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- 今年の読書(93)『こちら横浜市港湾局みなと振興課です』真保裕一(文春文庫)
『ホワイトアウト』(1995年)や『ボーダーライン』(1999年)などのミステリーの名手<真保裕一>ということと、港町神戸と同じ横浜が舞台ということで手にした『こちら横浜市港湾局みなと振興課です』です。
本書は、5編からなる連作短編集です。主人公は横浜市の港湾局みなと振興課で働く「船津暁帆」です。ヨコハマ振興のため、舞い込んでくる大量の仕事に忙殺され、猫の手でも借りたい状況の中で、配属された新人「城戸坂泰成」は、国立大学出身のエリートで、英語もこなし様々な難題をパーフェクトにこなす有能な男でした。
第1章は、カンボジアからの研修生が突然失踪する事件や、第2章はフォトコンテストの応募写真を巡る謎、第3章は豪華客船「ダイヤモンド・テレジア号」体験ツアーでの幽霊騒ぎなど、数々のトラブルを、先輩「暁帆」と後輩「城戸坂」の名コンビが解決していきます。
単なる章ごとの読み切りだけかなと思わせながら、そこはミステリーの名手<真保裕一>です。
第1章から第3章の事件を背景に、二人は戦前の港湾における横浜の暗部を探り出してきます。「横浜港 大感謝祭」の開催が近づくなか、「暁帆」と「城戸坂」が辿りつく真実とは。
山下公園前に浮かぶ氷川丸や、象の鼻パーク、コスモワールドの観覧車、外国人居留地――ヨコハマの歴史的名所が登場、隠された歴史の謎を巡る事件と、東京都生まれの「城戸坂」が横浜市に就職した謎と共に、当選したばかりの神村「佐智子横浜市長」や「暁帆」の幼馴染の同期「麻衣子」などの脇役も面白く、港町ならではの船に関する物語が展開していきます。
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