静かな静かな静かな街で ひとり哀しい心が歩いている 望んでいたのかもしれない 望んでいなかったのかもしれない もう忘れてしまった始まりに 降り始めている寂しさに哀しい 賑やかな賑やかな賑やかな街で 僕は汗をかき走っていた 振り返ることなど知らずに 大事にしていたのは無邪気とか無能 そのまま進めたのなら 孤独なんて寄せつけなかっただろう 馬鹿のままでは居られない その気づきの震え 静かな静かな静かな街で ひとり哀しい心が歩いている
天から手がずるずると伸びて来て 布団の中にいる私の首と腰を撫でていった なんとも温かくやさしい手 もう歩くことなど出来ないと思っていたが あの日から痛みが溶け出して 身体が動きだした 確かあれは手術して一週間後のこと よく知っている手の感触だった
月曜の通勤時間だというのに 朝から詩なんか書いて 涙を流しているんだから 今週、大丈夫か自分 ああ、かっこ悪いから 指で拭ってみると そんなにきれいな涙ではなく だんだん哀しさに冷め 今度は微笑んでいるんだから 今週、大丈夫か自分 たぶん大丈夫 きっと大丈夫さ 今まで根拠のない自信に 助けられて生きてきた訳だし このスタイルは変えられない もしかしたら これが自分の強さなのかも そう思い込める馬鹿さを ずっと、ずっと、そのままで
余命も知らず 君が逝ってしまったことを どうしてなんだよ と、今でも言いたい 私がただ自分の気持ちばかり 考えているからだろう けれど、どうしても 君の優しさは友として 納得できていない そして、君にとって私が友でないという 馬鹿なことを考えたりする おい、なんとか言ってくれよ
自分が可愛いという体裁の言葉を あなたから投げ掛けられた気がして それをどうやって優しさだと思い込み 聞けば良いのだろうか 本音を全て向けられて あなたとの社会が壊れてしまう方が もしかしたらスッキリと生きられるかもしれない しかしそれほど自分が強くもないのだから 切れるわけもなく変わることもなく 羽織っているのは薄っぺらな衣の重ね着 そしてあなたも同じ格好で立っている
その記憶はいいイメージだ 公共の場であのニオイを嗅ぐことがある もう五十年近く前のことだが 誘う記憶から幼稚園児だった頃にあった不安定の中 安心に触れるような空気感が蘇る 淡く甘い懐かしいニオイの元は探らない 名も知らないニオイと顔の思い出さない先生でいい 先生のいいニオイ
風に吹かれ 皺くちゃな弧を描き ポチッと小さな声が 誰に響くことなく 消えてゆくのがなお寂しい 僕は何処へ行く川面の枯葉 だからどうかお願い このままずっと 揺れる面影を浮かべたまま 流れ流れ流されて 僕は何処へ行く川面の枯葉
十円玉を入れ間違い電話 すみません、といって消える十円 もう財布には十円玉が一枚 もう間違えることはできない おう、齋藤か ああ、ちょっと待ってて そう言われ これは十円ではもたない なんだよ百円玉投入か ああ、ごめん急用が入って ガチャ お釣りの出ない哀しいさを 何度味わったことだろう