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- 今年の読書(26)『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹(創元推理文庫)
単行本刊行は、本書『赤朽葉家の伝説』のスピンオフ篇として 『製鉄天使』 が刊行されていますが、文庫本としては『製鉄天使』(2009年10月29日)が先で本書は(2010年9月18日)の刊行と逆になっていますが、本書を読みながら、「なるほど!」と遅まきながら、女子暴走族の主人公<赤緑豆小豆>の背景が一段と理解できました。
本書は、島根県紅緑村を舞台とし、赤朽葉家の女三代に渡る壮大な物語です。島根県の山奥で国家のしがらみなく暮らす「辺境の人」の子供<万葉>は、村に置いてきぼりにされ、村の若夫婦に引き取られますが、製鉄業で財を成した赤朽葉家の女主人<タツ>に見初められ、長男<曜司>に輿入れします。<万葉>は、未来視ができ「千里眼」と呼ばれ、自分の子供や夫の死を予め見通していました。<万葉>は本書で語り部として登場する<瞳子>の祖母になります。その娘<毛毬>が母であり、『製鉄天使』での主人公で暴走族の頭となり、引退後は漫画家として大成功をおさめます。
一地方の家族の物語ではありますが、なんともファンタジックな内容でありながら、現実感をもって読者の心に響く内容で、最後まで一気に読ませる構成に驚きを隠せません。
壮大なスケールが楽しめた背景として、戦後から高度成長期を経ての社会状況が近代史の歴史として記述されている構成だと改めて気づかされます。
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