どうしてもわからない ある詩人が詩を インターネット上で公開すると 絶賛される 好みの違いだろうか わたしには良さがわからない しかし そこには多くのひとの心を揺さぶる 何かがある 確実に そこがわからない 何度も読んでみる 作品への感想も読んでみる やはりわからない なぜわたしの詩に 孤独が絡みはじめてしまうのか どうしてもわからない それでもわたしは 縁を歩きながら詩を書く その真意が全くわからない
月から滴り落ちる悲しみ 遠い過去に貼られた 臆病の言葉を剥がせない夜風 解っているのさ 時空に張り巡らせたトラップが 自分の虚言によるものだと 吐いて踊る明日の音楽隊 響き割れる髑髏の行進 タッタラッタ タッタラッタ 沈んでゆく歓喜の叫び 干からびた指先 後退に消滅してゆく者達の儀式 発射される護衛の幻に 跨がる屍の思想は笑う口笛 解っているのさ 時空に張り巡らせたトラップが 自分の虚言によるものだと タッタラッタ タッタラッタ 服従する魂の憩いに 傍観しながら溺れてゆく快感 タッタラッタ タッタラッタ 臆病に重なり合う鉛の塊 沈みながら惻隠の微笑が抜け出す
死ぬまで毎日 詩は書いているのだろう そう思っていた そのこだわりは つまらなく感じたのである 今日は 一作も詩を書かなかった 途切れた時 何かが起きるんだ そう思っていた ごはんを一日食べなかった それぐらいのことだった たいしたことはない 一日 詩を書かなくても 私という作品は 途切れることなく毎日 磨けばそれでいい
遺書は手書きだろうか ワープロ打ちか 布団の中で悩んでいる やはり最期の証となる 重要なものになるだろう それを下手な手書きでは あっちから笑い声が聞こえそうだ ワープロ? ん〜 素っ気ない 誰でも同じような字になり しかも文書力がないから あっちから笑い声が聞こえそうだ ああ 俺はどうして笑われたくないのだろう そんなに自分が大事なのだろうか やはり自分は自分ということか それが生きていると嫌になるんだ 詰まる自分が自分に さあ 手書きにしろワープロにしろ 文章にしなくては…… 遺書 俺は遺書を手書きにするか ワープロにするか悩んでいる これ以上この状態が続くことに 耐えられない だから俺は死ぬのが面倒になった なので今晩はこれでもう寝よう おやすみ
動く景色 俺は止まっている まだ何処へも向かっていない 何処で降りる? いつでも進める足がある怠惰 俺に足があるとは言えない 動かずに生きている死んでいるようなモノ どうしたら一歩が踏み込める どうしたら生きていると言える 俺の何を打破すれば 動く根拠が芽を出すのだろう
みんなカタチも大きさも それに厚みもそれぞれちょっと違う 社会というナカミを入れられ 生きて行くわけだが それはたいへんなことなのだ 僕らは丈夫でなければならない でもすぐに壊れてしまうのだ ダンボールの素材では濡れたり 押されてしまえば 精神のように弱かったりする ナカミを漏らしたら 使いモノにならないヤツだといわれ ロボットたちに捨てられてしまう でも搬送の途中で壊われなければ たいてい回収されて またダンボール箱に再生するんだ 前とはカタチが変わってしまうけど 今朝はトラックに揺られ ギシギシと押されながら運ばれている でもみんなの大きさが違うから 隙間が少しできて息苦しくはない そんなちょっとしたことで 救われたりもするんだ 僕たち昔は人間のカラダだったらしいよ 手があって足があって 胴体があって頭があって 生身のカラダを持ちどこにでも行け 夢を描くこともできたらしいよ でも神様はそれを許さなかった どんどん自分を満たそうと 憎み合って争いが始まったから 人間のカラダをダンボール箱にしたんだ 配送センターに『愚かな人間』という銅像もあるし 人間って悪魔にでもなりたかったのかな 僕たちは何回も再生され 大事にしなくてはいけないモノが 少しづつわかってきたんだ 最近はダンボール箱も イケているなんて思っているのさ 「神様 僕たちのカラダがダンボール箱でも 器などもうどうでもよいのです ダンボール箱を全うすれば それでよいと思っています」 さてさて 今日はどこへ行くのだろう ずいぶんと揺れているから田舎の方なのかな……
詩は文学であろうか 詩は学問であろうか 詩は芸術であろうか 詩を書く者は誰であろうか 個人に帰する道徳のフィールドから 共有可能な最小の心象を表現 人間として バランスを得るための 対人との折り合い 自身の折り合い 如何なるものなるか 如何に洞察するか 心中模索から 捻出された労りを結晶させ それらで奉仕する者 更に 詩人とはユーモアセンスの持ち主 未来を描く個人の生き方の納得により構築 消えない魂の匂いを醸し出す作業に没頭する 誰もが持てる天才力を有する者である