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- 『感染列島 パンデミックデイズ』吉村達也(小学館文庫)
北海道興部の豪雪の夜、一人の女性の黒焦げ死体が発見されるところから物語は始まります。
ミステリー作家の<神崎慧一>は、致命的な新形ウイルスを主題にした『モナリザの涙』を出版しましたが、評論家<生野幾太郎>の「ウイルスが無生物の絵画の中に潜んでいるとは無知な」と酷評され、落ち込んで筆を絶ってしまいます。
かたやH5N1型鳥インフルエンザらしき病人が沖縄で発生、札幌にある感染症の指定医療病院の院長である<内倉洋次郎>は、兄の厚生大臣<内倉創太郎>に記者会見の要領を教えますが、沖縄の感染も落ち着いたころ兄の隠し子である<神崎>が病院に現れ、その日のうちに亡くなってしまいます。
彼の治療に当たっていたのが、院長の<洋二郎>と医師<山口雄吾>、そして冒頭の女性の看護師でした。
<神崎>は国際的に動いている画商<榎本>に誘われ、ノルウェーの画家<ムンク>のオスローにあるかってのアトリエに出向き、その際トルコの贋作グループに接触、目の前で突然発病したトルコ人に驚き、香港経由で成田へと帰国、自分の体調がおかしいことに気づき、実父の立場を考えて急きょ伯父の病院のある札幌まで出向きました。
<山口>は<神崎>の死に間際の言葉とパスポートから彼の行動を推測、無生物の宿主ではウィルスの生存は無理ですが、ボール紙に繁殖する「ダニ」であれば、「ネズミ」との生態関連で新形ウィルスの変異が可能なことを突き止めていきます。
1918年の「スペイン風邪」をはじめ、1957年尾「アジア風邪」、1968年の「香港風邪」などの歴史を踏まえ、緻密に計算されたバイオミステリーが楽しめた一冊でした。
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