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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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夏の白

thread
「まさか」の
鋭利たちが刺さり
夏の肺は
黒い空を白く
身近に死を浮かせ
家族の過去と
未来に今を
詰まらせていく

軽症の私は
先に隔離解除され
玄関の向こうで
足枷が照り返しの
風に解かれ
苦い汗が滴れる

まだ高熱が続き
酸素を欲している家族
この雲が
どうか消えますようにと
祈り見上げている




(家族たちは通常に戻りつつあります。お世話になった医療従事者に深く感謝いたします)
#詩

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背後占い『字念屋』「咲」

thread
ごきげんよう
お入りになって涼んでください
冷たいお茶をお持ちしますね
どうぞお座りになってください

そうでしたか
学校で守衛さんを
もう醸し出す雰囲気から
生徒さんたちに好かれている様子が
想像できますね

それではあなたの背後にある
中核文字を見ていきましょう
リラックスしてください

はい見えました
花が咲くの「咲」の文字です
もともと「咲」の文字は
笑う「笑」の古字でありまして
「山が笑う」と言いまして
春に芽吹き山が華やかになる様子
山に花が咲くように微笑んでいる
そんなひとの心を和ます
素敵な中核文字をあなたはお持ちです

そうですよ
あなたが明るく笑顔で挨拶をされるので
生徒さんたちはハッピーな気分で
登下校されていることでしょう
そして「咲」の念字をみなさんに
そっとお配りして
前向きな気分にさせてしまう
愛しき中核文字です

ただご自身を咲かせるということは
土や光、そしてお水が必要です
これらのエネルギーの源を
しっかりと供給しなければなりません
ご自身の身体を労ることが大事になります
栄養のバランスをとり適度な運動を
心掛けて生活することをお勧めします

そうですか
以前は山に登られていたのですね
それでしたら心がリフレッシュするような
コースで楽しまれてください
あなたのパワースポットである山から
「咲」のエネルギーがもっと得られます
そしてもっと大きく咲いた笑顔をお裾分け
生徒さんからの微笑み返しにほっこりです

世代ですね
キャンデーズの「微笑がえし」
私もよく歌い踊っていましたよ

そうですか
これから夜の見廻りがあるのですね
ご苦労様です
では今日の占いはこの辺にしておきましょう

そのあなたの笑顔
ほんとうに癒されます

そうですね
本日はご来店いただき
誠にありがとうございました
お気を付けてご出勤くださいませ

#背後占い字念屋の詩 #詩

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リカバリー

thread
夕暮れ時の公園で呟く
どうかわたしが
元気でありますように

紙くずがカサカサと
風に身を引きずられて
踊りたくないのに
踊っている

今は我慢とか頑張りとかを
遠ざけたくて

ベンチに背を丸め座り
黄昏れ空なんか見て
浮き沈み物語は
始まっては消えてゆく

ボールが見えなくなると
賑やかな子どもたちは
わたしに贅沢な時をくれる

もう誰もいない公園
どうかわたしが
元気でありますように

ひとり佇む寂しさに冷され
気持ちがリセットする

ガッシャンと
自転車のスタンドは響き渡り
電灯の照らしが身体を包み込む
優しいお疲れさん

明日も
どうかわたしが
元気でありますように

隙間のできた心で
強くペダルを踏み込めば
風が心地よく
わたしは微笑んでいる

#詩

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車窓

thread
疲れは揺らされ
そっと我に帰る時
懐かしさへ入り込む

いつかの
切なくて涙を流した
いつかの
悔しくて拳を握った
いつかの
楽しくて腹を抱えた
いつかの
嬉しくて叫んでいた

想い出たちが
暮れては頬を染め

遠くほど
ゆっくり流れる景色
足元を高速で流れる枕木
弧を描く風
意味ある重ねは
窓の向こう
景色と溶け込んで

ひとりの揺れが
胸の詰まりを
息から吐き出させて
曇らせるガラスは
疲れを消す

今日も同じ心へ
帰る幸せに
ありがとうが洩れる

#詩

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ステイホーム

thread
部屋の中
春の風が嘆いている

グオオ
グオオ
グオオー

きっと俺のいる
部屋なんかには
来たくなかったのだ

そして風は死ぬ

また
次の風がやって来る
窓の隙間を使い
声を出すのさ

グオオ
グオオ
グオオー

俺みたいに
籠った奴になりたくない
そう嘆いているのだ

そして風は死ぬ

もう来ないのかと
待っていた
そう
春の風は止まない

グオオ
グオオ
グオオー

風は心の底から
運の悪さを
低い声で窓も揺らす

そして風は死ぬ

空を吹いていれば
いいものを
たまたま
俺のいるところに

グオオ
グオオ
グオオー

嘆く春の風は
死骸になり
俺の胸を積もりだした

やがてその重さに
俺は耐えきれず
マスクを忘れ飛び出した

#詩

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#君が落ちて来た

thread
君は突然にさよなら
追いかけられる場所でないところへ

猫の悪戯で落ちて来た一枚の写真
今でも若い君 変わらない君
僕はもう身体も心も変わってしまった

取り戻せない青空
痛くても声も涙も出ない悲しみが…

想い出になった君に辿り着いても
「どちら様ですか?」と
君は笑いもせずに言うのだろう

#詩

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thread
自分を愛していないとか
そんな話ではない

僕が僕でいない僕を
可哀想に思い始めたのさ

ひとの輝きばかりに眩しくなり
世間という椅子に座り
拍手を送ることばかり上手になり
自分からは何も光を放つことなく
足元さえ真っ暗で
どこに居るのかも分からず
誰かが生きる僕になっている

光放つ者から勇気をもらっても
僕のいつかきっとは
いつかきっとのまま
始まりもせず終わりもせず

それならどうなりたいの僕?

まずはそこから始めよう
考えることが僕になるから
思うことが僕になるから

もっともっと僕を探す
誰にでも引けるスタートライン
勇気なんていらない
踏み出した足音を響かせるだけさ

僕が僕へ近づいている

#詩

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#蝸涎詩

thread
361°のview
カランと氷が沈む勇気
見つめる未来に
ぷかぷか浮かび出す強さ
テーブルに涙の蝸涎
引き摺り進むリアルの光

#詩

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スクロール

thread
おいおい通り過ぎているよ
あんたが探している俺は
もう画面から消えているぞ
てかっ
俺のこと探しいていねえよなっ
ああ
こりゃすでに俺のひとりごと
やはり死んじまった奴のブログなんて
スルーされてすでに埃の山だな
あとどれくらい魂がインターネット上で
彷徨えるのだろう

検索でよく俺の一個前に出てくる奴が言っていた

 閲覧されないブログとかを
 クラッシュマンがギザギの刃物を持って
 僕たちの言葉や写真をズタズタにするらしい

 なんでそんなことを知っているんだ
 そんな作り話を俺は信用しない

 間一髪で助かったひとがいて
 クラッシュマンが現れてウオーって時に
 自分のリンク先に飛んできた閲覧者がいて
 ギリギリセーフだったらしいよ
 だからクラッシュマンを見ているのさ

 マジか
 嘘じゃなさそうだ
 そいつはすげえ運が良かったなっ

 このままだと僕たちはいずれ
 クラッシュマンにやられて死ぬんだよね

 ああ
 俺たちは二度死ぬんだな
 二度目は殺されるなんて残酷すぎるぜ

聞きたくない話を聞いてしまったし
その話し相手はすでに消えてしまった

そろそろ俺の順番も近そうだ
後世に残るような名作でも書けたなら
永遠を手に入れられたんだろう
俺のチンケな小説じゃもう時間の問題だ
もっとすげえ作品を書きたかったなあ
別にここで死ぬことが嫌とかじゃなくて
なんかやり切ってなかった悔いが
今ごろになりズブズブと胸を刺してくるぜ
もう一度だけ俺にキーボードを打たせてくれ
そしたら……

だけどしょうがねえよなっ
ずいぶんと怠けて生きてきたのだから


 おおっ
 あちゃ来たかクラッシュマンマン

 このクソ野郎が
 最後の最期ぐらいはカッコよく消えてやるぜ
 カモンっ
 待っていたぜクラッシュマン!


………んっ
………なぬっ
俺のブログにお祝いのコメントが入っているぞ
俺も飛んで戻ってきたか

なになに
俺の書いた小説が賞を取ったってか
そんなことありえねえよな
一度死んだ奴に賞って
マジかよ

まあ
また俺はここでしばらく彷徨えるんだな

でもなんかもういいかなって気持ちもするぜ
小説が書けないんじゃただの抜け殻だよ
……もっと真面目にやれば良かった
いやいや俺の性格じゃ
生まれ変わってもあんまりパッとしないかっ

話しがちょっと長くなったが
一度目の人生に怠けると
二度目の人生なんてないようなものだ

そこのあんたもダラダラと生きていると
俺みたいにイケてない人間になるぜ
まあ
大きなお世話だなこれりゃ

#詩

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上海の夜

thread
赤提灯のぶら下がる
路地を歩く
女たちが手を引き誘う
昨夜見た夢の続きか
書き始めた小説の続きか
揺られ渡った詩人の大陸幻想か

占い師が忠告していた
月に高笑いをする女の気配
私の罪悪感を利用し
強く首を絞め遊び出す
悪くはない
望んでいた夜だ
逃げ場所のないロマン
汚れた美しさ
終わらない夜は続く

騒がしい外へ
右でもなく左でもなく
夜の暴動を遠くから眺める

走って向かってくる女
石を掲げ笑ったまま振り落とす
頭を叩かれ
遠くのネオンがなお歪み
倒れ込む先で
水溜りに流れ出す血液

立ち上がれないのは無念なのか
死んだはずの魂が疼く
生きたい死にたい生きたい死にたい

ポケットから
水溜りへ落ちたビスケット
ボロを着た子どもらに
分け与える為の償いたちが
泣くように赤く染み込んでいく

街頭の下
占い師が忠告していた子どもらは
水溜りの赤いビスケットを拾い
何事もなかったように頬張り
倒れた私の身体を踏みつけ走り出す

覚めそうもない覚めたくもない
夜はまだ始まったばかりだ

#詩

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