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- 『それからはスープのことばかり考えて暮らした』吉田篤弘(中公文庫)
失業中の身で、路面電車が二両で走る町に越してきた<青年>は、アパートの窓から教会の十字架が眺められる部屋に住み、大家さんは<大屋>で<青年>にとっては<マダム>です。
商店街の町はずれにあるサンドイッチ店「トロワ」に通ううちに、店主の<安藤>とその息子<リツ>と仲良くなり、<青年>はサンドイッチ店で働き始めます。
<青年>の唯一の楽しみは、定休日の水曜日に隣町「月船町」にある<月船シネマ>に、憧れの女優である<松原あゆみ>の古い映画を観ることでしたが、いつも映画館で出会う緑の帽子の年配の女性が気になり始めます。
著者の 『つむじ風食堂の夜』 の舞台である「月船町」絡みで、連作短篇として14編納められていますが、数少ない登場人物たちの過ぎし人生を行間に埋め込みながら、あたたかい心の交流が見事に描かれている一冊でした。
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