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- 今年の読書(13)『物語の終わり』湊かなえ(朝日新聞出版)
山間の盆地にある小さな町のパン屋に生まれた<絵美>という文学好きの少女が、はじめの物語の主人公。年上の<ハム>さんという少年にプロポーズされる。彼は、北海道大学に進学し遠距離恋愛が始まる。やがて<ハム>さんは町に戻り、高校教師となり、正式に結婚を申し込む。しかし、作家になりたいという夢をもつ<絵美>は東京に行こうと駅に行く。すると、そこには<ハム>さんがいた。ここで物語は終わります。
そこからは別の章となり、それぞれ別の主人公が登場する。妊娠三カ月でがんが発覚し、子どもをあきらめて手術をするかどうか悩む<智子>。実家の工場を継ぐことを迫られ、プロのカメラマンになる夢をあきらめようとする<拓真>。志望した会社に内定が決まったが、才能に自信が持てずにいる<綾子>。夢に向かってアメリカ行きを切望する娘に反対する<大水>。夢を追う人と別れ、仕事一筋に證券会社で働いてきた<あかね>。迷いを抱えた人々が向かった先は北海道だった。彼らは「空の彼方」と題した小説のコピーをそれぞれ手渡され、読んで、その後の生き方の参考にする。「空の彼方」は、<絵美>と<ハム>さんの物語でした。
そういう構成の作品だから、予想通り、最後の章は冒頭の章の続きでした。あらすじを明かすわけにはいきませんが、結びに出てくる「北国の夏の夕方の空」のようなさわやかなラストでした。
文学好きの絵美の造形には、広島の因島で育ち、空想好きで推理小説を読みふけったという著者の少女時代が反映されている。<湊かなえ>さんの「自伝」的要素がにじんだ作品でした。
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