第166回「芥川賞・直木賞」発表
Jan
19
直木賞は、<今村翔吾>さんの『塞王の楯』と、<米澤穂信>さんの『黒牢城』に決まっています。
<砂川文次>さんは、大阪府生まれの31歳。大学卒業後に自衛官になったあと小説を書き始め、2016年に『市街戦』で文芸誌の新人賞を受賞してデビューしました。現在は東京都内の区役所に勤めながら創作活動を続けて候補3回目での受賞です。作品は、コロナ禍に自転車便のメッセンジャーとして働く28歳男性の物語。将来への不安と鬱憤を抱えながら日々をやり過ごす主人公は、傷害事件を起こして刑務所に入ることで自分の内面と向き合っていきます。
<今村翔吾>さんは、京都府出身の37歳。ダンスのインストラクターや滋賀県守山市の埋蔵文化財センターの調査員などを経て、2017年に『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビューしました。直木賞は2018年に発表した『童の神』、おととしの『じんかん』に続いて、候補3回目で受賞。作品では、戦国時代に城の石垣を造った職人集団「穴太衆(あのうしゅう)」に焦点を当てています。幼い頃に落城で家族を失った石工の「匡介」は「絶対に破られない石垣」で人を守りたいと願います。職人の信念を懸けた戦いをダイナミックに描いています。
<米澤穂信>さんは、岐阜県の出身で43歳。大学生のころからウェブ上に自分の作品を発表し、2001年には「古典部」に入部した高校生が日常に秘められた謎に挑む『氷菓』が角川学園小説大賞の奨励賞を受賞して作家としてデビューしました。その後、2010年に発表した『折れた竜骨』で日本推理作家協会賞を、2014年に刊行された短編集の『満願』で山本周五郎賞を受賞して人気作家としての地位を確立しました。
直木賞については『満願』と、その翌年に刊行されました『真実の10メートル手前』で候補に選ばれましたが、同じく候補3回目で受賞しています。戦国時代の武将、<荒木村重>が<織田信長>を相手に繰り広げた有岡城籠城戦を題材にしたミステリーです。城内で相次ぐ怪事件に動揺する人心を落ち着けようと真実を探る「村重」に、土牢に幽閉中の織田方の軍師「黒田官兵衛」が示唆を与えます。