今年の読書(31)『紫匂う』葉室麟(講談社文庫)
Apr
17
失意のまま<澪>は、藩の郡方<萩蔵太>のもとに嫁ぎ12年、夫は極心流の津かいてながら物静かで穏やかな性格、長女<由喜>、長男<小一郎>に恵まれた生活を送っていました。
そんなある日<澪>は、<笙平>が江戸にて不祥事を起こし藩に護送中に逃亡したとの知らせを聞き激しく動揺、疑いは濡れ衣だという<笙平>を、自分がまかされている<芳光院>の茶室に匿ってしまいます。
その後追ってから逃れるべく温泉宿に逃げるのですが、異変を察知した<蔵太>は、藩の実力者である<芳光院>の査定を期待して<笙平>と<澪>を手助けして、追っ手をかわし<芳光院>のところまで<笙平>を送り届けます。
読者は、妻<澪>が結婚前に関係を持った相手が<笙平>と知りながら手助けしてゆく<蔵太>の姿に、男として、武士としての格の違いを感じるとともに<澪>の行動にハラハラさせられます。
<澪>の妻としての心の揺れ、追っ手との駆け引き、緩急の効いた展開に最後まで目が離せませんでした。「人として本当に大切なことは何か」という箇所が随所にちりばめられた一冊でした。