今年の読書(62)『八ヶ岳・やまびこ不動産へようこそ』長田一志(祥伝社文庫)
May
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日本では同じ住宅としても、建築家は「作品」と呼び、ハウスメーカーはいい「商品」と呼び、不動産業者はいい「物件」と呼び分ける慣習があり、おかしな表現だと思うのですが社会的に認知されているところに、日本の住空間の貧しさを感じてしまいます。
本書の主人公<真鍋智也>は36歳、東京出身ですが仕事を辞め、妻と娘には逃げられ、八ヶ岳が見える町を訪れるのですが、貧血で倒れたところを<やまびこ不動産>の社長の奥さんで専務の<望月真知子>に助けられ、そのまま就職してしまいます。
なぜか彼には、「死にたい」という相手の願望を感じ取る力があり、そのことがそれぞれの物件案内を通し、悲喜こもごもの家族や友人との心の絆のとして描かれ、心地よい人生の再生物語が味わえる一冊でした。