著者の作品は、「旗師」として骨董業界で頑張る <宇佐美陶子> シリーズや、民俗学の教授として各地にまつわる事件を解明していく <蓮丈那智> シリーズが好きですが、本書はそれらの路線とは全く異質な内容で、表題作を含むドタバタ喜劇的な短篇6篇が、連作でまとめられています。
主人公は<有馬次郎>ですが、もと広域窃盗犯としての裏稼業に携わっていました。今は「大悲閣千光寺」の寺男として真面目に働いていますが、身の回りに次々と起こる事件に関わり、謎を解いていきます。
もう一人の寺男として、ミステリー作家を目指す(ムンちゃん)こと<水野猛>がおり、また「みやこ新聞」文化部の女性記者<折原けい>、京都府警の<碇屋>警部、そして庵主の脇役たちとの関西弁の会話が楽しめます。
京都に深く根付く文化や風習をアイロニカルに描きながら、ウイットに富んだ物語が並び、古都を舞台とした謎解きの妙味が味わえる一冊でした。
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