どこか郊外の町「月船町」の十字路の角にある、ちょっと風変わりな洋食店の暖簾には店名が無く、たまに十字路に起こるつむじ風に因んで「つむじ風食堂」と呼ばれています。
本書は8篇の短篇が連作でつながり、登場人物は、人工降雨を研究している「雨降り先生」こと<私>を中心として、「つむじ風食堂」の無口な店主とお手伝いの<サエコ>、店で飼われている体の左右が黒と白色の猫<オセロ>、そこに集まる帽子屋さんの<桜田>、30歳の売れない舞台女優<奈津子>、星を観にイルクーツクに行きたい果物屋の若者、<私>が「デ・ニーロの親方」と呼んでいる古本屋の店主などが登場、それぞれの人間関係がほのぼのと描かれていました。
なんとなく<宮沢賢治>を彷彿させる語り口に、読後は静かな余韻に浸れる一冊でした。
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