今年の読書(50)『境界線』中山七里(宝島社文庫)
Sep
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主演<佐藤健>主演で映画化されました『護られなかった者たちへ』(監督:瀬々敬久)に続く、「宮城県警シリーズ」第2弾が本書『境界線』で、2020年12月に刊行され、2024年8月19日に文庫本が発売されています
2018年に刊行されました『護られなかった者たちへ』と同じく宮城県警捜査一課を舞台に、東日本大震災による行方不明者と個人情報ビジネスという復興の闇を暴き出していきます。震災によって引かれてしまった〈境界線〉に翻弄される人々の人生の行く末は、果たしてどのような結末を迎えるのでしょうか。
2018年5月某日、気仙沼市南町の海岸で、女性の変死体が発見されました。女性の遺留品の身分証から、遺体は宮城県警捜査一課警部「笘篠誠一郎」の妻「奈緒美」だったことがわかります。「笘篠」の妻は7年前の東日本大震災で津波によって流され、息子「健一」共々行方不明のままでした。
遺体の様子から、妻と思われる女性はその前夜まで生きており自殺でした。なぜ妻は自分のもとへ戻ってこなかったのかと「笘篠」はさまざまな疑問を胸に身元確認のため現場へ急行しますが、そこで目にしたのはまったくの別人の女性の遺体でした。
妻の身元が騙られ、戸籍が誰かの手によって流出していたのです。やり場のない怒りを抱えながら捜査を続ける「笘篠」でしたが、その女性の足取りをたどり続けるもなかなか進展がありません。そんな中、宮城県警に新たな男性の他殺体発見の一報が入ります。この男の身分も偽りでした、果たしてこのふたつの身分偽造事件の関連性はあるのかの「笘篠」の捜査は続きます。
東日本大震災を背景として、物語は進みますが、途中から核心となる登場人物の「五代」と「鵠沼」も高校時代の描写が始まるのには、違和感がありましたが、東日本大震災がそれぞれの人間に及ぼした人生の哀しみが良く伝わり、よくできた構成でした。