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- 今年の読書(9)『横道世之介』吉田修一(文春文庫)
著者の作品としては、『ランドマーク』(2008年1月)・ 『あの空の下で』(2011年5月)以来、ひさしぶりに手にしました。
大学進学するために上京した主人公・横道世之介は長崎県の港町出身の18歳。性格は、どこか図々しくも人の頼みを断れないお人好し。
<世之介>の名は、<伊原西鶴>の『好色一代男』の主人公の名で、父が「理想の生き方を求めた男」に由来して名付けられています。
本書は、大学背になった<世之介>の様々な出会いやまわりの人間関係を描いている
青春小説です。
入学式で出会った<倉持一平>や<阿久津唯>同棲・妊娠・出産で、大学を辞めたその後や、自動車教習所で知り合った<加藤睦美>やお嬢様の<与謝野祥子>との交際など青春時代を細やかにに描いていきますが、物語の途中で、読者は<世之介>が、線路に落ちた女性を助けようとして亡くなったのをカメラマンの肩書で知ることになります。
後半にかけて、経済学部の<世之介>が、なぜカメラマンになったのかの経緯がわかり、<祥子>に残された「写真」の意味が、深く心に残る作品でした。
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