事件は意外なかたちで発覚した。
事件は意外なかたちで発覚した。
私はいつもの時間午後7時頃、いつものコースで散歩していた。
私は71歳の老人である。
毎日散歩している距離は4Km、その4Kmの中間地点に粋玉公園と言う大きな公園がある。時間は12月22日の午後6時頃、ゆっくりとした足取りで散歩をしている私の目に、ベンチに置かれてあるリュックが目にとまった。
そのリュックの色は黒であった。
私はそのリュックが置かれているほぼ10メートル手前で立ち止まった。
私は何故かしら本能的に周囲を見渡した。
しかし私は、そのリュックが置かれているベンチに視線を走らせながら約10メートルを通りすぎて振り返った。
まだその黒のリュックは、外灯の灯りにぼんやりと浮かんで見えた。
また私は何故か周囲を見渡した。
周囲に人影がないことを確認して、そのベンチに近寄り躊躇しながら黒のリュックを持ち上げた。
ずしりと重い手応えがした。
そのリュックを開けたて見たい誘惑に耐えながら、その公園より2Km先のある駅前交番に届けるため重い黒のリュックを背中に担いだ。
爆弾かもしれない?一万円の札束がぎっしり?それとも本?
開けて見たい誘惑心に打ち勝って交番へとたどり着いた。
交番には二人の警察官がいた。
「公園での拾いものです」
私はまだ中身を見ていないことを強調して重いリュックをデスクの上に置いた。
「ご苦労様です」と私にねぎらいの言葉をかけて
「中身を確認しますから立ち会ってください」
と言ってチャックを開き中身を取り出した。
その品は新聞紙に巻かれて、その上何重にもビニール袋に巻かれていた。
そのビニール袋を開き包装された新聞紙を開いた警察官は一瞬声にならない声を発した。
「うぅ−!」
それは、人の切断された首であった。
事件はこのように拾得物として持ち込まれたリュックの中から発覚した。
リュックを拾ったのは事実です。交番に届けたのも事実です。時も事実です。中身を開けて見たいと言う誘惑に駆られたのも事実です。交番に届けるまで中身を見なかったことも事実です。残念ながら中身は札束でないことも事実です。人の生首でないことも事実です。中身は書類と書籍でした。