今年の読書(42)『夏天の虹』<みをつくし料理帖>髙田郁(ハルキ文庫)
Mar
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前作では、秘かに心を寄せている御膳奉行<小松原(=小野寺数馬)>との縁談の手順がまとまりかけていたのですが、料理の世界を捨てきれない<澪>は、読者の予想通り(小野寺)との縁談を断ってしまいます。
毎年師走に発表される「料理番付」にも、<澪>の「つる家」は名前も載らず、想い人(小野寺)との破局も重なり心労からか、<澪>は味も匂いもわからなくなり、店主の<種市>は、「三方よしの日」に手伝いに来てくれている吉原の「翁屋」の料理人<又次>に2か月だけの手助けを求めます。
約束の2か月が過ぎ役目を終えた<又次>を、<種市>と<澪>は吉原まで見送りますと廓には火事が発生、<又次>は<澪>の幼馴染の<あさひ太夫>を救い出すべく火事場に飛び込み太夫を無事に救い出しますが、<又次>自身は帰らぬ人となってしまいます。
「つる家」に来て心も開き、明るい笑え声も出し始め、客からも慕われ始めた<又次>の死は、<澪>や「つる家」の奉公人達にとって耐えがたい悲しみを与えましたが、<澪>にとっては匂いや味がわかるきっかけにもなりました。