今年の読書(19)『インフルエンス』近藤史恵(文春文庫)
Feb
23
主たる登場人物は少ないのですが、何とも複雑な人間関係を主軸に扱い、最後に驚くべき結末が用意されていました。同年のファンの「戸塚友梨」から手紙をもらった作家の「私」が、送り主が語る物語を中心に進んでいきます。
大阪郊外の巨大団地で育った小学生の「戸塚友梨」。同じ団地に住む「日野里子」が、小さいころから祖父から性虐待を受けていたことを知り、衝撃を受けます。助けられなかったという自責の念を胸に抱えたまま中学生になった「友梨」は、都会的で美しい親友「真帆」を守ろうとして、脅すために男が持っていた包丁で痴漢の男を刺し殺してしまいます。ところが何故か、翌日警察に逮捕されたのは、「里子」でした。
殺人事件、スクールカースト、子育て、孤独と希望、繋がり。お互いの関係を必死に隠して幼馴染として中学生から高校生と過ごし大人になった3人の女たちが過ごした20年、その入り組んだ秘密の関係の果てに彼女たちの人生に待つものは何だったのか。大人になった三人の人生が交差した時、隠された衝撃の真実が浮かび上がってきます。
女たちが幼いころから直面する性的虐待、いじめ問題の罪、言葉で説明できないあやうい思春期の友人関係と深い信頼。ラストに用意された、作家と「友梨」との関係。 『サクリファイス』 (2008年)で第10回大藪春彦賞を受賞した<近藤史恵>が描く衝撃のミステリーでした。
Posted at 2021-02-23 05:07
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Posted at 2021-02-23 09:34
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