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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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風に吹かれ

thread
風に吹かれ

よく詩に出てくるフレーズ
同じ言葉を綴ってもひとそれぞれの
風への趣きには違いがあり
感受性にも違いがある

風の中へ
僕がやさしく手をさしのべ
エスコートをしているだろうか

風に魅力があり
退屈をさせてはいないだろうか

風には哀愁があり
独自の世界を創っているだろうか

その風の中で
君の喜びを満たすことができるだろうか

#詩

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葉蓋点前

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タンㅤタン
タン
タンㅤタンㅤタン

水指に萩の緑が艶る
柄杓の背で水面を掃き
清らかな水を釜へ垂らせば
一掃した日常を
色づけてゆく雨の音

シャッㅤシャッㅤシャッ
シャッㅤシャッㅤシャッ

茶筅通しは
ゆっくりと ゆっくりと
水に馴染む音
侘び寂びの扉は開かれる

炭から奏でる練香の
昔々に遡る喜び

床(とこ)の額紫陽花
今の色
梅雨を楽しむ雲心地

抹茶を溶く器に
浅葱色の薄手
金継ぎされた青磁平茶碗
受け継がれる茶の精神
砕けても七転び八起き

茶碗をまわし
無地にもある表裏
弧を描き
静かに飾る顔合わせ

正客様
一服
目を閉じ
味わう時の旅

梅雨良しとㅤ語り繋げよㅤかたつむり

結構なお点前で

夏釜の広き蓋
閉じる扉は少し開けたまま
湯気は雲となり雨となり
梅雨を愉しむ茶の憩い



*お点前(おてまえ)
*水指(みずさし・釜に水を足すための器・水を入れておく器)
*柄杓(ひしゃく)
*金継ぎ(きんつぎ・割れた陶器の修理を金〔接着材料〕で行う手法)

#詩

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釣られびと

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今夜は揺れるなあ

東京タワーのてっぺん
いつもながら座り心地が悪い
今夜も座布団を忘れる

上弦の月は
俯瞰する景色をほんのり淀ませる

何が楽しくて
光になってあっち行って
こっち行って
迂回しているのさ
そんな狭いところで
何が見えるというのかい

ストレートネックは
君たちの進化なのかい
下ばっかり見て
自然から遠ざかる変異は退化だよ
こっちの世界では
笑われているぞ
デジ小僧って

さてさて
今夜は何を釣ろう

そうだな
名誉を餌に
勘違いなヤツでも釣ろうか

それとも
ダイヤモンドを餌に
空っぽのヤツでも釣ろうか

そうだ
今夜は幸せを餌に
不幸なヤツでも釣ろう

うん
そうしよう

幸せを餌に釣糸を垂らす

ああ
なんだよ
今夜は全く餌に喰いつかない

そんな訳はないはず
地上を這って生きているヤツらが
幸せなわけがない

受験では失敗し
安給料でいつも腹減っていて
きれいなお姉さんに声かけシカトされ
怪我して身体の調子が悪くて

かつての俺のように
不幸なヤツばかり
地上にはいるはずだ

なぜ
釣れない

俺の作った疑似餌が悪いのかい
かなり完成度の高い餌ができたはずなのに

俺のクオリティが下がっちゃった?

まあ
いいや

他の餌で
笑えるヤツを釣ろう


あれっ

なんだこれ

目の前に湯気を出したコロッケが登場

うーん
これは
俺が地上で子どもをしていた時
母さんが作ってくれたコロッケに間違いない
この香り
この形
この色

ああ
あの頃は
弟と鬼ごっこしていただけで
楽しかったよな

お兄ちゃん
お兄ちゃん
って
あいつも可愛かったなあ

まあ
とりあえず
このコロッケをいただくとするか

いただきまーす


ウオッー

引っ張られてるー

いったい何が起きたんだー


あらっ
釣れたみたい
不幸な男

こいつ
どんだけ不幸な顔しているのよ

気持ち悪る〜

逃そう
っと

さよなら〜

ああ
メチャ
気持ち悪る〜

やっぱり
不幸な男
って
最低〜

#詩

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姥捨街

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立ち竦む私

顎から
指先から
垂れる滴はやがて繋がる
カラダが漏斗になり
その垂直な流れは水溜りをなす
表面張力を超えて無意味に拡がる
流れ着く果ては
水かさが一向に増えぬ海への虚しさ

止まぬ雨の中
私の絶望と真逆に向かう母が行く
雨粒が曲げた腰を打つ
其処には惨めさなど無い
母の行き先は明確

足を滑らし母は蹲り
なるがままに雨に打たれている

最後の孝行と母を背負う
軽い筈のその身体
しかし
その重さに狼狽える
次第に私の器は耐えきれず
毛細血管に沿って罅(ひび)が走る

私の苦悩を察し
母は自らの足で雨に流されて行く

やがて
雨は紅く染まり
母を無いものとした



(介護疲れでの事件、自殺総数に占める高齢者の割合の上昇。行き届かぬ福利、行き届かぬ精神)

#詩

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俯瞰座禅儀(ふかんざぜんぎ)

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邪念ㅤ邪念 ㅤ邪念
邪念を渡る橋はなく
立ち止っては孤立無援(こりつむえん)

ならば
此処に坐り

消せぬ己の鬼
対峙の恐れに臨(のぞ)めば
ありのままの己に習う

己を観ずにひとは観えず
舞うひとを観て己は観えず
己を観入ってひとを観る

ただ
此処に坐り
己の仏を掌(てのひら)に
命脈を保ち心身脱落

浄土に坐る蕾ひとつ
救い手の花びら八方開き
自由を齎(もたら)し悟りの一輪

此処に坐り
己を照らし世を照らす
禅の道は浄土への道



孤立無援 / 三省堂・実用日本語表現辞典より引用
…仲間・味方だれもおらず、助ける者もいないさま。自分だけで戦う様子。

心身脱落 / 三省堂・実用日本語表現辞典より引用
…道元の用語。身と心の束縛から自由になり、真に無我になりきった悟りの状態。

#詩

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ゆとりある寝坊

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とても明るい

いつもの朝だというのに
あれっ、家族がみんな起きている
んっ、こりゃ寝坊か

目覚ましのアラームが鳴る前に
起きるようになり数年が経っていた
時間をセットしない日もちらほろ

油断の隙に躓いてしまった

いやいや、それでも遅刻はしない
いつも職場にはかなり早く着いている
寝坊を一時間しても大丈夫

なんせ、歳を重ねるたびに
何事にも咄嗟には動けなくなるから
早め早めの行動をするようになる

しかも、眠りの質がおちて
浅い眠りと早起きが進んでしまうのだから
疲れはたまっていく一方だ

今回の寝坊はよく眠れたということで
たまにはいいじゃないかと納得

そして、慌てるほどの寝坊でなければ
ちょっとしたイベントでいいもんだ

ひとりでの朝ごはんの静けさもなく
そこには朝の賑やかさがあり
子どもらがあれがない、これがないと
朝らしい朝は活気があった

仕事の下準備ができないのは
気持ちが落ち着かないけれども

行ってきます
行ってらっしゃい

そんな朝の始まりは
頑張っている自分への些細な見返り
だけど、大きなやる気になるのだから

明日からは三十分の寝坊をすることにしよう

#詩

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騒なき詩人(ぞめなきしじん)

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人が見る背景を消し
俗世界を脱け出す

言葉を捨て
暮らしを捨て
葷酒(くんしゅ)山門に入るを許さず
煤けた馴れ合いの衣を剥ぎ取り
裸の表現者に微塵の躊躇はなし

芸術の道具など要らない
言葉以前の世界で叫びの匂いを感じ
赤子になった全身からは唸りだけが発する

空間の揺さぶる振動は魂を燃やし
塵灰(じんかい)となった生き様
その浮遊した足掻きは風に飛ばされ
詩人は跡形もなく歌い切る




葷酒山門に〜
…葷酒は、心を乱し修行の妨げになるので、寺の門内に持ち込むことは許さない。禅寺の山門の脇の戒壇石に刻まれる言葉。(デジタル大辞典引用)

葷酒
…仏教用語。葷と酒のこと。葷とはねぎの類に属する植物をいい,これらは刺激性が強く臭気があるため,酒と同様に仏教の出家修行者には禁じられている。
(コトバンク引用)

#詩

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子どもの頃の電車

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子どもの頃の電車
木製の床に油
その存在感のある匂いは
黒く、てかてかしていた

おじさんは
あたり前のようにタバコを吸い
シートはぽこぽこと
焦げえた穴がちらほら

風天の寅さんみたいな
酔っぱらいが叫んで
こっちに来るなよ
こっちに来るなよ
子どもの私は祈った

扇風機のある車両だと
首振りに合わせて
円を描いては
くるくる回っていた

がたん、ごとん
揺れては車内に響き
すれ違う電車には
ガラスが割れそうだった

ドアに腕を挟まれても
走り続けて行く電車
知らないおじさんたちが
よいしょ、よいしょ
助けてくれた

ああ、いつからだろう
電車でどきどきしなくなったのは

ああ、いつからだろう
電車でわくわくしなくなったのは

#詩

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from now on

thread
Just a 13.
Just a 14.
Just a 15.
Just a 16.
Just a 17.
Just a 18.
Just a 19.
Just a 20.
Just a 21.
Just a 22.
Just a 24.
Just a 25.
Just a 26.
Just a 27.
Just a 28.
Just a 29.
Just a 30.
Just a 31.
Just a 32.
Just a 33.
Just a 34.
Just a 35.
Just a 35.
Just a 36.
Just a 37.
Just a 38.
Just a 39.
Just a 40.
Just a 41.
Just a 42.
Just a 43.
Just a 44.
Just a 45.
Just a 46.
Just a 47.
Just a 48.
Just a 49.
The poetry is fine from now on.

#詩

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レロレロミックス

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休み時間
ナイロン弦は張り巡り

コロン、トロン、ポロン

教室に逃げるツワモノ集まって
先生は
校庭に埋まるサンダル探している
教壇からハートの涙
代わりにピエロが配って

拍手、拍手、拍手の竜巻
覗きに来た二丁目のゴンさん
潜り出す

やったねゴンさん
脱出成功うれしいね
では
また明日会いましょう

それでは
ピエロからの連絡事項

幸せ黒板が
がっくりチョークと結婚
美化委員の副班長よ
ご祝辞を

あの
あの
あのはあのでも
あのあのはあのなのだから
あのときあのしたあのはあのでしょう
おめでとう!

拍手、拍手、拍手のレインボー
キレイに包装されたのは四丁目のバンさん

惜しい惜しい
鐘が鳴りすぎたから
日の丸弁当の梅干しは返却オーライ

はい、はい
出っ歯で叩くピエロの汗
水しぶきのチャイムを鳴らしたら

ドスコイ
パン、パン、ドン、ドン 、ドン

発車!


では
教科書の65ページを開いて
問2の因数分解を
ん〜
誰にしようかな
そこの外ばかり見ている齋藤
前に来てやってみなさい
授業態度が悪すぎだな
いつもボッーとして
お前の将来は心配だよ
ほら
早く前に出て黒板に書きなさい


黒板さん
チョークさん
ご結婚おめでとう!


何を書いているんだ
どうかしているんじゃないか

………大丈夫か齋藤
顔が真っ青だぞ
保健室に行って来い


拍手 拍手 拍手の蜃気楼
縦に横に斜めに刺さったのは三年二組の齋藤さん

ほい、ほい、ほい

ほい

もうちょいで
月から太陽生まれるよ

先生のサンダル
笑い出す

飲み込んでは吐き出す
ピエロの舞
蛍の陰を追いかけて
踊りだす教室の合言葉
日替わり号令

レロレロピー

#詩

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