ぼくが歩くと 「もっとむねをはりなさい」 おとなにいわれた 空を見て歩くと 「しっかり地を見て歩きなさい」 ちがうおとなにいわれた 下を見て歩くと 「まえを見て歩きなさい」 ちがうおとなにいわれた ないて歩くと 「なくんじゃない」 ちがうおとなにいわれた おとなはだれも 「どうしたんだい」 といってくれない
アウト、セーフ、ヨヨイノヨイ! じゃん拳をして負けた者が服を脱ぐ 大人たちが盛り上がっているテレビがあった 坂上二郎が負けると野次が飛ぶ 女優さんが負けると歓喜の叫び 学校でも流行って 気がつくと自分がパンツ一枚になっている ヤバいと思った時に チャイムが鳴りホッとした想い出 (野球拳)
おい、今日はクリスマスだぞ ケーキを食べるだけの日になり 気がつけば大人になっている息子 俺には関係ない日だよ そう言って部屋に戻っていく はしゃぎ回る子どもらを想い出し ちょっと寂しくなる サンタさんへの願いはなく 部屋からは「恋人はサンタクロース」が 聞こえてきた
ほんとうに天国に居たんだね、ナナ おいおい、そんなに喜んで飛びつくなよ 地上に落ちてしまうぞ ナナ、ずいぶんと若くなっているな すると俺も若くなっているのか ほうほう、手のシミがなくなっている おっとと、足元に茶々がいるじゃないか 相変わらずスリスリして あんな事故でここへ来ることになって ゴメン、許してくれるか おおっ、父ちゃん ずいぶん足どりも良く歩いているじゃないか 病室で俺が もういいよ、楽になって そう言ったら眠るようにこっちへ来たんだね なんてことを言うんだ親に向かって と、怒っているかなと思ったりしていたんだよ 笑っているね、父ちゃん ああ、ここが天国なんだね 新入りの俺だけどよろしく頼むね
自分が嫌いになった時 どうにもこうにも立ち上がれない でも自分が嫌いになった正直さは けして悪いことではないと思う ひとりでないという証拠だ あれもこれもそれも 敏感に反応してしまうが 無理に自分を好きになるよりも 嫌いな自分に慣れながら
この環境はいつまでも変わらないようだ それなら陸に上がることもないか やめよっ、居心地いいし ずっとこの姿で生きてゆこう 笑う奴もいないし おおっ、海底にあるコイツはなんだ 硬くて見たこともない感じだな SPAMって書いてある なんじゃこりゃ まあ、俺たちには関係ないか
ひとに意見を言うのは難しい 自分の伝えたいことと 伝わることが違ったりする どれだけひとを理解しているか どれだけ自分を理解しているか ひとと自分がいれば社会ができる お互いの気持ちが わかり合った社会がいい ひとのために自分のために 勘違いされ勘違いしながらも 意見を言い続ける
中学生の時 ストレスで髪が白くなり 美容室へ染めに行った 待合室にはファッション雑誌が並ぶ中 『ぼくは12歳』という本があった 表紙に「ひとり ただ くずれるのを まつだけ」 と書いてあった 自分も12歳で詩を書いていた 中を開かなくても分かった 美容室でその本を借りて帰った
自動販売機で使えない 100円玉があった 数字の左右にシマシマ模様があり 丸みのあるデザインで好きだった 自動販売機の表示に この100円玉は使えません と、絵にバツがつけられ いつの間にか消えた100円玉 そんな話を休憩時間にすると いつの時代ですか、と言われた……