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- 【Day319】命をかける野球拳 ~老いへの抵抗は野球拳に勝つことである~
「野球拳」と呼ばれる悪名高い遊びを知っているだろうか。
服を着たもの同士がジャンケンを行い、負けた方が1枚着ているものを脱いでいき、最後、着る物が無くなったら負けという、令和の時代なら一発退場になる大人の宴会芸のことである。
そもそも、なぜ「野球拳」と呼ぶのだろう。
私は、やったことがないから分からない。
いかにも野球拳経験者(野球経験者ではない)っぽい友人に聞いてみたところ、掛け声が「アウト、セーフ! ヨヨイのヨイ!」であるから、野球拳らしいのだ。
「ファール、ヘェアー、ヨヨイのヨイ!」なら、どうだったのか?
それも野球拳か(笑)。
この「ヨヨイのヨイ!」という掛け声が、時代を感じてしまうところだが、今、パソコンの前で「ヨヨイのヨイ!」と小声でつぶやいてみたところ、一瞬にして元気がみなぎってきた。能天気にさせてくれる、魔法のフレーズである。
この野球拳、一枚ずつ服を脱がされていく様子が、人生折り返し地点を過ぎた今の自分の人生と重なる気がしてならない。
なぜそう思うのか?
人は、最終的に裸になって死んでいくから。裸で生まれ、裸で死んでいく。
服を着て「オギャー!」と叫ぶ赤ちゃんはいない。
あれ? 死ぬときは「死装束」を着る場合もあるので、裸ではないのか。
しかし、天国には自分の服や財産を持っていくことはできないということで、ここでは裸ということにしておこう。
「早く負けを認めて、その服を脱いじゃいな!」
「もう今までよく頑張ったよ。もう、新しい服を買わなくてもいいよ」
そんな言葉を投げかけられている気がしてくるのだ。
さらに世間は、年齢による限界説を押し付けてくる。
・プログラマー35歳限界説
・キャリアチェンジ40歳限界説
・市民ランナー自己ベスト50歳限界説
年齢については諸説あるが、何歳だとしても、他人が決めた限界年齢だ。
いったい、誰が決めたというのだろうか?
イソップ寓話『北風と太陽』の北風さんが、私に強烈な風を吹きかけてくる。
北風「35歳を超えたお前は、もうプログラムは書けないぞー、早くそのプログラマーのシャツを脱ぎなさい! ピュー、ピュー!」
私「ちょっと待って、ちょっと待って北風さん。私はまだこのシャツ、お気に入り。脱ぐ時は自分で脱ぎますわ」
このような野球拳をやっている感覚を今まさに感じている。
歳だからできない。歳だから食べられない。歳だから走れない。
まだジャンケンに負けたわけでもないのに、自分から服を脱いでいくなんて、私にはできない。自分の限界を自分で勝手に決めたくないだけだ。
挑戦し続けている限り、アラフィフでも進歩している感覚はある。
新しい服を手にしようとしている感覚、あるいは今まで着ていた服が、何度も使ってビンテージ感が出て、いい味が出てきた感覚。
今の私は、文章力を磨きたいという欲求から、こうしてこの文章を書く機会をいただいている(ありがとう、天狼院書店さま!)。
何歳であっても人は成長できる。
成長をし続けることは、ジャンケンに負けないこと。
つまり、服を着続けて、かっこいい大人であり続けるということ。
実際の年齢なんて関係ない。私の周りにも、実際の年齢と10歳も20歳も若くみえる方はたくさんいる。そういう方は、いつまでも挑戦をしている人だ。心の底から、尊敬しているし、応援し続けたいと思う。
しかしいつの日か、周囲から「もうお引き取りください」と言われるときが来るだろう。そんな日が来ることはわかっている。
その日を「潮時」と呼ぶのだろう。
ここまで熱く語ってきたが、自分の実力と自己評価のギャップが大きくなればなるほど、それは老害となる。
時代の変化が急激に加速していっている今、即戦力の実力が求められる。
年齢というラベルが高ければ高いほど、周囲の求める期待値も高くなってくるし、成長を待ってくれることは皆無だろう。
いつの日か、私の野球拳の闘いが終わりを向かえる。
これまでの熱さと反対になるが、いつでも「スッポンポン」になる準備はできている。私なりの「メメント・モリ」である。
とはいえ、パンツ一丁のままの自分で、第二の人生を迎えるのも素晴らしいことのように思う。たとえ薄着の状態であっても、他者貢献はできるはず。
その最後に自分が履いているパンツはどんなパンツなのだろうか?
何色なのか? どんなビジュアルか? フィット感はどうか?
それはそれで、楽しみでもある。
老いへの抵抗は、野球拳に勝つことである。
アラフィフ戦士として、まだ闘いは終わってはいない。
まだまだ、新しい服を着てオシャレを楽しむ自分でありたい。
アウトだろうが、セーフだろうが、「ヨヨイのヨイ!」と言いながら、笑い飛ばせる余裕を持って、この人生の余興を楽しむしかないぜ!
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