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- 今年の読書(61)『海峡の南』伊藤たかみ(文春文庫)
北海道に住む祖父が危篤との知らせを受け、<僕=伊原洋>は、大阪の住む離婚した「はとこ」の<歩美>と共に、父親の生まれ故郷の紋別へと向かいます。
<僕>の父親<伊原幸夫>は、10年ほど前にチェンマイに行くと連絡があったきり行方不明のままですが、伯父から遺産相続の件もあり、なんとか<幸夫>を見つけてほしいと依頼されてしまいます。
北海道を捨て「ナイチ」の神戸でブローカーまがいの仕事に手をだしながら、女性問題で離婚、自由奔放に生きた父親の生きざまを、<歩美>との関係を含め、自分の記憶を確かめながら、自分にとっての父親像を確認する場面が<僕>の語り口で丁寧に描かれていきます。
北海道を捨てた父と神戸という「ナイチ」で生まれた<僕>の故郷とは、血のつながりとは何かを求める構成で、描かれた時代背景と<僕>の年齢を重ね合わせますと、まさに神戸生まれの著者の自伝的小説かなと感じさせる力作です。
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