下りたり上ったり、ナタを振りながら前進する。 すると、人工の石垣のような物があった。 昔、この島の島民が多かった頃、畑や田んぼがたくさんあった。 この上は、畑だったに違いない。 身体から上る水蒸気で、画像が白くなっている。
いよいよ道が途絶えた。 ナタを振るって進むしかない。 ジャングルの植物は、複雑に絡み合っている。 大量のツタも、足に絡みつきやっかいだ。 不用意にナタを振り下ろすと、樹液を飛ばすウルシのような木もある。 こいつの樹液を浴びたら痒くて大変だ。 湿度が高く、身体から出る湯気で、レンズが曇る。
じめじめした地面には、腹の赤いヤモリが群れをなしている場所があった。 大慌てで逃げるヤモリを撮影。 こいつは毒があるそうだ。 こういう、じめじめした場所には、ハブも住んでいるに違いない。 大きな石の下は、覗かないほうがいい。
道幅の関係から、ラングラーでは不利だ。 やはり、ジムニーがいちばん! フロントハブをロックして、4WDに切り替える。 装備は、水とカッパと長靴とナタだ。 登山靴の方が歩きやすいが、ハブに噛まれる事を想定すると、やはり長靴の方が良いだろう。 深いジャングルでは、ナタで植物を切り落とさなくては、前に進むこともできない。 また、向かってくるハブの首を切り落とす必要に迫られることもあるかもしれない。 ジムニーで行ける所まで進み、そこからはいよいよ徒歩での進攻だ。
1枚の切れ切れの写真。 今から40年以上も前に、撮影されたものだ。 ここは、浜比嘉島の中心部にある洞窟。 直径20〜30mの部分が、10m以上も陥没しているように見える。 中心部に大きな木が育っている。 陥没したのは、写真が撮られた時期から、少なくとも更に数十年前と言う事になる。 その奥に巣窟が繋がる。 少年時代にこの場所を訪れた外間さん。 その記憶を辿って、そのにあるはずの洞窟を探し始めた。 しかし、今となっては、ジャングルに飲み込まれてしまったその場所を見つけるのは、至難の業だ。 今日もジャングルに分け入り、その場所を探すことにした。
津堅島を出発してすぐのことだ。 カヤックの下を黒い物体が通過した。 何かの生き物か? すかさず、カヤックをターンさせる。 その物体は、確かに動いている。 ジョゴンか? カメラを水中に突っ込み、写真を撮る。 その物体は、あまり逃げようとはしない。 「噛み付かれたりはしないだろうか?」 カヤックを移動しながら、何枚も何枚も写真を撮った。