今年の読書(104)『本性』伊岡瞬(角川文庫)
Dec
20
高級住宅街の一軒家に生け花を教える母「品子」と一緒に住む40歳独身の「尚之」は、お見合いパーティで《サトウミサキ》と名乗る女と出会います。彼女の虜となり逢瀬を重ねる「尚之」ですが、結婚の話が進むにつれて《ミサキ》は「生け花」を習いに家に入り込む不審な行動を見せ始めます。
一方、若手刑事の「宮下真人」は、一匹狼のベテラン刑事「安井隆三」の相棒として、空き家で起こった火事場での焼死体「古橋亮二」の事件を追っていました。単純な火災事故のはずですが、なぜか「安井」だけは事件の裏側を確信している行動を取ります。その行動の裏側には彼の手元に2枚の15年前の名刺が送り付けられていました。
元教頭の青木家には、《ミサキ》と名乗る女がボランティアの形で入り込み、認知症の教頭の母親を介護していました。
全9章からの構成ですが、それぞれの登場人物たちの目線で《ミサキ》との関わりが語られてゆくなかで、河原におかれたコンテナから女性の腐乱死体が発見されたというニュースがたびたび登場してくるのが、読み手の推理をかく乱させます。
関わる者を必ず破滅させる女《ミサキ》とは?、その正体とは? 15年前の「いじめ事件」に全ての謎が繋がるとき、物語の壮大な構成に驚き、結末に驚愕します。
この事件を通して刑事として成長した「宮下」の活躍する物語の続編を、期待したくなるエンディングでした。