十八歳 家賃一万円の四畳半アパート 共同トイレ 共同炊事場は床がいつも水浸し 共同電話は同アパート住民の集金者が 料金を払わず使えない 雨が降るとネズミが天井を走り 下の階からは早朝にお経が聞こえる それでも 住む場所より寂しさが問題だった 孤独の住む自分がなにより辛かった
とてもふあふあとした気分です お酒を飲んだわけでもなく 薬を飲んだわけではないのに これがそんなに悪い感じではなく そうなんです、ふあふあした気分なのです この状態ではどんな詩が書けるのだろうか、と 今、このだらだらふあふあした なんの意味も無さげを表現しようとしています いや、すでにしています 横になりタブレットに右手の中指で とんとんとん、と なぜか右眼を瞑って左目で ぼんやり画面を見て打ち込んでいます 雨が窓ガラスにあたり始めました たしか窓が開いているのですが 立ち上がるほど現実にはいません ああ、顔に冷たい雨が吹き込んできました 困りました、この時間が奪われるのは嫌です でも現実は脅かして急かし始める さあ、この詩を閉じなければならない ふあふあはすでに無くなりました あるのはいつもの痛みを感じる身体 ああ、タブレットを置かなくちゃ 窓が閉めれない詩が終われない
バリバリとその響く音は 遠く彼方のあなたに届いてますか 止められないのです そっとあなたが 僕の手を握ってくれたのなら 微笑みながら止めれるのでしょう 残念です もう袋には入っていません 塩の染み込んだ指を齧っています 僕は止められないのです あなたがいないと駄目なんです
不安になったり なんだか無敵な気分になったり 日々の浮き沈みに少し疲れ わたしは今、早朝のホームでベンチに座り やさしい風を 落ちる雨音を 駅のアナウンスを 電車の通過する音を 身体に響かせながらひとりを感じている 浮き沈みの真ん中あたりで 過ぎ去った月日の不思議を思う 進んで来たのだろうけど 進んで来たのだろうかと 疑問の視線は一点を見つめ わたしに帰っている今を感じ 目的や希望や夢なんかない世界の 平らなところで静かに座っている
書かれた詩と 音読される詩は 作品は同じでも感受が違う 読むひとによって 聞く時の雰囲気によって 詩にある 世界の許容はどこまでも膨らむ それぞれにそれぞれの世界を広げ さあ 詩を読んでみよう 声を出し読んでみよう 新しい世界が……
おにぎりとウインナー ああ、どこかで野菜ジュースでも 息子よ 手抜き弁当で悪いなあ そんなに頑張ってない父ちゃんだけど 大きめのおにぎりを握ったから 今日一日を頑張ってくれよ 最近は自分でおにぎりを握る息子 夕ご飯もたまに作ってくれる 自立への始まり それはおにぎりなのかもしれない
ちょっと太い針だけど 僕でも役に立つことがあった 高校生の時、学校に献血車が来て 友達とノリで始めた献血 気の向いた時しかしないけれど そして、大げさかもしれないけれど 僕でも役に立つことがあった 見返りのない行為に生きている意味を 少しわかったり気がして (ジュースやお菓子はいただきますが……)
砂漠のガーラは 里の人間から恐れられ 孤独の中でしか生きれなかった 額の「愛」の文字は 「自分だけを愛する」の意 そして、敵という孤独が現れ 孤独は孤独と共鳴する そこに繋がりを感じ始めた 心に「友」の文字を刻む
うじゃうじゃを言葉にまとめて できたできた具現化した世界 でもかなり薄まった世界 うじゃうじゃは無限で うじゃうじゃと湧いて出る ひとは僕のうじゃうじゃを知らない 僕もひとのうじゃうじゃを知らない だから一度でいいから ひとのうじゃうじゃを感じてみたい
行き先のない若者は 甘い、と言われ 焦りから逃げるように 心の空洞を囲む頑丈な孤立 若者だった私たちは 突き放すのでもなく 過保護にするのでもなく 固まった感情を溶かすように そばにいてゆっくりと声を待つ