どうしたの いつもの君とは違うね ふーん 金魚になったんだ 一点を見つめて ゆったりと泳いでいる その姿も悪くはないけど 突然のことで僕は開いた口が 塞がらないよ えっ 僕も一点を見つめているって あれっ 腰がくねくねしてきた あれれあれれ 金魚になったのか なっちまったようだ 人間さよならってことなのか こんな日が来るとは…… しかし狭い世界だね そして僕らは 水槽から出られないのか…… ああ この運命を受け入れよう 君と一緒だから大丈夫だよね おいおい 向こうから黒マントの金魚が来るぞ でかい目をして大きな図体 ありゃ間違いなくボスだ 怖いから知らんぷりをしよう 誰かが僕らを覗いている とんとんと ガラスを叩いているけど なんだろうねあれっ こっちはストレスが溜まるんだよ やめてほしいなあ おお その少女も一点を見つめているぞ ああ 口も開いた もうじきこっちへ来そうだな ようこそ金魚の街へ 仲良くやって行きましょう そんなに悲しい目をしないで お話をしましょう そうそう 黒マントには気をつけた方がいい どうやら奴がボスのようだから ほらほら また人間がこっちを覗いているぞ ようこそ金魚の街へ
へへっ へへっへっ たぶんそれっ ヘっヘっ さたでーもーにんぐ 聴いているよ 雑務を 丸テーブル載せ へへっ いえっいえっ たぶんそれっ いええっ 瞳は 丸テーブルに反射させ 進むよ進むよ さらさらへへっ 締め切りを 丸テーブルに載せ たぶんそれっ いえっいえっいえっ へっへっ じゃすとふぃーりんぐ
おはよう チョコ、どうぞ 昨夜からの コンビニバイトの若い兄ちゃんと 早朝に挨拶を交わす 赤髪の兄ちゃんは二年くらい 二日に一回ほど働いている なかなか出来ないことだ 大学生かバンドをやっているのか いつも明るく元気をもらう レジ袋にチョコがふた粒 ありがとうと揺れて
ずいぶんと若さも なくなった気がする この寒さの中に 放り出されたままなら すぐにでも死に絶えそうだ しがみついて生きている まだ自分の存在に 他者からの存在に ひとりの存在ならば 寒いとも思わないだろう すぐにを望むだろう それでいいんですか そんな言葉などは 吐く息のように消えるだろう まだ温もりを求めている 寒さを感じるほどに 生きている足音が響く 寒い寒い寒い寒い と
静かな静かな静かな街で ひとり哀しい心が歩いている 望んでいたのかもしれない 望んでいなかったのかもしれない もう忘れてしまった始まりに 降り始めている寂しさに哀しい 賑やかな賑やかな賑やかな街で 僕は汗をかき走っていた 振り返ることなど知らずに 大事にしていたのは無邪気とか無能 そのまま進めたのなら 孤独なんて寄せつけなかっただろう 馬鹿のままでは居られない その気づきの震え 静かな静かな静かな街で ひとり哀しい心が歩いている
天から手がずるずると伸びて来て 布団の中にいる私の首と腰を撫でていった なんとも温かくやさしい手 もう歩くことなど出来ないと思っていたが あの日から痛みが溶け出して 身体が動きだした 確かあれは手術して一週間後のこと よく知っている手の感触だった
月曜の通勤時間だというのに 朝から詩なんか書いて 涙を流しているんだから 今週、大丈夫か自分 ああ、かっこ悪いから 指で拭ってみると そんなにきれいな涙ではなく だんだん哀しさに冷め 今度は微笑んでいるんだから 今週、大丈夫か自分 たぶん大丈夫 きっと大丈夫さ 今まで根拠のない自信に 助けられて生きてきた訳だし このスタイルは変えられない もしかしたら これが自分の強さなのかも そう思い込める馬鹿さを ずっと、ずっと、そのままで
余命も知らず 君が逝ってしまったことを どうしてなんだよ と、今でも言いたい 私がただ自分の気持ちばかり 考えているからだろう けれど、どうしても 君の優しさは友として 納得できていない そして、君にとって私が友でないという 馬鹿なことを考えたりする おい、なんとか言ってくれよ