本書は『隠蔽捜査』シリーズとして、8作目になる『去就』(隠蔽捜査6)に続く9作目『棲月(せいげつ)』(隠蔽捜査7)になりますが、警察庁のキャリアでありながら息子<邦彦>の不祥事で降格、大森署の署長として左遷された主人公<竜崎信也>も、本作でいよいよ大森署を去ることになります。
大森署管内を通る私鉄のシステムと都市銀行のシステムが次々にダウン。社会インフラを揺るがす事態を不審に思った大森署署長<竜崎>は、いち早く原因を究明すべく署員を現場に向かわせますが、管轄外の行動で、すぐに中止するように警視庁の生安部長から横槍が入ります。
さらに、管内で非行少年「玉井」のリンチ殺人事件が発生。二件の大きな事件の指揮を執る中、同期の「伊丹」本部長から「異動の噂が出ている」と告げられた<竜崎>は、公務員として移動・転勤は当たり前という考えでしたが、これまでになく動揺する自分に戸惑っていました。
リンチ殺人事件の被害者「玉井」の捜査を進めていく中で、「玉井」の非行グループのメンバーが何かにおびえていることを不審に感じた「竜崎」たちは、以前に「玉井」たちににいじめられ引きこもりになっている高校1年生の「芦田雅人」に目を付けます。
コンピューターに頼り切っている現代社会を背景に復讐を果たす伝説のハッカー「芦田」と「竜崎」の駆け引きが圧巻だっただけに、今回で大森署の個性ある刑事「戸高」や「根岸」たちともお別れだということが薄れてしまいました。
次作から<竜崎信也>は栄転となり、神奈川県警刑事部長として登場するようですが、すでに第10作目として単行本『清明』(隠蔽捜査8)が2020年1月20日に刊行されていますが、文庫化されるのを我慢して楽しみに待ちたいと思います。
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