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- 今年の読書(67)『海よりも深く』矢口敦子(集英社文庫)
これまでに様々な夫婦の、親子の、家族の愛を問い続けてきている<矢口敦子>の、文庫描き下ろしが、本書『海よりも深く』(2019年1月25日)です。
大学4年生の「佐藤真志歩」は、母親との関係をこじらせて、卒論で忙しいと言い訳をして冬休みに実家のある函館に帰省しませんでした。元日からカレー屋のアルバイトに出向き、店の前で迷子の少年「明」を見つけます。耳が聞こえないらしい少年が心配で、カレー屋の店長「柚木美咲」とかなり年上のボーイフレンド「尾崎宗二郎」たちと保護者探しに乗り出します。
身体に虐待を疑う痕跡を持つ少年を巡る事件が、「真志歩」が函館から東京の大学へと上京した背景、親に虐待された「明」や「宗二郎」の家庭環境やカレー店「華麗屋」を営む「柚木姉妹」たちの水害で行方不明の父親との関係などが明らかにされながら、それぞれの家族の深い闇を抉り出して描かれていきます。
最後は「宗二郎」と「明」の叔母「五味惠璃子」との現実的でない結末で終わりましたが、 家族のあり方と命の希望を描く心温まるミステリーでした。
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