脳内シミュレーション小説
Jan
21
ある休日、高速道路のアスファルトが陽光に照らされる中、僕はAMG C63Sのステアリングを握っていた。
この日は300kmのロングドライブ。安全を最優先しつつも、ペースの速い走行が続く。
僕のC63Sは2019年式のステーションワゴン。実用的なボディラインは、スーパーカーのような華やかさには欠けるかもしれない。しかし、その心臓部には4リッターV8ツインターボ、いわゆるHOT-Vレイアウトが鎮座している。
僕はこのエンジンに手を加え、700馬力まで引き上げた。世間では「スーパーカーキラー」、昭和の広告ならば「羊の皮をかぶった狼」と呼ばれる存在だ。
前方に見慣れぬシルエットが現れる。深紅のボディが左右に車線変更を繰り返しながら進んでいく。
近づくと、それはポルシェ・タイカン。GTSグレードのようだ。
ポルシェの高性能EVスポーツカー『タイカンGTS』は、ローンチコントロール時に最大出力598PSを発生し、0-200km/h加速は約12.5秒を記録する。
仮にこれが最新の改良版だとすると。
ローンチコントロール使用時の最大出力は515kW(700hp)、0-200km/h加速も10.4秒!
いずれにしても強敵だ。
仮にこれが最新の改良版だとすると。
ローンチコントロール使用時の最大出力は515kW(700hp)、0-200km/h加速も10.4秒!
いずれにしても強敵だ。
僕が背後につくと、タイカンは一旦スピードを落とし、左車線に移る。恐らく、覆面パトカーの追尾を警戒してのことだろう。
追い越し車線から抜き去ると、タイカンは瞬時に僕の背後につけてきた。
「さあ、お楽しみの始まりだ。」
◆
一般車両が100km/hで追い越し車線をふさいでいるため、僕らは決してあおらず、車線が空くのをじっと待つ。
車線がクリアになった瞬間、僕は5速のまま全開加速を開始した。
タイカンGTSは、ぴたりと追従してくる。やはり、GTSグレードを侮るべきではなかった。
だが、僕のC63Sも負けてはいない。
わずかに空いた車間をさらに広げるべく、一般車両を慎重に抜きながら、次のクリア区間を待つ。
そして、その時が来た。
100km/hで巡航していたため3速も使えたが、僕は4速を選択。ターボがしっかりブーストをかけた状態からフルスロットルへ。
エンジンの咆哮とともに、身体がシートへと押し付けられる。
リアタイヤがしっかりとアスファルトを掴み、力強く加速。
バックミラーを見ると、タイカンが徐々に後方へと離れていく。5速にシフトアップすると、その差はさらに開いた。
EVの瞬発力に頼るだけでは、この領域では戦えない。
ついに、決着。
前方に車列が見えてきたところで、僕はアクセルを戻し、C63Sのエキゾーストが奏でるバブリング音とアフターファイアが響き渡る。
タイカンには決して真似できない演出だ。
◆
後日、僕はこの勝負をコンピュータシミュレーションで再現してみた。
結果は、ほぼ同じ。
しかし、もし相手がタイカン ターボSであったならば、僕は間違いなく敗北していた。
やはり、最新のEVテクノロジーは侮れない。
これはフィクションです。