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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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潜在力

thread
俺たちは眩しさを知っている
そりゃ他人ごとじゃないぜ
持っているんだよ
ここに

転けたっていいじゃないか
笑われてムカつくなんてクダラネエ
さっさと立ち上がって探しに行かないと
自分に逃げられてしまうぜ

昨日じゃないんだよ
明日じゃないんだよ
今なんだよ

彼奴じゃないんだよ
此奴じゃないんだよ
俺なんだよ

チャンスなんて待っていたらダメさ
ガンガンに夢へ走って行くだけさ
あの手この手で
「そんなのありかよっ!」
潜在力はギラギラしているぜ

感違いな勢いでだって
ホンモノになることぐらい
俺たちは知っているんだよ

輝けない奴なんていやしない
塞ぎ込んだ自分なんてクソクラエ
誰が何を言おうが俺は俺なんだからさ

昨日じゃないんだよ
明日じゃないんだよ
今なんだよ

彼奴じゃないんだよ
此奴じゃないんだよ
俺なんだよ

捨てるなよ
絶対に捨てるなよ
俺は走ることしか頭にないぜ
だからお前もそうだろう
潜在力を持ってんだからさ

捨てるなよ
絶対に捨てるなよ

#詩

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不色心(こころいろあらず)

thread
猫や犬は僕らよりカラフルだけど
種なんか知ったことではない
開放された平和は美しい
色にポリシーなんて
要らないんだ

#詩

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咲かずにいられない

thread
学生時代に目標に向かい
悔しい気持ちや嬉しい気持ちになり
何か成し遂げたことはあっただろうか
文化祭で弾き語りをしたぐらいで
嫌なことに向うことはなるべく避け
受験も面倒で通信の大学で
最低限度の勉強をして卒業した
学業からはいつも逃げて

とくに大きな志もなく
働きながら歌を作ったり
詩を日記のように書いていれば
それで良かった

時間は五十歳を目の前に
空っぽの青春が悲しく泣き出した


お前は何かを死ぬ気で
成し遂げたことはあるのか
消極的な平和主義は最悪だぜ
暗澹者の生きる意味は
くだらねえの一言で収まっちまう

彼の世千日この世一日

ほらほらウズウズしているんだろう
お前は満たされて無いんだよ

ハチキレチマエヨ
コソコソとコノヨはクダラネエとかイッテル
ソンナジンセイはオマエラシクナイ


何だろう枯れて死にたいこの思いは
根底に眠っていた俺の種が
やっと咲き始めようとしている

見てみたい景色ができた
老いたことなどわからない程に
全身を広げ咲いている自分

まずは勉強だ
詩を読み辞書に赤線を引いて
狂ったように噛みついて行こう

#詩

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車内の音

thread
起動して加速
ドアが閉まる
風を切る
吊り棚に荷物
レールの継ぎ目
空調から流れる空気
漏れる音楽
会話
咳払い
すれ違う電車
録音されたアナンス
新聞を折りたたむ
ブレーキで減速
ドアが開く
すみません降ります
さっさと出ろよ

#詩

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無乃是詩

thread
どれ程の詩を書いたのなら
私は詩になるのだろう
吐き出す言葉
詩作の毎日
無我夢中
幸福
尽きる日
言葉を枯らした魂
私は詩になるのだろう
身体に感謝しながら書き終えて

#詩

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月の君と僕

thread
君は僕の月でした。

けして太陽のようにキラキラした存在ではなく、薄暗い魅力を持っていた。過去は語らず、微笑みを忘れたかのように振る舞う女の子。僕が積極的に関わろうとしなければ、いつでもゼロの関係になってしまう。だから話し掛けていなければ君の気持ちは、何処かへ舞ってしまう気がしていた。野良猫のようにすぐに消えてしまい、僕は憧れを探すように街をふらつきながら恋しく思う。間違いなく君が好きであった。

「そう」

あの声は今でも僕の耳にこびり付いて離れやしない。必ず話し掛ければ、反応はしてくれる。それが嬉しくて。一度だけ彼女が微笑んだこともあった。僕が一匹の蟻を踏んで潰してしまった時に、「ゴメンよ」と言った時の情けない顔を見てのことだった。その時は、蟻を殺してしまったことではなく、おどおどしている僕のことが可笑しかったのだろうと思っていた。そして、その微笑みは世界がひっくり返るくらいの驚きがあり、微かに君と繋がった糸を感じていた。

変な自信があった。君を幸せにできるのは僕だけだと。そこには安らかな自分がいて、苦にならない必死さがあって、僕が僕らしくいれる何かが君にはあったのかもしれない。

しかし、僕は絶望を知った。

君はある日、突然、僕なんて存在していなかったように自ら命を絶った。それからというもの君が僕の中で強く生き続けた。僕は微笑みを忘れていった。君は知っていたんだ、この世の哀しさと不憫さを。

あの微笑みは無垢な僕への優しさだったんだ。

君がいなくなると僕は暗闇を背負いだした。ひとの話を「そう」と頷く僕の声は、月の君のように冷たい刹那へ響いていた。

#詩

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thread
公園
図書館
駅前のロータリー

そびえ立つ集合住宅
斜光により切られた生活
コンビニストアの百円コーヒー
餌を求めるハト
冷たいベンチ

関わりを遠ざけた時間
自分の存在を分解

堕落に水平のカッター
薄められた空に月と星

冷えた紙コップ
冷えたカラダ
冷めてゆく黄昏

終演
残像は暗闇
振り出しの帰宅

#詩

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駅前のコスモスが揺れ

thread
駅前のコスモスが揺れ

そよそよと吹く風に揺られて
コスモスは仲よく学芸会
僕らの組織とは違う
ぎすぎすした縛りはないようだ

どちらかというと
僕らは風に吹かれると
ガムシャラになって進み
身を粉にして頑張るのだが
コスモスは自然の力を受けながらも
しなやかに柔軟で強かったりする

同じ地球に生きているのに
違う世界で生きているようだ

僕らの進もうとする力は
なかなか複雑な思考への好奇心を持ち
進化という変化に哲学が支えられているようだ

もしこの地球上に僕らがいなくなり
猿やカラスがこの先にもっと知恵をつけ
武器を使い争うようになり
後に核ミサイルを製造したりするかもしれない
この無意味な欲は風に逆らおうと芽生える

僕らはいつから風を受け入れなくなったのだろう
不快でなかった思いが不快になり
服を着て家を建て温度を調整して
自然を受け入れなくなった
欲による進化はいったいどこへ
向かおうとしているのだろうか

風を避け生きているが
死という風に折れる日が来るのを知っている

やはり僕らはどう生きるかを問い続ける
生き物でなければならないのか

#詩

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理想の公園

thread
場所は自宅の近く
とくに大きくなくてもよい

どちらかというと
殺風景ぐらいのほうが落ち着く

だけど、たくさんの木が茂っていて
風が心地よく吹き
日差しが葉の隙間から零れて

子どもはそこそこ賑やかでも大丈夫
どちらかというと話し掛ける
ひとがいないほうがよい
アイパッドに詩を集中して書くから
でも、画面に葉っぱが落ちたりして

たまに散歩している犬に
気を引かれるのは楽しいこと

そして、一番だいじなことは
ベンチに座っていると
腰が痛くなってしまうので
背もたれが倒れ気味のふかふかの
ソファがあったら最高だ
この環境で半日過ごせたら
素晴らしい詩が書けるだろう

そうだ、ソファを担いで公園へ行こう

#詩

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献血

thread
二十四年ぶりの献血
色あせたカードを差しだすと
「この古い献血カードを見るのは二度目です」
受付の方が今日はレアなものを見れて嬉しい
そんな表情をしていた

机の引き出しを整理していると
懐かしい献血カードが出てきて
中を開くと十七回の献血をしていた
十代、二十代のころは
ビスケットとジュースを飲みにいく感覚で
ついでに血を抜いていた気もする
しかし、仕事や生活に追われ
献血センターの前で
「献血をお願いします」
呼びかけにも反応しなくなっていた

それどころではない

そんな思いで献血からは遠ざかって

けれど、子どもが成長して
大人に近づいてゆくと
手とり足とりの時間はなくなり
自分の時間がすこし返ってきた

その時間を奉仕で使おう
ボランティアで使おう
すこしばかり成長した自分を感じて

では、献血を再開しよう
世のため人のため
それが贅沢な時間の使い方だろう

できる時にできる奉仕を

今日は400ミリリットルの血を抜く
ただ、刺された針の太さに
自分へ応援なんかして

献血が終わり水分補給をしながら
ビスケットを齧っていると
少しだけ生きている意味が
わかった自分に微笑んだ

#詩

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