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地球上の植物、植物プランクトン、藻類は太陽の光エネルギーを用いて、水と空気中の二酸化炭素を原料として有機化合物を生成するとともに酸素を放出するが、これを光合成と呼ぶ。光合成により生成した酸素は大気中に蓄積され動物の呼吸や化石燃料の燃焼に、また有機化合物は動物の食料やエネルギー源として利用されている。
光合成は光エネルギーを化学エネルギーに変換する光化学反応(明反応)と、化学エネルギーにより水素と二酸化炭素から糖を合成する一連の反応であるカルビン回路(暗反応)からなる。明反応は太陽光を当てることにより水を分解して水素を分離する反応であり、植物などの細胞に含まれる葉緑体が触媒として機能する。葉緑体による水の分解メカニズムについては長年研究されてきたが、2011年に大阪市立大学の神谷信夫教授、岡山大学の沈健仁教授らにより葉緑体に含まれるたんぱく質複合体(光化学系II(PSII))の分子構造の解析が行われ、この複合体が4つのMn、1つのCa、5つのO、4つのH2Oからなることが明らかになった。大阪市立大学では2013年に人工光合成研究センターを設立し、人工光合成の実現に取組み始めた。
植物などの光合成とは異なる触媒による人工光合成の原点は、1972年に発表された東京大学の本多健一教授と藤嶋昭大学院生の実験にある。二人は二酸化チタンと白金電極を接続して水に挿入し紫外線を照射すると、両極間に電流が流れるとともに、二酸化チタン電極から酸素が、白金電極から水素が発生することを発見した。電気を消費して水を電気分解することは常識だが、この発見は、可視光線ではないが光のエネルギーが電気エネルギーに変換され、かつ水分解を行うことであり、光合成の明反応に相当する。この光触媒による水分解は本多・藤嶋効果と呼ばれる。
2010年のノーベル化学賞受賞者である根岸英一教授は日本政府に対し人口光合成の研究開発を強く提言し、その結果、先端的低炭素化技術開発(科学技術振興機構)、人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換(文部科学省・日本学術振興会)、人工光合成化学プロセス技術研究組合(経済産業省)などのプロジェクトが開始された。特に人工光合成化学プロセス技術研究組合プロジェクトでは、2012年より10年間に150億円を投じて水を分解する光触媒の開発(吸収波長の長波長化-可視光線で機能する触媒、量子効率の向上)、水素分離膜の開発(穴の直径が酸素分子と水素原子の大きさの間である3.0―3.4オングストロームの分子ふるいの開発、ゼオライトやシリカ膜の改良)、水素と炭酸ガスから有機物を合成する触媒の開発(炭素数が2-4のオレフィンの収率向上)などを行う予定である。
人工光合成の実現には広範囲な知識や技術が必要であり、実用化すれば波及効果が大きいため、海外でも研究開発が行われている。アメリカでは2011年に連邦政府がカリフォルニアに人工光合成ジョイントセンターを開設し 5年間で100億円以上を投資する予定であり、またEU、中国、韓国なども人工光合成の研究を推進している。
太陽光のエネルギー変換効率は植物によるが平均的に0.2%程度である。2006年から人工光合成の研究を行っているトヨタグループの豊田中央研究所は2011年、金属錯体と半導体を組合せた二酸化炭素還元光触媒により蟻酸の生成を実証したが、エネルギー変換効率は0.14% であった。同研究所では2016年までにメタノールなど付加価値の高い有機物をエネルギー変換効率1%で生成すべく研究を行っている。
パナソニックも太陽光を照射する光電極に同社のLED照明の技術を利用した窒化ガリウムなどの窒化物半導体を、また有機物を生成する電極に金属触媒を使用して2012年にエネルギー変換効率0.2%で蟻酸の生成に成功しているが、同社は2020年に年間10トンの二酸化炭素から6000リットルのエタノールを生産する計画を立てている。
東京大学の堂免一成教授は金属イオンを含む酸窒化物を光触媒として使用し、可視光による水分解で成果をあげているが、2050年には日照時間が7.6時間である5キロメートル四方の土地にエネルギー変換効率10%のソーラー水素プラントを建設することにより、1日当たり5100トンの水と二酸化炭素を使用して年間50万トンのメタノールを経済的に成り立つように生産する構想を発表している。現在のエネルギー変換効率は0.3%程度のため、約30倍の活性を持った光触媒を開発しなければならず、完成のためには多くの人材と資金を投入する必要がある。
人類はこれまで植物が長い年月をかけて生産し蓄積してきたエネルギー資源を燃焼し、二酸化炭素を発生させてきたが、人工光合成が実現すれば水と二酸化炭素と太陽光から有機物を合成することにより、このサイクルを逆転させることが出来る。経済的に成り立つエネルギー変換効率の高い光合成触媒の開発にはまだ大分時間がかかるが、21世紀後半のエネルギー源として人口光合成技術の実現が期待されている。
私たちが住んでいる地球の周りには空気があり、動物は空気中の酸素を呼吸して生命を保っている。また、空気中に酸素があるから燃料を燃やすことが出来、炊事したり、暖をとったり、更には電気、鉄道、自動車、通信など文明の利器を使うことが可能となる。
空気とは地球の表面近くにある大気のことであるが、一般的に大気とは惑星の重力によりその周りを取り巻いている気体をさす。太陽系では、水星には重力が弱いため自身で形成する大気はほとんどなく太陽風の成分である水素やヘリウムによるごく薄い大気層が、金星には二酸化炭素を主成分とし、わずかに窒素を含む濃厚な大気が、火星には二酸化炭素を主成分とし、わずかな窒素とアルゴン、それに微量の水蒸気や酸素を含むごく薄い大気層が、また木星と土星には原始太陽系星雲の理論的構成に近い比率の水素とヘリウムを主成分とする大気がある。
地球の地表から高度約500kmまでの大気のある空間を大気圏、大気圏の外側を宇宙空間と呼ぶ。地球大気は地表から80〜90kmまでは均一で窒素78%、酸素21%、アルゴン0.9%、二酸化炭素0.04%などにより構成されている。それより高度が増すにつれ分子量の多いものから減少し、170km以上では酸素が主成分となる。
高緯度地域では地表から高度約10km、赤道付近では高度約17kmまでの空間は対流圏と呼ばれ、大気が垂直方向、水平方向に活発に移動している。対流圏では高度が増すにつれ気圧が低下して空気が断熱膨張するため、100m上昇すると気温が平均0.65℃の割合で低下し、対流圏最高部(対流圏界面)では気温が-70℃位まで低下する。
太陽からの輻射熱により海や地球表面から水が蒸発するため、対流圏の大気には多量の水蒸気が含まれている。水蒸気は高高度で気温の低下により凝縮し、雲が出来る。水の蒸発、凝縮、雲の形成、降水を水循環と呼ぶが、気象現象のほとんどが対流圏における水循環によって生じている。雲は地球から水蒸気が宇宙空間に放散されることを防ぐとともに、地球の表面を覆って太陽光を吸収・反射し、地球をある程度冷却する役割をもっている。雲の中でも強い上昇気流によって生じる積乱雲はもっとも高い高度に達し、対流圏界面にまで達することも珍しくない。ジェット旅客機の巡航高度は約10,000mだが、積乱雲はたびたび航空機の障害物となる。
対流圏ではいくつかの大気循環が起こる。熱帯地域で太陽熱により温められた大気は上昇し、そのために赤道低圧帯が形成される。上昇した大気は対流圏で冷却され、北緯または南緯30度付近で下降流となって中緯度高圧帯を形成し、地表では赤道低圧帯に向かって流れる。これに地球の自転による慣性力が加わるため、地表では北半球では北東の風、南半球では南東の風となる。このような大気の循環をハドレー循環、それによって起こる地表付近の風を貿易風と呼ぶ。
また北極や南極では太陽高度が低く気温が低いため、大気は下降して地表に向かい極高圧帯を形成する。極の上空では相対的に気圧が下がるため緯度60度付近で上昇した大気が流れ込み、その結果大気が上昇した付近には高緯度低圧帯が発生し、地表付近では極高圧帯から高緯度低圧帯に向けて風が吹き、極循環と呼ばれる大気の循環を形成する。極循環の地表付近での風は貿易風と同様地球自転による慣性力が加わって北東(北半球)または南東(南半球)の風となり極東風と呼ばれる。
前述のハドレー循環により中緯度高圧帯の地表に達した大気の一部は高緯度低圧帯に向けても流れるが、この風は地球自転の影響により西風となり、偏西風と呼ばれる。偏西風は気圧配置や極の寒気により蛇行しつつ地球を一周する。また偏西風は緯度が20-60度における天候を左右する。偏西風上層にはジェット気流と呼ばれる風が吹いており、ジェット気流は冬季に強く最大風速が時速360kmに達する。現代のジェット旅客機は東に向う便ではジェット気流を利用することによりより早く飛行することが出来る。
対流圏の上にある11〜50kmの大気層は上へ行くほど気温が高くなり、この領域を成層圏と呼ぶ。対流圏の成層圏と接する部分である対流圏界面では気温が-70℃前後であるが、成層圏上部では-15℃から0℃程度である。成層圏で気温が上昇するのは、成層圏に形成されるオゾン層が太陽からの紫外線を吸収し加熱されるためである。ちなみに地球大気のオゾンはほとんどが成層圏に存在するが、オゾンは大気中の酸素分子が紫外線により解離して酸素原子となり、酸素分子と結合することにより生成する。このオゾン層により太陽から来る有害な紫外線の多くが吸収され、地上の生態系が保護されている。20世紀になってから冷凍用冷媒などに使用されるフロンガスや、化石燃料の燃焼に際し発生する窒素酸化物がオゾン層を破壊することが明らかとなり、その結果紫外線の地表への照射量が増大することを危惧してフロンや窒素酸化物の発生が国際的に規制されている。
成層圏ではその名称とは異なり、対流圏ほどではないが大気の流れがある。対流圏界面に隣接する成層圏下部では対流圏での気流の影響を受け同じような大気の流れがある。成層圏下部を除く領域では、白夜となる極付近では太陽による日照時間が長いためオゾン層によって暖められて高圧となり、極から離れた部分では相対的に低圧となる。この圧力差による気流に地球の自転による慣性力が作用して、夏を迎えている半球では東風が吹き、これは成層圏偏東風と呼ばれる。逆に冬は極付近には日照がほとんどないため低圧となり、低緯度から吹き込む気流により成層圏偏西風が生じる。
地球表面から50〜80kmの領域は中間圏と呼ばれ、この部分では高度とともに気温が減少する。成層圏にはオゾンが存在し太陽からの紫外線によって発熱するが、中間圏では高度とともにオゾンが減少するためである。中間圏最上部を中間圏界面と呼ぶが、平均気温は-90℃程度である。
中間圏の外側の高度80〜800kmの領域は熱圏と呼ばれ、高度とともに気温が上昇する。この領域における大気の成分である窒素や酸素が太陽からの電磁波や電子のエネルギーを吸収してイオンと電子に電離するためである。熱圏では気温が2,000℃程度まで上昇するが、分子の密度が極めて低いため、大気から受ける熱量は小さく熱さは感じられない。ちなみに国際宇宙ステーションは高度約400kmを飛行しており、これは熱圏の領域となるが、高熱による問題は発生しない。熱圏で電離したイオンや電子は電離層を形成し、地表からの電波を反射する性質を持つため、この電離層を利用して電波による遠距離通信が可能となる。電波は波長が長いほど電離層で反射されやすく、ごく波長の短い電波は電離層を通過するので、人工衛星や宇宙との通信に利用することが出来る。
地球大気の領域ではないが、熱圏のはるか外側には磁気圏と呼ばれる領域がある。太陽は高温の電離した水素やヘリウムによるプラズマである太陽風を放出しているが、太陽風が直接地球に到達すると生態系に甚大な被害を及ぼす。幸いにも地球には地磁気があり、これが磁場を形成して太陽風が地球に降り注ぐことを防いでいる。太陽風と地磁気がバランスすることによって形成される空間が磁気圏で、太陽に面した側すなわち昼の部分では高度約60,000km、夜の側は磁気圏尾部と呼ばれ高度100万km以上にも引き伸ばされている。極地で見られるオーロラは磁気圏尾部に侵入した太陽風が磁力線に沿って加速され、極地の大気と衝突することによって引き起こされる。
太陽の構造(太陽系図鑑より借用)
太陽については2012年5月21日の金環日食の時に主に太陽活動について書いたが、もう少し太陽について解説したい。一部は重複するが許してほしい。
太陽は地球のような岩石からなる星ではなく、水素やヘリウムなどの原子核と電子などによるガス体で構成されており、太陽の輪郭となる光球の半径は約70万キロメートルで、これは地球の約109倍であり、また太陽の質量は地球の33万倍もある。太陽の表面にあたる光球の温度は約6,000℃で、太陽からの可視光線はほとんどが光球から放出されている。
太陽は中心部の中心核(半径約15万キロメートル)、その周辺部の放射層(同50万キロメートル)、更にその外側の対流層(同70万キロメートル)、対流層の表面部である光球、光球を包む彩層、更にその外側にあるコロナなどにより構成されている。
太陽核は2,300億気圧ときわめて高圧であり温度も1,600万℃と超高温なため、水素原子核が核融合してヘリウム原子核を生成し、その際に膨大なエネルギーと光を放出して、これが太陽のエネルギーの源になっている。このエネルギーと光は、水素やヘリウムが高温のために原子核と電子に分離したガス状態であるプラズマによって形成される放射層を外側に向けてゆっくりと移動し対流層に達する。対流層は内部の熱せられたプラズマが光球では冷やされるために対流している領域で、光球まで移動したエネルギーや光は宇宙空間に放出される。
このようにして太陽から放出された光のうち、地球に到達するのはわずか22億分の1である。なぜそれほど少ない光だけが地球に届くかというと、それは地球が太陽から遠く離れている上、とても小さいからだ。太陽から地球までの距離は1億5千万キロメートルあり、太陽を直径10センチのボールに例えると、地球は10.7メートル先にある直径0.9ミリの小さな球に相当する。
光球の外側には地球の大気に相当する彩層があるが、これは厚みが2,000キロメートルを超える約10,000℃のプラズマの層で、この部分から紫外線やX線が宇宙に放出されている。彩層の外側には約200万℃という高温の薄いプラズマによるコロナがあり、皆既日食の際にその美しい姿を観察することが出来る。彩層ではフレアと呼ばれる巨大な爆発現象が発生するが、これは太陽内部から磁力線によって運ばれてきた磁気エネルギーが彩層で一瞬にして熱や光に変換される現象で、フレアの温度は1,000万度を越し、強い紫外線やX線が放出される。フレアがおこると太陽からのプラズマの流れである太陽風が強くなり、地球では磁気嵐がおこって無線通信障害が発生したりオーロラが出現しやすくなる。
太陽表面を観測すると黒い点を散らしたように見える部分があるが、これは黒点と呼ばれる。黒点では温度が光球よりも低い4,000~5,000℃のため黒く見えるが、その存在は古代ギリシャや古代中国でも知られていた。ガリレオは望遠鏡を発明した17世紀初めから黒点の観測を始め、以後現代にいたるまで黒点観測が継続されている。黒点では磁力線が太陽の内部から出てきて光球の外側の大気に向って伸びて行き、Uターンした後別の黒点を通って再び太陽内部に戻る。そのため黒点は2つがひとつのペアになっていると考えられている。この磁力線にそって低温になったプラズマがコロナの中に描いたループをプロミネンス(紅炎)と呼ぶ。黒点における温度が周辺よりも低いのは、黒点の下部では強い磁力によりプラズマの対流が起こりにくく、そのために太陽内部からの熱が運ばれにくいためだ、と言われている。
黒点観測によれば、光球での黒点の数は約11年の周期で変化し、黒点が少ない時期を黒点極小期、黒点が多い時期を黒点極大期と呼ぶ。また黒点の数が変化する周期を太陽周期と呼ぶ。黒点の数は太陽自身の活動と密接な関係があり、黒点極大期には太陽が最も活発に活動している。最近では2008年が黒点極小期、2013年が黒点極大期と考えられているが、今年の黒点数は極大期ではない2011年を下回り、約100年来の少なさとなっている。
1645年から1715年の間、黒点がほとんど見られない状態が続いたが、この期間はマウンダー極小期と呼ばれ、色々な調査の結果、この期間が地球の寒冷期であったことが知られている。また1790年から1820年も黒点が少ない状態が続き、ダルトン極小期と呼ばれているが、この期間も地球の平均気温が低かったことが明らかになっている。これらの歴史的な事実から、現在の黒点の少なさは地球寒冷化の兆しではないか、と言われている。
2006年に打上げられた日本の太陽観測衛星『ひので』、およびNASAのSDO (Solar Dynamics Observatory)によって収集されたデータに基づく最近の日米欧の共同発表によれば、太陽の北極では磁場がS極からN極に反転しているのに対し、南極ではN極からS極への反転が見られず、南北の両極がN極となり、南北の低緯度付近にS極を持つ四極構造になると予想されている。このような4極構造は太陽観測では初めてのことである。ちなみに太陽の両極での磁場が逆転するのは以前から観測されており、その周期は太陽周期である11年であることが知られている。すなわち太陽周期とは北極がプラスからマイナスあるいはその逆に反転する期間と言える。
太陽では今、黒点活動の少なさや4極構造など、これまで蓄積されたデータでは解析しきれない現象が観測されている。太陽の静穏化により地球が寒冷化すれば、寒冷期の歴史が示すように農作物の収穫は減少し疫病が流行する恐れがある。地球温暖化は声高に騒がれているが、寒冷化についてももう少し心配する必要がある。
地球に向う小惑星(Shutterstockより)
昨日ロシアに隕石が落下して多数の負傷者が出た。人が負傷したのは、秒速 10kmを超える高速で落下する隕石により発生する衝撃波がガラスや建物を破壊したためであり、隕石に直撃された人はいない。隕石は宇宙にある小惑星が地球の重力に引き寄せられて落ちてくるが、直径10m以下の小惑星は大気圏で燃え尽きるため、隕石とはならない。直径10cm程度の隕石は3,4日に1回、1m程度の隕石は1年に1回程度、地球に落下する。
今からおよそ6、550万年前に直径約10kmの小惑星が中央アメリカに衝突し、それが原因でそれまで繁栄していた恐竜が絶滅したと言われている。この小惑星は水深の浅い海に衝突し、その衝撃で海水は吹き飛び、海底に直径180km、深さ30kmのクレーターが作られ、超巨大地震が発生し、周辺の陸地では大火災が発生したと考えられている。成層圏にまで舞い上がった土砂などのちりが太陽からのエネルギーをさえぎり、数年にわたって地球が寒冷化したため、植物の生育が衰え、その結果食物連鎖が異常をきたしたために多くの生物種が絶滅した。
アメリカのアリゾナ州にある直径約1.2km、深さ約170メートルのバリンジャー・クレーターは約5万年前に起きた小惑星の衝突跡であるが、この隕石の大きさは直径約30mだったと推定されている。この衝突で半径3-4km以内の生物は一瞬にして消滅し、衝突によって発生した巨大な火の玉により半径10km以内のあらゆる物質を燃焼し、また衝撃波により半径22kmまでは何もない荒野となった。しかしこの隕石は気候変動をもたらすには至らなかった。
2008年10月、スーダンで空中爆発した小惑星2008 TC3は史上初の地球と衝突する前に予知された小惑星となった。前日にアリゾナの天文台で発見されたこの小惑星はアメリカにある小惑星センターおよびNASAが大気圏に突入する場所と時刻を予測したが、予測どおり秒速12.4kmで大気圏に突入し、スーダン上空で砕け散った。その後の現地調査で280個、約4kgの破片が回収されている。しかしこの小惑星は大気圏突入前に予知されたとは言え、発見されたのは大気圏突入のわずか20時間前だった。
地球の近くを公転する小惑星は地球近傍天体と呼ばれ、これまでに9,000個以上発見されているが、地球の公転軌道と離れていれば衝突の恐れはない。これらの中で地球の750万キロメートル以内に接近する恐れのある直径150m以上の小惑星をPHA (Potentailly Hazardous Asteroid)と呼ぶが、これまで1,300個あまりが発見されている。これらの中でもっとも危険と思われているのが1950 DAと呼ばれる直径1.1kmの小惑星だ。NASAによれば、これまでの観測により2880年3月16日に最大0.33%の確率で地球と衝突の恐れがあるとのことだ。もしも衝突が起これば、大気圏での爆発や分裂にもよるが、恐竜絶滅の時ほどではないにしても、バリンジャー・クレーターを起こした衝突よりはるかに大きな災害となる恐れがある。2013年1月号の科学雑誌ニュートンによれば、もしも直径1kmの小惑星が東京市ヶ谷付近に衝突すると、直径10km、深さ約2kmのクレーターがつくられて、山手線の内側が消滅すると予測している。その際衝突による閃光と衝撃波は半径20kmに達し、甚大な被害は東京全域はもちろん、周辺の横浜、川崎、柏、さいたま、所沢などにも及ぶ。
現在の科学技術では小惑星の衝突はほとんど避けることが出来ないのが実情である。
はやぶさから見た地球(JAXAアーカイブより借用)
われわれの住む地球は宇宙の中で特異な天体である。惑星に生命が存在するためには液体の水が表面に存在することが必要だが、そのためには惑星の中心にある熱源である恒星から適度に離れていなければならない。太陽系では水星や金星は太陽に近すぎて水が蒸発し、火星より外にある惑星では太陽から遠すぎて水が凍ってしまう。太陽系では地球と火星だけがこの領域に存在している。現在、NASAの無人探査機キュリオシティが火星の調査を行っているが、その目的のひとつはこれまでに液体の水や生命が存在したかを確認することである。またケプラー天体観測衛星が地球と同じような環境にある太陽系以外の惑星の探査を行っているが、得られたデータによれば、地球から600光年離れたケプラー22bが水の存在しうる唯一の惑星である。
地球は約46億年前に誕生したと考えられているが、その成因はまだ良くわかっていない。太陽の誕生後、ガスや宇宙塵が太陽の周囲の軌道を回り始め、それらが衝突して小惑星より小さい微惑星を形成し、それらが更に衝突を繰り返して惑星を形成したという説が有力である。太陽に近い軌道の水星、金星、地球、火星では水やメタンなどの揮発性物質には温度が高すぎるため凝縮せず金属や珪酸塩などを中心とした岩石型惑星となり、太陽から離れているために温度の低い木星以遠の惑星ではこれらのガスが凝縮した巨大ガス惑星となった。
地球の直径は約12,800kmであり、その表面は地殻と呼ばれる珪酸塩鉱物で覆われている。地殻の厚さは場所により異なるが海洋性地殻では5-10km、大陸性地殻では30-50kmである。地殻の内側には岩石質の粘弾性体であるマントルがあり、その厚さは地表から約2,900kmまで達する。地殻と上部マントルが厚さ100kmほどの10数枚のプレートを形成して地球表面を覆っており、このプレートはその下のマントルの対流によりゆっくりと動く。マントルの内側には主に鉄とニッケルで構成されている核がある。地球中心部は5,000-8,000℃、約400万気圧の高温高圧で、そのため地球中心から約1,220kmの内核は固相、その外側の外核は圧力の減少により液相となっている。。金属の液相である外核が対流や地球の自転によって流動することにより電流が生じ、これが地球磁場の一因となる。
地球は太陽のまわりを円に近い楕円軌道で公転しているが、太陽に最も近い近日点における太陽までの距離は14,700万km、最も遠い遠日点における距離は15,200万kmである。興味深いことに近日点は冬至の約2週間後であり、遠日点も夏至の約2週間後である。すなわち北半球の真夏には地球は太陽から最も遠い位置にある。それでも夏が暑いのは、太陽からの距離の問題ではなく、地球の自転軸が約23度傾いており、そのため北半球では夏季により多くの太陽からの輻射熱を受けるためである。地球は太陽のまわりを約1年かけて公転しているが、その速度は一定ではない。近日点付近では早く、遠日点付近では遅くなるが、平均秒速30kmという超高速で動いている。
地球に生命が存在するためには水があることだけでは十分でない。地球を包む大気圏が重要な役割を担っている。大気は主に窒素78%、酸素21%で構成されているが、酸素があるから動物は生きることが出来る。赤道付近では地表から高度約17km、極付近では約9kmまでの大気層は対流圏と呼ばれ、高度と共に気温が低下して地表から最も遠い所では-60℃に達する。対流圏では地殻に貯留している水が蒸発して移動することにより色々な気象現象を起こすが、対流圏外側では気温が低いため水蒸気が凝縮し、対流圏の外側にある成層圏(高度約50kmまで)には水蒸気が拡散しない。この現象により水は地球から失われないのだ。成層圏では高度と共に気温が上昇し、また水蒸気がない環境のもと、太陽からの紫外線により酸素からオゾンが作られるが、このオゾン層が有害な太陽紫外線から地球を守ってくれる。また太陽からは磁気が発生しているが、その磁気が宇宙のどこでも飛交っている銀河系宇宙線(陽子や電子など)が地球に降り注ぐのを防いでいる。これらの条件がひとつでも欠けると、地球上で生命を維持することは出来なくなる。宇宙規模で見ると、この世に人類が存在していることはほとんど奇跡に近いと思える。
アメリカでは物の長さや距離を測るのに今でもインチやフィートなどの単位を使うが、もともと1インチは成人男性の親指の幅(爪の付け根付近)、1フィートは親指からかかとまでの足の長さに由来している。古代中国でも親指の幅を基準に1寸、手を広げた時の親指から中指までの距離を1尺と定義しており、古代ではこのような人間の体を基準とした長さである身体尺が使われていた。しかし身体尺では個人差があり色々と不便を生じるため、文明の発達に伴い国ごとに長さを測る基準が制定された。
大航海時代を経た1790年代、長さの単位を国際的に統一しようということになり、フランスを中心とした当時のヨーロッパ諸国がメートルという単位を採用した。この単位は地球の北極から赤道を直交する南極までの線、すなわち子午線の長さの20,000,000分の1を1メートルと定義している。逆に言うと北極から赤道までの長さは10,000キロメートルとなる。そして白金とイリジウムの合金でメートル原器と呼ばれる基準となる器具を作り、メートル原器に刻まれた二つの目盛り線の間の距離が1メートルになった。くまごろうが小学生の頃に教わった1メートルはこれである。しかしその後の厳密な測定によりメートル原器は熱により伸縮し、また合金の腐食によっても長さが変動することがわかってきた。
そのため19世紀後半から主張されていた光の特定波長をメートルの基準とすべきだ、という議論が主流となり、1960年に開催された国際会議ではクリプトン-86が真空中で発する電磁スペクトルの波長をメートルの基準とするように改められた。しかしこの方法でもばらつきがでてしまうことが明らかになり、1983年の国際度量衡総会において光の速度を基準とすることになった。すなわち1メートルとは光が真空中を299,792,458分の1秒に進む距離、ということに定義された。
この新基準が採用されるためには正確な時間の測定が重要だが、昔は地球の自転を1日とし、その24分の1を1時間、更にその60分の1を1分、更にその60分の1を1秒と定義したが、地球の自転は一定ではないことがわかり、より正確な時間の定義が必要になった。その後の科学の進歩により、1967年以後はセシウム原子の放射する電磁波の周波数に基づく1億年に1秒の誤差という高精度のセシウム原子時計による1秒の定義が採用されている。
1メートルの長さは子供の背丈くらい、また3階建てのビルの高さは約10メートル、今話題の東京スカイツリーの高さは634メートル、富士山の高さは3,776メートル、地球の半径は6,378キロメートルである。宇宙規模で見ると、地球から最も近い天体である月の半径は1,737キロメートル、月までの距離は平均384,400キロメートル、太陽までの距離はおよそ1億5,000万キロメートルある。宇宙の他の天体までの距離をメートル単位とすると数字が大きくなりすぎるので、光が1秒間に進む距離を1光秒、1分間に進む距離を1光分、1年間に進む距離を1光年と呼ぶ。これによれば地球から月までの距離は1.28光秒、太陽までの距離は8.34光分となる。更に太陽から地球までの距離を1天文単位(AU)とも呼び、太陽から地球のすぐ外側を回る火星までの距離は1.52AU(12.68光分)、木星までの距離は5.20AU、更にその外側を回る土星までの距離は9.54AUとなる。すなわち太陽から土星までの距離は14億3,000万キロメートルになる。
宇宙飛行士が長期間滞在している国際宇宙ステーションは上空約400キロメートルのところを飛行しているが、太陽からは地球の表面を動き回っているように見えていることだろう。
7月4日、欧州合同原子核研究機関CERNは『われわれはヒッグス粒子と思われる新たな粒子を観測した。』と発表した。この新たな粒子が1964年に予言されたヒッグス粒子であることを確認するには更なる検証が必要だが、これまでに得られたデータではヒッグス粒子である確かさが5シグマ(統計的な偶然の確率が100万分の1以下)ということで、おそらくCERNはヒッグス粒子を観測したに違いない。
20世紀以降の物理学は物質を構成する原子が原子核である陽子と中性子、それに電子からなっており、陽子や中性子が3つのクオークからなっていること、更に宇宙にはアップ、ダウン、チャーム、ストレンジ、トップ、ボトムの6種類のクオークと、電子、ミューオン、タウオン、およびこれらに対応するニュートリノによる6種類の電子の仲間(レプトン)があることを明らかにしてきた。またこれら12種類のクオークとレプトンに対し力を伝達する素粒子としてのフォトン(電磁気力)、グルーオン(原子核を結びつける力)、ウィークボゾン(ベータ崩壊を引き起こす力)を発見し、まだ発見されていないグラビトン(重力)の存在を予測している。これに素粒子に質量を与えるヒッグス粒子を加えた17の素粒子が現代物理学の標準モデルを構成しており、ヒッグス粒子の発見は標準モデルを証明する偉大な成果である。
宇宙物理学では137億年前に宇宙が誕生した直後ビッグバンが起こって宇宙が急膨張し、ヒッグス粒子を除く16の素粒子やそれらの反粒子は空間を光速で飛びかっていたと考えている。そこにヒッグス粒子が発生し、フォトン以外の素粒子は光速で移動出来なくなって質量が生じ、その結果素粒子同士が結びついて陽子や中性子が生まれた。それゆえ、ヒッグス粒子が存在しなければ原子や星や地球、更には生物が生まれることはなかったのだ。また素粒子と反粒子は衝突すると光と熱を発生して消滅(対消滅)するが、まだ明らかにされていない何らかの理由で反粒子が10億個につき1個の割合で素粒子に変換し、素粒子10億個につき2個の素粒子が消滅せずに生き延びて物質である原子や星が生まれたとしている。
われわれが観察している137億光年にまで広がる銀河団も天の川銀河も、その中にある太陽系も地球もすべて対消滅をまぬがれた素粒子と、今回発見されたヒッグス粒子のおかげで存在することが可能になっているのだ。その意味でヒッグス粒子の発見は今世紀最大のニュースのひとつである。
写真はCERNのホームページから借用。
5月21日の朝、日本では太平洋側の広い範囲で金環日食が観測されるとのことだ。多くの人がこの天体ショウを観察することだろう。この機会に太陽について考えるのも悪くない。
約400年前にガリレオが望遠鏡を使って科学的に黒点観測して以来、太陽の黒点が11年周期で増減を繰り返すことが明らかになっているが、1996年に始まった直近の第23期では2006年の太陽活動極小期からなかなか黒点数が増加せず、周期が12年7ヶ月に及んだ。第24期に入った現在、黒点は徐々に増えつつあり太陽は活発さを取り戻しているようだが、この周期も長引く恐れがあるという専門家もいる。そうなると地球は18世紀末から19世紀初めに起こった異常寒波に再び襲われるかもしれない。
黒点とは太陽表面に見られる暗い斑点のことだが、これは周辺よりも温度が低いために暗く見える。温度が低いといってもそれ以外の光球と呼ばれる太陽表面の6,000℃より低いだけで、約4,000℃であることがわかっている。黒点の温度が低くなるのは、太陽の内部より強力な磁力線が黒点から突き出しており、そのためにこの部分では太陽内部で発生した核融合反応による熱を対流により輸送することが阻害されるためである。黒点が発生するとその強力な磁気のエネルギーにより太陽表面ではフレアと呼ばれるプラズマ(水素原子核と電子の混ったガス)の巨大な爆発が起こり、大量の紫外線やX線を宇宙に放出する。すなわち黒点が増えれば太陽表面の活動は活発になっている。
2006年に打上げられたJAXAの太陽観測衛星『ひので』は可視光、紫外線、X線を観測する装置を搭載し、NASAのSDO (Solar Dynamics Observatory)とともにこれまで人類が得られなかったデータを蓄積しているが、これらデータに基づく4月19日に示された日米欧の共同発表によれば、太陽の北極では磁場がほぼゼロの状態に近づく一方、低緯度では逆極性に斑点が現れ、北極の磁場がまもなくマイナスからプラスに転じると予想されているのに対し、南極では極性反転の兆しが見られない、とのことである。このような現象から南北の両極がプラス極となる四重極構造になると想定され、このような変動は現代的な太陽観測では初めてのことであり、地球が寒冷であった17世紀のマウンダー極小期や18世紀末のダルトン極小期に類似していると推定されるそうだ。
ちなみに太陽の両極での磁場が逆転するのは以前から観測されており、その周期は太陽周期である11年であることは知られている。すなわち太陽周期とは北極がプラスからマイナスあるいはその逆に反転する期間と言える。極性の反転は地球でも起こっているが、最初の逆転期は約500万年前から約400万年前、2回目の逆転期は258万年前から78万年前であり、太陽とは異なりきわめてゆっくりとしたペースである。
添付の写真はJAXAのホームページより借用。
科学の世界ではベテルギウスの超新星爆発の話題で盛り上がっている。
ベテルギウスは冬の星座であるオリオン座のオリオンの右肩にある一等星で、今頃は晴れた夜なら三ツ星のやや左上にあるから簡単に見つけることが出来る。ベテルギウスは恒星としては地球に非常に近く640光年の距離にある。
ベテルギウスは太陽の約20倍の質量を持ち、大きさは半径が太陽の1000倍もあるが、誕生してから既に1000万年水素の核融合を繰り返しており、現在は膨張して表面温度が下がり赤くなる赤色巨星の状態になっている。そのため今後100万年以内に超新星爆発を起こし、ブラックホールとなるか、中性子星になるという。
天の川銀河内での超新星爆発は平安時代の1054年と徳川家康が江戸幕府を開府した翌年の1604年にもあったが、前者は地球から7200光年、後者は13000光年の距離にあり、ベテルギウスはこれらに較べはるかに近い。1604年のケプラーの星の超新星爆発でも木星位の輝きが約1年続いたという記録があるが、ベテルギウスの超新星爆発が起これば昼間でも輝いて見えるそうだ。
超新星爆発の直前に赤色巨星は大量のニュートリノを放出するため、地球上でニュートリノの観測をすれば超新星爆発を予知出来る。そこで活躍するのが1987年に大マゼラン雲で起きた超新星爆発によるニュートリノを検出したことにより小柴博士がノーベル賞を受賞したカミオカンデの後継のスーパーカミオカンデだ。1987年の超新星爆発では超新星が16万光年も離れていたため11個のニュートリノしか検出出来なかったが、ベテルギウスの場合にははるかに多量のニュートリノが観測されるはずだ。超新星爆発によるニュートリノが検出されたら直ちに世界中の天文観測施設に通報され、ベテルギウスを詳細に観測する態勢が既に出来ている。
近頃の宇宙物理学の世界は急速に進歩しており、最新の研究によればニュートリノが観測されて1.5日後にベテルギウスの表面温度が急上昇し、色が赤色から青色に変化する。そして星が急速に輝き出し、3時間後には半月と同等の明るさとなるが、見える星の面積が小さいのでぎらぎらと輝き日中でも眩しく見える。輝きは7日後がピークでその後膨張による温度低下のために色が変化し輝きが減少してゆく。400日もすると昼間には見えなくなり、4年後には夜でも見えなくなる。
もしもベテルギウスが超新星爆発の後にブラックホールになると、ガンマ線バーストを起こし大量のガンマ線が放出される恐れがある。もしも大量のガンマ線が地球に向うと、地球を守っているオゾン層を破壊し太陽の紫外線が地球に降り注ぐため多大な影響があり、かつての超新星爆発ではそのために種の絶滅も起こったが、最近の研究によればベテルギウスのブラックホールから放射されるガンマ線の方向は地球への方向に対し20度ずれているので問題とはならないだろうと予測している。
それにしても宇宙物理学者は気が長い。ベテルギウスの超新星爆発は100万年の間に起こるという。光が届くのに640年もかかるので、もしかしたら既に超新星爆発しているかもしれないし、今から1000年後にもまだ爆発していないかもしれない。
雑誌ニュートンの10月号をようやく手に入れた。本来なら10月初めにはシアトルの紀伊国屋で入手出来るのだが少し出遅れたために購入出来ず、10月号を日本から取り寄せてもらうはめとなった。紀伊国屋の話では毎月3冊しか入荷していないとのこと、これから確実に入手するために1年間の定期購読を申し込んだ。それにしてもニュートンのような科学雑誌が当地では3冊しか読まれていないとは、日本の科学離れが叫ばれてから久しいが、元科学少年のくまごろうにとっては寂しい限りである。
ニュートン10月号を是非読みたいと思ったのは、特集が『太陽・地球コネクション、温暖化?それとも寒冷化?』で、この科学雑誌は地球温暖化の問題をどのように取扱うのかに関心があったからである。
この特集では2004年より2010年の間で太陽に黒点のなかった日が836日におよび太陽の活動が弱まっていることから説き起こし、黒点が強力な磁石であること、太陽からは可視光線以外にも紫外線やX線などの電磁波が放射されており、それらの強さが黒点の活動と深く関わっていること、黒点活動が低下した1645年から1715年のマウンダー極小期には地球に冷害が襲ったこと、黒点がほとんどない時期である極小期から次の極小期までの太陽活動の周期が約11年であること、1755年から始まる第1周期から数えて第23周期に当る1996年からの周期は13年と異常に長かったことなどを多くのデータに基づいて解説している。マウンダー極小期の直前には2周期に渡りこの周期が13年だったこととあわせて考えるとやや不吉である。
太陽活動の変動による可視光線の変化は約0.1%であり、地球表面温度への影響は0.1℃程度でほとんど影響はないが、近紫外線は1-10%変化し、地球表面から50kmの高空の気温が1-2℃変動することがわかっている。しかしこの変動が地表に及ぼす影響は詳しくはわかっていない。
太陽活動が活発な時は太陽の強力な磁力が超新星爆発によって生じた陽子や電子などの粒子である銀河宇宙線の太陽系への侵入を防いでいるが、太陽活動極小期には太陽の発する磁力が弱くなり、地球に銀河宇宙線が侵入しやすくなるという。銀河宇宙線が多いと大気中の分子や原子をイオン化し、それらが水蒸気を集めて雲が発生しやすくなる、という説がある。この説によれば宇宙線が多いと雲の量が増えて太陽光がさえぎられ、地表温度が低下することになる。
2011年7月6日付くまごろうのひとりごとでは世の中が地球温暖化で騒いでいる一方、科学者による太陽活動の研究結果として地球寒冷化の可能性を述べたが、ニュートンではNASAや日本の太陽観測衛星による太陽の異変観測の重要性を説き、温暖化するのかあるいは寒冷化するのか結論付けてはいない。
20世紀に入ってからの人類による爆発的な化石燃料の使用は大量の二酸化炭素を発生させ、それが地球環境に悪影響を与えているかもしれない、という思いは大切であり、将来の化石燃料の消費を削減すべきだという考え方は正しいだろう。しかし現在の地球温暖化議論については、大気中の温暖化ガスとして水蒸気がその97%を占めているのであり、大気中に400ppmしか存在しない二酸化炭素の影響がどの程度であるか科学的にはまだはっきりしていない上、太陽活動や近赤外線による高空の温度変化の地表への影響や銀河宇宙線の影響など科学的データに基づく検討がまだまだ必要である。
科学的な知見に基づかない政治的なかけひきで地球温暖化を議論し、日本は2020年までに1990年比で二酸化炭素を25%削減する、と鳩山前総理が国連で宣言したのはあまりにも非科学的だと思う。
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