、の字をなぞり
足元に落ちてきました
手にとった一葉
枯れても紅く艶やかに

#詩
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月曜日の朝

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駅へ近づくと
女のわめき声が聞こえてくる

昨夜の不協和音を引きずったかのように
痛みからくるものではなく駄々を捏ね
イタイ、イタイと救急隊員を困らせ
月曜日の朝から現実のプレリュードが流れる

エスカレーターで降りホームに立つ
まだ、微かに女の声が聞こえ
誰もが何かを感じながらも
自分の視線を確かめながら今日一日の
エネルギー消費の無駄遣いを避ける

なるべく、静かな朝を求め
なるべく、何もないように
なるべく、感情を揺れずに

腰に貼った湿布薬がジワジワと
痛みを抑えているのか
痛みを強調しているのか
カラダは軽い拒絶を示しながらも
向かう場所を避けたりはしない

なるべく、痛みを遠ざけて
なるべく、何もないように
なるべく、イタイと言わず

一週間というサイクルを見通しながら
心は此処にあらずのプログラムを発動し
月曜日に順応した知恵で
おはようを遠ざけるように流れ混む

#詩
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日曜日の朝は

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おはよう

シリアルに牛乳をいっぱい
レーズンの粒にニヤつき
射し込む陽射しは柔らかくて

今日の予定は?

特にありません!

窓からの景色も優しく
自由な時間が広がっている幸せ

いいじゃありませんんか
なにもない日曜日ってのも

ああ、まったりしていよう
雲の流れを横目に
読書なんかしてコーヒーを飲んで

そんな時間も大切ね

ああ

二匹の猫が足元でじゃれ合い
日曜日の平和で満たされてゆく

物干で揺れるTシャツ
朝からツイストを踊っている

撫でる風はサックスのように
陽気に吹かれては上機嫌

洗濯バサミの擦りあう音さえ
小鳥のさえずりのように

車の流れは波打つ音のように
カーテンは靡いいて寄せては返す

幸せね

ああ、なんだか幸せだね

#詩
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パイオニア詩人

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図書館には詩集がある
私の至福の時間を棚から選ぶ

有名な詩人の詩と対談が書かれたもの
分厚い本を抱え明るい場所へ向かった

そこには
サービス精神たっぷりの
とても素晴らしい文字が繋がり

プロの詩人がいるもんだ
関心するばかり

私が感じたのは芸術でない詩
エンターテイメントな詩
そんな印象だった

詩はくだらないもの

詩人の言葉には愛情が見えている
生きた世代の照れという美しさがあり
私にはない時代の色に感銘した

自分の父親と被る面影
職人の現役詩人に会えた幸せ

そして
どんな言葉で締めくくるのだろう
そこに興味が唆られるのは
不謹慎なことでしょうか

いや
そこは聞き逃してはいけない

#詩
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昭和の図面書き職人(東京編)

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あっし(あたし・わたし)は外の空気が吸いくなりまして、設計事務所を抜け出しタバコを吸っていたのであります。そこへ、課長さまがいらっしゃって「仕事が詰まってんだから、事務所に戻ってとっとと書け」なんて、申しましてあっしのくわえていたタバコをつまんで、ポイって投げてしまうのですから、いただけない話で。課長さまは図面も書かずにひとの尻しか叩くことしかできない、へっぽこ野郎でございます。あっしが会社のためどれだけ身を粉にして働いているのかなんて、雲の上の話なのでしょう。広尾ガンガンヒルズのサッシ(窓枠の建材)を全棟、あっしが全て徹夜して線を引き続けたというのに、課長さまは「取引先へ行ってくる」と、おっしゃりパチンコへ行かれてしまうのですから、間尺に合わないことでございます。あの方が課長さまなのですから、あっしはもうこの会社にたいそう呆れちまった次第で。課長さまの頬に一発、食わらせていただき会社からさよならいたしましょう。そりゃ、スキッとするにちげえねえ、なんて思うのでございます。

まあ、あっしもこの業界で食っていかなきゃ生きていけねえ身、チンピラみてえなことはしたくはございません。なんせコブシが汚(けが)れるってえのは、いただけねえことと思いますし、この手は大事な商売道具ですから、課長さまを殴るにはもったいないでございます。なにかぎゃふんと言わせる企てはないかと考えたのです。そんなわけで、図面の締め切り三日前に仮病を使い会社を休むという流れになりまして。今、てえへん(たいへん)大きな仕事が入っていまして、その図面を書けるのはあっしだけ、同じ課の連中には無理なわけです。それで課長さまがあたふたすんのを想像しますと楽しくなったのでございます。

案の定、課長さまから電話が来まして。
「おい、齋藤くん、具合はいかがかな、お見舞いはバナナかい、メロンかい?」
なんて、手のひら返すようなこと課長さまがおっしゃり、あっしは僭越ながら言葉を返したのでございます。
「そうですね、きれいなお姉ちゃんがメロンをあーんと食べさせてくれたなら、治るかもしれませんが」って。
そしたら課長さまが、ほんとうに網目のついた大きなメロン数個とお姉ちゃんの裸の本を、えっちらおっちらと持ってやって来るのですから、おったまげたわけで。どんだけ、他力なんですかね。自分で図面ぐらい書きゃ済むのですから。けど、課長さまの書いた図面は現場のでいく(大工)から「ヘッタクソな図面だな」って、ほざかれるくらい使えねえ代物で。線もろくに引けねえ課長さまは、口だけは金魚みたいにパクパクしてしゃべり続けるのだから、滑稽で憐れにも思えてきやした。なんで、やっこさん(あの方)が課長さまになれたか、とんと理解できませんで。まあ、べっぴんさんのあの本をめっける(見つける)才だけは、右に出るものはございませんが。

結局、締切日も出勤しませんで、こんな会社なんて辞めようと思ったのです。それでもまた課長さまから電話がかかって来まして 、「具合はどうだ。もう、大丈夫なんだろう。頼むから、締め切りに間に合わせてくれ。今月分の給料は、少し色つけてもらうから、なあ、出勤できるだろ」って申します。
「するってえと、指五本分になりますかね」
あっしはぶっきらぼうに発しました 。
「んっ、二本が限界だ」
「あいたた、また頭が痛くなって」
「わかった、わかった、では三本出そう」
「四本。ここは、譲れませんよ」
「ふぅ〜、わかった四本な」
それで、事務所に行き特急並みの速さで図面、書きました。するってえと、課長さまがニタニタ顔してあっしの手を握りやがったもんだから、情けねえ男だねえ、なんて思ったのです。その後がさらによろしくございません。課長さま、あっしに爆弾を投げたもんですから。給料を指四本分の上乗せ、ってことだったのですが、一本は一万円ではなく、千円札を四枚上乗せた給料を渡してきたんですから、たまげてしまい、あっしの頭がドドンっと爆発したわけで。

けっきょく、課長さまの顔はもう拝みたくないと会社は辞めまして、あっしは自営で設計屋を始めたってわけです。それでも、課長さまが懲りずにまたあっしに仕事を依頼してきやがるのには、開いた口が塞がりません。そりゃ、あっしでないと書けない難しい図面で、札束を目の前にちらつかせて来るのですから、ここまで来ると尊敬してしまうのでございます。結局、あの手この手で、ひとにやらせて仕事を納めてしまうのですから、たいした玉ですわ。そこに課長さまが出世したわけがちらりと見えたわけです。けど、やっこさんを、いやいや課長さまをひととして認めたわけじゃありませんぜ。

「まあまあ、そう言わずお代は弾むから」
「図面、一枚を三千円の二十枚以上なら」
「二千円 が限界だな」
「仕事には困ってないので、ほかをあたってくださいな」
「なら、二千五百円でどうだ」
「それでは、即払い、ってことでおねえげしますぜ」
「わかった、助かる。では、やってくれるんだね」
「ガッテンでやんす」
それから、課長さまとは二十年の付き合いっていうのも、腐れ縁ってことですかね。七面倒くせえ付き合いをこなすのも、黒っぽい(プロの)稼業でやんすかね。

#詩
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輝ける場所を

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やっと見つけた
僕が輝けると思える場所

だけど今は少し違って

表現者にとって舞台がなくては
寂しささえも演じられない
落ち着かない足取りで
綴ってみればそれは孤独の詩(うた)

上手く言えないんだけど
僕は振り出しに戻ったようだ
あの孤独な詩作の日々

いや、一周まわって来たはずだから
ひとりで次の階段を上れるはずなのに
なぜだろうこんなに寂しいのは

僕が求めていたのは
詩作上のスキルアップなんかじゃなく
詩を介して湧く情の目覚めと紐づけ

励ましだったり

繋がりだったり

志しの同行者がいる安心感の
癒しだったのかもしれない

でも、さよなら大好きな場所
僕はもう背中を押され次の階段へ
向かっているのだから

乗り越えなくては
次の輝こう場所も現れやしない

それが孤独の詩作であろうと
僕は詩を綴り続けなければ容易く
崩れてしまうのだから
思いに思いを焦がし
吐き出す言葉は詩的に連を重ねよう

まだ見えぬ次の場所
恩恵だけは忘れずにやはり詩を綴り続ける

僕にはそれしかなく
それしか出来ないのだから

#詩
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はぐれ雲

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はぐれ雲


はぐれ雲は高層ビルに隠れ
僕の様子を想像している

あれは夢ではなかったはず
孫悟空のように君に乗っていた

君は僕の指笛から逃れようと
抵抗してじっとしている

それなら驚かしてやろう
ガラス張りに写るしのび足で微笑み
高層ビルの角まで進んでみる

僕を乗せてどこへ行くんだい
それで君が解放されるのだから

さあ、僕を乗せて……

あれっ、一面の青空
雲ひとつない眩しさを浴びる

ああ、僕がはぐれ雲だったんだ
自分に諦めた時、君とはぐれたんだ

僕はいつしか追いつくだろうか

心が雲に乗るだろうか


#詩
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息子へ

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何もせず
自分はどうにかなる、大丈夫
って、のは逃げだからな。
世間は上手く出来ていて、
そういうのをすべて知っているから。
努力に勝るものはなく、
突き詰めていけば努力は充実になり、
楽しみになる。
当たって砕けろ!
まずは当たって行かなくちゃな。

#詩
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