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- 今年の読書(26)『さまよえる古道具屋の物語』柴田よしき(文春文庫)
「アンティーク」としての本当の意味での「古物」に関しての内容を求めていますと期待外れになると思いますが、<柴田よしき>ファンならば、著者お得意のSFとミステリがミックスされた作品として、楽しめる内容だと思います。
2016年12月に単行本が刊行され、2023年3月10日に文庫本(1122円)として発売され、6章からなる短編集ですが、最後のプロローグで6章の短編が全てつながる構成になっています。
ある日突然気が付かないうちにその古道具店は、人生の岐路に立った時に町に現れます。各章に登場する登場人物たちは、男か女かさえわからない〈忍者ハットリくん〉に似た顔の古道具屋の店主から、文字と絵がさかさまの絵本、穴のない金色の豚の貯金箱、底のないポケットがついたエプロン、取ってのない持てないバケツなど、役に立たない物ばかりを、時間も空間も超えて言い値で売りつけられます。
各登場人物たちは、売りつけられた役に立たないものによってそれぞれの人生をほんろうさせられていきます。不可思議な店主の望みとは何なのか。登場人物たちの未来はどうなるのか、読み手は手探りの状態で、読み進むことにないます。
最後には、登場人物たちが一堂に古道具店で顔合わせとなり、それぞれ売りつけられたものの意味を知り、バブル前夜から二度の大震災まで、激しく移り変わる世相を背景に、モノと心の間で翻弄されながらも懸命に生きる人々たちの、「ある」固い絆の約束にたどり着きます。
特に第2章では、阪神・淡路大震災を中心に話が進み、ファンタジーな物語でしたが、神戸っ子としては興味が尽きませんでした。
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