止まった時間
Jul
10
ひとの時間が止まっていた
海が目の先にある
骨組みを残した鉄骨アパートだろうか
草むらの中で風が抜けている
不思議と流されなかった下駄箱
住民の靴が整えられたまま入っている
壁も屋根も流されてしまっているのに靴はそこにあり
その情景は私に何を伝えようとしているのだろう
震災八年目の夏
防潮堤は新しく高くきれいな曲線を描く
防潮林は膝の上あたりまで伸びて
その奥に廃墟はあるが誰を守るというのだろう
まだ住める土地にはなっていない
哀しみがあったろうに
それを語る住民も暮らす環境もない
なのに下駄箱には靴が並べられている
時間はまだ止まっている