『くまちゃん』角田光代(新潮文庫)
Nov
7
『くまちゃん』の登場するのは<古平苑子>23歳、大学時代のサークル「全国駅弁大会」にメンバーが集まる花見で、青いジャージにピンクの熊が描かれたトレーナーを着た<持田英之>と知り合い、その日のうちに同棲が始まりますが、煮え切らない総合アーティストを目指す<英之>をふってしまいます。
二作目から、ふられた<男・女>が次はふる役になるという連作短篇で、7話とも20代から30代にかけての失恋物語ですが、各短篇の登場人物たちは、相手が変わることにより別人のように様変わりする姿がコミカルに描かれています。
著者のたたみかけるような言葉が羅列する文章のリズム感が、失恋という重くなりがちなテーマを払拭する勢いを持ち、楽しく読み切れました。