『紅染の雨』藤原緋沙子(文春文庫)
Oct
14
勘定組頭<長谷半左衛門>の妾の子として産まれた<清七郎>は、本妻や義理の兄との折り合いが悪く、22歳のときに家を飛び出し武士の身分を捨て<清七>と名を改め、今では絵双紙本屋「紀の字屋」の店主として、絵師の<与一郎>や<小平次<達と、江戸の地図を絵図として制作に勤しんでいます。
本書には3篇が納められていますが、「紀の字屋」の当主<藤兵衛>の経歴と<おゆり>との関係が明らかになり、<清七>は改めて<おゆり>に思いを走らせます。
また、父である<半左衛門>が刺客に襲われたところに遭遇、事なきを得ましたが、何やらよからぬことが起こりそうな予感を残しています。
また<与一郎>の石和の名主である父親がご神体である「夔の神」を江戸にて出開帳に出向き、側室の<お美津>に見せる前に何者かに「夔の神」を盗まれてしまい、<清七>たちは、探す羽目に関わります。
<滝沢馬琴>が亡くなった翌年の江戸を舞台に、<清七>たちの人情あふれる物語が語られていますが、父<半左衛門>のその後と、<おゆり>との今後が気になるところです。