Blog Thread
- 今年の読書(28)『動乱の刑事』堂場瞬一(講談社文庫)
<堂場瞬一>の〈日本の警察〉大河シリーズとして三カ月連続刊行として、第1作目『焦土の刑事』に次ぐ第2作目が本書『動乱の刑事』で、2022年5月13日に文庫本が発売されています。
終戦間際の連続女性殺害事件を解決した捜査一課の高峰でしたが、戦後も7年が経った1952年、サンフランシスコ講和条約発効直前。東京都内の駐在所が爆破されます。死者は二名。ひとりは駐在巡査、もうひとりの身元は不明でしたが、近隣にある印刷工場の社員「牛島」と判明します。
35歳になった刑事の「高峰靖夫」は、共産党過激派の関与を疑いますが、秘密主義の公安から情報がえられず、捜査は難航します。「高峰」は、親友で戦中の特高から公安に所属している中学校の同級生「海老沢」に協力を仰ぎ、共同戦線を張って事件の真相と犯人逮捕に捜査を進めますが、あくまで個人への犯罪として捜査する「捜査一課」に対し、事件を利用し過激派の瓦解を目論む「公安一課」という相反する立場が、ふたりの関係に亀裂が入り始めます。
捜査の過程で、爆死した「牛島」は公安が共産党の分裂組織「革命軍」に潜入させた景観「安沢」だと判明しますが、公安は一切情報提供をしません。戦後の時代の乱れが、警察という「立て組織」と公安の隠ぺい体質の矛盾を生み出していく過程が、一つの爆破事件と会社の組合活動を背景に克明に描かれています。
戦後警察の光と闇を炙り出す一大叙事詩
- If you are a bloguru member, please login.
Login
- If you are not a bloguru member, you may request a free account here:
Request Account