目新しい新聞広告の文庫本もなく、リハビりに出向いていますデイケアの 「ミニ図書館」 から見つけました<竹西寛子>(91)の『五十鈴川の鴨』(2011年8月幻戯書房刊のち岩波現代文庫)です。
『挨拶』や『松風』など全10篇が納められています短編集ですので、切りよく切り上げられるかなと手にしてみましたが、思わぬ収穫の一遍と出会いました。
収録された10篇は、日常での何気ない驚きと人の不思議な縁を実感させる短篇です。磨き抜かれた言葉が、人のあわいをしばしつなぎとめていく魅力を醸し出しています。
表題作の『五十鈴川の鴨』は、熟年の男性同士が織りなす長年に渡る交友関係とその行方を斬新な設定で描き、静謐な原爆文学とでも言わざるを得ない悲しみが心に残りました。登場人物の二人の職業が、私と同じ建築関係ということもありも、違う会社に勤務しながら、たまに出席するセミナーでの交遊を通しての男の付き合いかたの矜持ともいえる流れが丁寧に描かれ、最後に登場する彼を愛してきた女性から、知らされる彼の悲報と共に、登場する伊勢神宮での思い出の場面に五十鈴川の鴨の親子が象徴的に登場してきます。
直接表現してしまうと非常に重たい原爆の後遺症という問題を、文学的に見事に結実させた感動の一遍でした。
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Posted at 2020-10-15 05:28
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Posted at 2020-10-15 11:17
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