今年の読書(71)『この世の春(中)』宮部みゆき(新潮文庫)
Sep
13
奇異な精神状態で下野二万石の六代目藩主「北見重興」は、押込(強制隠居)させられ、別荘地である「五香苑」の座敷牢に蟄居させられ、藩医「白田登」や「各務多紀」たちの看病が始まります。
「重興」の病状が出出した16年前に心に何か大きな要因があるように見立てた「白田」は、「田島半十郎」に逃げ出した「伊藤成孝」の探索を兼ねて城下に向かわせますが、「半十郎」はその頃に4人の男の子が行方不明になっている事件が未解決のままであることを調べ出します。
そのころ、馬好きの「重興」の気分転換のために愛馬「飛足」が女馬喰の「しげ」と共に、「五香苑」に届けられ、久しぶりに「飛足」との乗馬の帰り道、「重興」に〈あの女〉があらわれ、池で発見された子どもの頭蓋骨のことを喋り、行方不明事件とのかかわりを読者に匂わせます。
また、「重興」は下男の「五郎助」が女中の「お鈴」を人質に座敷牢の「重興」の部屋に現れるのですが、「重興」の手により、殺害されます。刺客として「五香苑」に潜り込み「伊藤成孝」を殺害していた「五郎助」は北見藩内の陰廻か、飛び地明野藩の狭間なのか不明のまま、下巻へとつながります。