今年の読書(31)『謎掛鬼』沢村鐵(双葉文庫)
Jun
7
著者<沢村鐵>は、「警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結」シリーズとしての〈『フェイスレス』・『スカイハイ』・『ネメシス』・『シュラ』〉や「警視庁捜査一課・晴山旭」を主人公とした『クランⅠ』・『クランⅡ』など、ハードアクションの骨太の警察小説の印象が強く、本書のような予想外のファンタジ―的な書き出しに少し戸惑いました。
主人公は副題通りの新米刑事「小野瀬遥」25歳は、黄昏の光に満ちた町に迷いこんでしまいます。
そこには、警視庁管轄には存在するはずのない派出所があり、若き巡査が、「遥」に謎めいた言葉で捜査の指針を与えてくれます。
捜査一課に配属として最初の事件は、小学生の女の子の誘拐事件でしたが、若き巡査の言葉で無事に解決します。
元アイドルが鑑定を行ういんちき占い師のお告げを信じた事件が連続しておこり、「遥」はおとり捜査として占い師と対峙しますが、正体がばれてしまい、そこで怪しげなふたつの「眼」を見てしまいますが、最後の事件へとつながるなぞとして引き継がれていきます。
やがて「遥」が、上司の「晴山旭」と共に捜査に当たるのは、警視庁を揺るがすSNS犯罪「#謎解きジャスティス」でした。それは被害者が謎掛け形式で名指しされる、悪夢のような連続殺人事件ですでに3人が殺されていました。
「遙」の上司は前出の「警視庁捜査一課・晴山旭」であり、若き巡査「足ヶ瀬直助」は、『クラン』で共に馴染みの登場人物として、物語にうまく組み込まれており、異界とのファンタジーな物語でしたが、面白く読み終え、シリーズになりそうなタイトルだけに、「小野瀬遥」の刑事として今後の成長も楽しみです。