今年の読書(6)『白い闇の獣』伊岡瞬(文春文庫)
Jan
31
2022年4月1日より改正少年法が施行されていますが、その問題点を考える上で、かなり参考になりそうな内容で、見事な伏線と全体の構成力に読み終えて改めて<伊岡瞬>の力量に感心しました。
2000年の東京・立川市郊外の団地で、小学校を卒業したばかりの少女「滝沢朋美」が誘拐され、暴行されたあと殺されてしまいます。犯人として捕まったのは少年3人。しかし彼らは少年法に守られ、わずかな期間の少年院入院や保護観察処分を経て、再び社会に戻り、また犯罪に手を染めて暮らしていました。
4年後の2004年、犯人の1人「小杉川祐一」がマンションから転落死します。続けて仲間の「柴村悟」が仕事現場の屋上から転落死で亡くなります。朋美事件後に妻「由紀子」と離婚して失踪した朋美の父「俊彦」が復讐しているのか。
朋美の元小学校の担任教師「北原香織」はある秘密を胸に「小杉川祐一」の転落現場に向かい、そこで少年事件を追い求めているフリーライター「秋山満」と出会い、二人して事件の関係者に当たりながら行方不明の「俊彦」の所在を追い求めますが、警察と同様に分かりません。
少年法に守られ、反省もない殺人者たちへの関心が、なぜ教師を辞めた「北原香織」を強く引き付けるのか、フリーライター「秋山満」はなぜ必要に「俊彦」を探し出そうとするのか、見事な伏線を文書中に散りばめ、最後は少し心穏やかになる着地点で締めくくられている、おすすめの一冊です。